キノコの森の入口
その里は木の根の下にあった。
大穴をぐるりと囲んだ根の下を通ると、やがてキノコの森が見えてくる。
その森には川が流れていて、小さな流れを越えると生活音が聞こえてきた。
キノコをくり抜いた家に、見慣れない手のひらサイズの丸い生き物、道の先に広がるのは外の世界にはない不思議な光景だ。
「ここがミムラスの里?なんだか可愛い。」
シーナが色とりどりのキノコの屋根を見て言う。
一同が突っ立ていると、ルンルン族の里でもそうだったように小人たちがわらわらと集まってきた。
ただしこちらの小人は様子が違う。
「いらっしゃい外の人!キノコ買うかい?」
「いい鉱石があるよ、買って!」
「古びた服だね、新しいのはどう?どう?」
押し寄せた小人の波は手にそれぞれの品を持って商魂が逞しい。
呆気に取られる一同をおいて、ミムラスは慣れたように笑うと声を張り上げた。
「アタシよ!ミムラス!」
小人たちは止まる。
「ムラスの子の?」
「ミムラスちゃんだ。」
そして奥からその声を聞いた一人の小人が飛び出してきた。
「ミムラス?帰ってきたの?」
大人しそうなその小人が勢いよくミムラスに抱きつく。
ミムラスは最初驚いた顔をしていたが、抱きついた人物を確認すると嬉しそうな照れ臭そうな顔になった。
「アマニ……。」
「信じてたよミィは絶対、大商人になれるって。」
瞬間、わっと周囲の小人が沸く。
その様子に慌ててミムラスは訂正する。
「ち、違うよ。ちょっと里の近くに来たから……。」
そう言いかけてる途中で小人たちの興味は、仲間たちに移る。
特にラガルとイーヴァの周りには子どもが集まっていた。
「大商人の仲間はおっきいんだね。」
「ねえ、おじさん何歳?」
イーヴァの周りに集まった小人たちはわいのわいのと話を始める。
ラガルの足元にも、茸色の帽子を被った小人の子どもがやってきて、小さな声で話し始めた。
それを見てラガルは、しゃがみ込みそっと頭を撫でる。
柔らかな感触が手に伝わった。
気づけば脛に小人族の愛玩動物がぷぅぷぅと鼻を擦り付けている。
ラガルは両手で掬い上げると優しく撫でた。
だが、その足元で、キノコの縁にうっすらと霜が張っているのを、ラガルだけが見逃さない。
「生きている……ぬいぐるみだ。」
ラガルは真顔だったが、どこか温かい表情をしている。
それを見たメフェルが思わず言葉をこぼした。
「あの人、あんな顔もするのね……。」
「意外と可愛いもの好きなんですかね。」
シーナが登ってくる小人を降ろしながら答える。
「前は首輪のことで精一杯だったものね。余裕が出てきたのかしら。」
メフェルが少し微笑んだ。
一方、ミムラスの側にいたアマニは彼女の腕を引いて奥へと連れて行こうとする。
「ねえミィ、仲間の人紹介してよ。ご飯の用意、するからさ。」
アマニはふわっと笑うと、里で一番大きな屋敷へと歩き出す。その案内に従って一同は色とりどりの石の敷かれた床を歩いていった。




