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雅致(ガチ)百合学園トンデモニウム  作者: 真野魚尾
第八章 地湧降誕、魔王エムロデイの巻

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第77話 美少女戦隊ペンタ☆トニカ

【前回のあらすじ】

ぴあ()(きん)()(こう)ジュンセリッツ! わたくしたちがお相手いたしますわ!」

 ジュンセリッツは(いら)()っていた。

 まずもって、偉そうに気炎を吐く()(ぼう)(どう)ぴあ()が気に入らない。


「悪魔にとどめを刺せるのは、何も(めい)治家(じや)さんだけではございませんわ」


 そのとおりだ。この女が手にした魔剣ヴァイエルのような霊的な武器、そして隣にいる鱧肉(はもにく)(まい)()が身に宿した神聖な力を以てすれば、理屈の上では可能だろう。


 もしくは、悪魔同士であっても当然殺し合える。


「裏切り者どもめが……!」


 左右から迫る三人の悪魔たちへ向けて、ジュンセリッツは吐き捨てた。


「美少女闘士ファイト・ザ・ブラックベルトだじぇ」


 片や、寒富(さぶどみ)不哀斗(ふぁいと)ことファイ゠トノファ。


「美少女拳士ピンキー・マヨ!」

「美少女銃士サイアニック・ミノ……」


 片や、(いん)()(ばる)魔与(まよ)魅能(みの)ことマヨーラとミノーラ。

 いずれも(めい)治家(じや)(こと)()らに敗北したのみならず、人間側に寝返った魔王軍の面汚したちだ。


 ジュンセリッツの怒りをよそに、五人の小娘は思い思いのポーズを決めつつ、口を揃えて口上を発した。


『せーのっ――美少女戦隊ペンタ☆トニカ!』


(たわむ)れもそこまでだッ!!」


 慈悲は無し、全力で叩き潰す――ジュンセリッツは(みなぎ)る殺気とともに、体表から金色(こんじき)のオーラを噴出させた。

 にもかかわらず、小娘どもは恐れ知らずにも挑みかかってくる。


 火蓋を切ったのは、双子の妹ミノ。


「〈(ゆう)(じゅう)()(だん)〉……!」


 何の変哲もないエネルギー弾の射出――が、軌道上で無数に分裂する。おそらくそのほとんどは幻影で、実弾は一つか二つ。


「そこかッ!」


 剛腕の一振りで光弾をなぎ払う。思いのほか手応えはあったが、急所に当たらねばどうということもない。

 そう思ったのも束の間、弾幕に紛れて接近していた二つの影が、ジュンセリッツを急襲する。


「〈岩抜帝(がんばつてい)鬼魔(きま)(しょう)〉!」

「〈臀靠(でんこう)(せっ)()〉ぁっ!!」


 不哀斗(ふぁいと)の諸手突きと、マヨのヒップアタックが、ジュンセリッツの両膝へと同時に直撃した。


「ぐぉっ……これしき――……っ!?」


 辛くも踏みとどまったジュンセリッツの体が大きく後ろへ(かし)いだ。見れば、いつしか両腕に光弦が巻きついている。

 弦の使い手はほかでもない、鱧肉(はもにく)(まい)()であった。


『そのまま大人しゅうしときや!』


 光弦を伝わって流れ込んでくる神性の勢いに、ジュンセリッツは魔の力が削がれていくのを実感した。

 これこそが本命であったとは――気づくのがあまりにも遅すぎた。


「弱体化完了のようですわね」


 魔剣を振りかぶったぴあ()が、頭上から飛びかかろうとしていた。


「おのれぇええ……っ!!」

「奥義クレール・ド・リュンヌ――!」


 鋭い剣筋がジュンセリッツの胸を掠める。プライドを捨てて後ろへ倒れ込んだのが間に合ったのだ。


退()けいっ!!」


 起き上がりざま、力ずくで光弦を引き上げる。宙へ投げ出される危険を察知した(まい)()が、すぐさまジュンセリッツの拘束を解いた。


 四肢は自由。傷は浅手。だが、ここからどうする。

 戦隊はなおもジュンセリッツを取り囲み、その中心に陣取るぴあ()は抜かりなく必中の間合いを保っている。


「あら、命拾いなさいましたわね」

「……お前たちは何ゆえ吾輩を付け狙う? (こと)()の頼みか? それともマキナとかいう女の差し金か?」


 問いかけながら、ジュンセリッツは弱められた魔力が盛り返すのを待つ。


生憎(あいにく)どちらでもございませんわ。わたくしたちはわたくしたちの意志で戦うまで」

「そうだよ。いつまでも(こと)()ちゃんたちだけに重荷を背負わせたりしないって決めたんだから!」


 (まい)()の声に不哀斗(ふぁいと)、そしてマヨとミノも次々と賛同する。


「おれちゃまの拳に正面から応えてくれた、(こと)()さんの恩に報いるまでだじぇ」

「センパイたちはウチらに安心できる居場所をくれたから。姉妹揃って頑張るのが役目っしょ!」

「上に同じ……!」


 揃いも揃って虫酸が走る。暴力と勝利を以て正義とする悪魔の誇りはいずこへ消え失せたのか。

 ジュンセリッツは考えるのをやめ、沸き立つ憤怒に身を任せた。


「寄せ集めの負け犬どもめが……まぐれ当たりに浮かれていられるのも今のうちと思え……ッ!」

「その程度の傷で済むなんて、むしろ強運ですこと。どこまで(しの)ぎ切れるか見物ですわね」


 ()(ぼう)(どう)ぴあ()――減らず口を叩くこの赤髪の女を真っ先に葬らねば。

 殺意の牙を剥くジュンセリッツであったが、すでに四方からは戦隊の波状攻撃が開始されていた。



  *



 高みの見物とはよく言ったもので。


(おー。あの娘っ子たち、なかなかやるじゃねーか)


 山の鞍部に身を隠しながら、ぴあ()たちの戦いを見下ろす視線があった。顔の下半分は覆面で覆われ、茶色がかった長い髪は飾り紐で後頭部に束ねられている。


(こりゃライオン野郎がブッ倒されるのも時間の問題か。どうやら俺の出る幕じゃなかったみてーだな)


 ややあって、魔剣の閃きが獅子を両断したのを見届けると、覆面の主はつと(きびす)を返した。


(もうちょっと待っててくれよ。この戦いを終わらせたら必ず迎えに行くからな――(かず)()(こと)()


 足取りも軽やかに、山を駆け降りていく。その背中には、魔剣ヴァイエルにも劣らぬ精緻な装飾の施された、一振りの剣が背負われていた。

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