静かすぎる者
「第二の試練だ。」
声は静かにそう言う。
「この里に、益はないが生きている。ただ“在る”ものがある。しかし在れば、場を乱す。
——それを、どうする?」
その質問にメフェルは難しい顔をする。
何が正解なのかよくわからなかった。
周りを見れば、ラガルを除いて全員が同じような表情をしている。
「時間内に答えろ。十を数えたら順番に答えを聞く。」
そう言われてシーナは頭を捻る。
急いで答えを出さなければと思うほど、問題の答えが浮かばなかった。
「一。」
じわりと額に汗が浮かぶ。
「ニ。」
周りを少し見て、助けを求めた。
「三。」
声の無機質さが際立つ。
「……十。」
そしてあっという間に十秒が過ぎた。
「まずはお前からだ。黄色いの。」
シーナが最初に指名された。
彼は答えを言おうとする。
けれど昔からの緊張癖が今になって出てしまい、上手く言葉を操れないでいた。
「……答えられないか。」
そう声が判断したとき、ミムラスがぎゅっとシーナの裾を掴む。
その顔は“頑張れ”と言ってるようだった。
「な、何も!変えません。」
その表情に押されてシーナは口を開く。
それはギリギリの答えであった。
声は一瞬躊躇うような気配を見せたが、次の番へ移る。
「仲良くする!」
「……乱れたものは乱れたまま受け止めるわ。」
ミムラスが躊躇いなく答えて、メフェルは少し間を置いたあとに答えた。
ラガルの番が来たとき、彼は表情を変えないで言う。
「場は乱れてはならない。」
その答えの意味することは一つだったが、先ほどの鈴の問題を思い浮かべて、彼らしい答えだとシーナは思った。
「うーん、避けりゃいいんじゃねぇか?」
最後にイーヴァがそう言って質問は終わる。
合格かどうかはすぐには言われなかった。
密やかな声が聞こえてきて、終わりに知らされる。
「そこの青い男以外、合格だ。」
そう言われてラガルは首を傾げた。
自分だけ不合格と言われる理由がわからない。
「何故だ。」
「お前は世界を静かにしすぎる。」
問えば答えは返ってきた。
メフェルは焦った様子で声に言う。
「待って、この人は調律師に用があるのよ。
悪いことはしないわ。約束できる!」
声は何も答えない。
メフェルはぐっと拳を握った。
覚悟はとっくの昔にできている。
「この人が静かすぎて場を壊すなら、
その乱れは私が引き受ける。
それでも、通さない?」
黄色い瞳は意思を持った鋭い光を携える。
メフェルの言葉には重みがあった。
誰かが唾を飲んだ。
ラガルはメフェルを見る。
誰にもその感情は読み取れなかったが、驚いているようにも見えた。
空気が揺らぐ。
声は明らかに戸惑っていた。
その感情が間を通して伝わる。
沈黙がしばらく続いた後だった。
「——例外だ。責任はお前が持て。」
声はそう告げた。




