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雅致(ガチ)百合学園トンデモニウム  作者: 真野魚尾
第八章 地湧降誕、魔王エムロデイの巻

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第79話 世紀末がやって来るぜ!

【前回のあらすじ】

(まい)()「私も覚悟を決めなきゃ。(こと)()ちゃんとレもんちゃん、今何してるかな」

 (こと)()はマイクスタンドの前でベースを構え、()(なつ)のドラムにスタートの合図を出した。


 低音パートを(こと)()、高音パートをレもんで分け合うツインボーカルの曲は「世紀末を戦い抜く(おとこ)たちの生き様を描いた、伝説的アニメの主題歌」である。


(うおおぉッ! 何だかLOVEで空が落ちてきたり、邪魔する奴をワンフィンガーでブッ倒したりできそうな気がするぜ……!)


 熱く燃える心に鼓動を速くさせながら、(こと)()は即席メンバー四人での演奏を終えたのだった。




 即興でもう二曲ほどセッションした後、皆でソファに座り、軽く食事を()る。


「おい、スタジオに匂いの強いもん持ち込むんじゃねーよ! 誰だカレーパン買ってきた奴は!」

「ご、ごめんなさいアル……」

「コラァ! ミナたんをいじめるなぁ!」

「そうだぞ。あまり神経質になるな。カレーパンはアタシが頂こう」


 いきなり和気藹々(あいあい)とはいかなかったが、ミナを含めて四人とも先日の公爵討伐時のメンツということもあって、徐々に打ち解けていく。


「わ、悪かったよ。てっきりレもんの奴だとばかり」

(こと)っちはあーしを何だと思ってるんだよ……」

「レもんさんも気苦労が絶えないな。それよりミナさんの演奏はなかなかだったぞ。いっそトンデモニウムに加入してもらうのも面白いかもしれん」

「お、恐れ多いアル! 我みたいなぽっと出のモブが出しゃばったりしたら、読者の皆さんからヘイトを買うだけアルよ!」


 ミナは小説で生計を立てているせいか、例えが独特だ。


「そこまで謙遜するこたねーだろ。ラノベだったら二話ぐらいから(ひそ)かに登場してる強キャラって感じするけどな」

(こと)っち、ひょっとして天然で言ってる?」

「アタシには意味がよくわからんが、ミナさんが強者なのは事実だろう」

「わ、我はそんな……ことはありますけど」


 一旦は否定しかけて思い直したのか、ミナは表情をきりりと引き締めた。両親から受け継いだ武術は、彼女にとっての誇りなのだろう。


 奇しくも、この場には味方戦力のトップ3が集っていた。レもんを除いては、単独で公爵級悪魔を撃破し得る猛者たちだ。


 マキナの思惑に乗って、七伯爵に喧嘩を吹っかけてから、早半年あまりが経つ。(こと)()は感慨を覚えずにはいられない。


「どうしたんだ、(こと)っち。そんな難しい顔して」

「いや、そろそろジュンセリッツの奴もリベンジ仕掛けてきそうだし、気を引き締めねーとって思っただけだ」


 皆が食事を終えた頃合いを見て、(こと)()は話を切り出した。


「マキナには大人しくしてろって言われたけど、他人任せにしておくなんて、やっぱオレの性に合わねーよ。どうやら向こうにも協力者がいるみてーだが、オレたちにだってできることはあると思うんだ」

「協力者だと?」


 ()(なつ)が真っ先に反応する。


「ああ。一応シアティの奴にも確認してみたんだけど、知らねーってさ。お前は何か聞いてねーか?」

「いや、何も。すると、アタシらの知らない人間が裏で動いているのかもしれんな」


 その可能性は(こと)()もとうに考えていた。ただ、用意周到なマキナがそう簡単に尻尾を掴ませてくれるとは思えない。


「まぁ、その辺の事情は気にしてもしょうがねーってことでよ。オレたちはオレたちで、できることをやろうぜって話だ」


 話し終えるや、レもんがふんと鼻を鳴らした。


(こと)っちらしく具体性に欠けた話だな」

「んだと!? コラァ!」

「でも同感だ。魔王軍が攻めてくるとなったら、相手がエムロデイ一人じゃないだろうってことは、下っ端のあーしにだって想像はつくからな」


 ソファから腰を上げたレもんは、ホワイトボードに図を書き出す。


 魔王エムロデイを頂点として、たくさんの線が下方向へ伸ばされている。人間界に根を張った、五侯爵や七伯爵のような下部組織だ。

 その間には(きん)()(こう)銀羯公(ぎんかつこう)ら各公爵による独立勢力、そして――


「この『掃討部隊』ってのは何だ?」

「あーしも噂しか耳にしたことがないが、魔王直属の精鋭部隊らしい。一人一人が公爵級に匹敵する強さだとか」


 そう聞いたところで怖気づくものはこの場にはいない。()(なつ)は落ち着いた調子で確認を取る。


「アタシたちはそいつらの相手をするというわけか」

「必然的にそうなると思う。こっちから出向かなくても、向こうから襲ってきそうだし」


 あっけらかんと答えるレもんに、横からミナが言い添える。


「確かに。魔王軍を裏切った我やレもんちゃんたちは粛清対象ですし、トンデモニウムの皆さんも危険分子としてマークされているでしょうから」


 基本的に、悪魔は人間をそそのかすことはあっても、むやみに殺傷したりはしない。何故なら、人間とは些細なことで悪意をばら撒き、悪魔が住みやすい世界をローコストで作ってくれる便利な生き物だからだ。


 だが、明らかな敵対者である(こと)()たちは違う。正義の心に目覚めたレもんたちのような悪魔も然り。人間界を掌握するためには、真っ先に排除すべき存在なのだ。


「ま、オレにとっちゃ今さらだな。これまでの奴らと同じく返り討ちにしてやるぜ!」


 (こと)()は勢いよく立ち上がり、堂々と宣言する。


「けどその前に、倒しそこねたジュンセリッツの野郎を始末し――」


 言いかけたタイミングでスタジオの扉が開き、ぴあ()が入室してきた。


「ジュンセリッツを始末して参りましたわ!」

「何だとァ――――っ!!」




 琴緒のあずかり知らぬところで、魔王出現のカウントダウンは始まっていた。

 運命の日まで――あと一カ月。

(こと)()&レもん イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/822139841194054240

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