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雅致(ガチ)百合学園トンデモニウム  作者: 真野魚尾
第一章 忍び寄る魔爪、レモノーレの巻
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第4話 屋上ランチタイム with 琴緒

【前回のあらすじ】

(こと)()「二人っきりの屋上……今日こそ(まい)()先輩に愛を告白するぜ!」

 降り注ぐ春の陽射(ひざ)しの下、屋上での昼食会は愛しの先輩と二人きり。

 なのに、(こと)()の気分はちっとも晴れない。


「レもんちゃんってば真面目なんだー。教室の掃除も隅々までやってくれるし、日誌も丁寧だって先生に褒められてたし」

「…………」

「最近は花壇のお世話までしてくれてるの。あ、そうそう、昨日も迷い込んだ子猫がすり寄ってきて大変だったんだってー」

「……そッスか」


 さっきから(まい)()はクラスの友だちの話ばかりしている。会ったその日に仲良くなった転校生、しかも席は隣同士だという。


怒狸(どり)(あん)レもんだとォ……? どこの馬の骨だか知らねーが、オレの(まい)()先輩を(たぶら)かしやがって……!)


 まさかの恋敵出現に、(こと)()の胸の内で嫉妬の炎が渦巻いていた。こう言っては何だが、(まい)()のようなダメ人間とまともに付き合える者が、自分以外にいるとは思ってもみなかったのだ。


「レもんちゃん、ホントにいい子なんだー。勉強押し付けてくること以外は」

「オ、オレは先輩に勉強しろだなんて言わないッスけどね!」


 (こと)()はアピールついでに釘を刺しておいた。

 第一、勉強を教えようという行為自体烏滸(おこ)がましい。噂によれば、(まい)()は三年間の留学経験を持つ孤高の才女。テスト勉強などしなくとも余裕に違いないのだから。


(こと)()ちゃんだぁい好き! (こと)()ちゃんの作ってくれるお弁当も大好きぃ!」


 細められた宝石のような瞳を、両のえくぼを、独り占めしたい。


「お……オレも……ッス」

(こと)()ちゃんも唐揚げ好きなんだ? はい、あーん」

「はぉぐ……っ!?」

「代わりに生姜焼きもらっちゃおーっと」


 ああ、こんな幸せがいつまでも続けばいいのに――(こと)()が思った途端、


「コラァーッ! 屋上は立入禁止だぁーっ!」


 ドアを蹴破る音に続いて、聴き慣れた大声が邪魔をする。


 屋上の出入り口に、ジャージ姿の三十路女が仁王立ちしていた。(こと)()のいる2年G組の担任で、空手部顧問の祖名(そな)ちねである。


「ソナチネ先生、今自分大事なとこなんで――」

「黙らっしゃぁい! そこの扉を破壊したのはお前だろォ、(めい)治家(じや)ァ!」


 アンタも今蹴り入れてたろ――という言葉をすんでのところで飲み込む。祖名(そな)には(こと)()の怪力は知られているし、言い逃れはできそうにない。


「サーセンっした……修理代は実家に請求しといてくださいッス」


 (こと)()はポケットから出した、くしゃくしゃの名刺を祖名(そな)に手渡す。


「素直でよろしい。にしても『めいじや楽器店』か……お前、こう見えて社長令嬢だったっけな」

「その話はやめてくださいッス……」

「あー、分かった分かった。それよりドアぶっ壊すほど力有り余ってるなら、空手部の助っ人また頼むよ」

「それも勘弁で」

「つれない奴め。さぁて、修理業者を手配しないとな……お前らもとっとと校舎に戻れよー」


 祖名(そな)はあっさり立ち去ったものの、最早(まい)()へ告白などできる雰囲気ではなくなってしまった。


(さっきから調子狂いっぱなしじゃねーか! クッソぉおお……それもこれも怒狸(どり)(あん)レもんとかいう奴のせいだ! 泥棒猫めが……首を洗って待ってやがれ……!)


 行き場を失った(こと)()の怒りの矛先は、まだ見ぬ恋敵へと向けられていた。

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