表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雅致百合学園トンデモニウム -Gachi-Yuri Academy TONE-DEMONIUM-  作者: 真野魚尾
第三章 我こそは最弱、魅惑のソラオクの巻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/115

第17話 背中越しのプロポーズ(仮)

【前回のあらすじ】

(こと)()「レもんと不哀斗(ふぁいと)が同居……オレん()が悪魔の溜まり場になっちまった!」

 土曜日の午後、(こと)()は自宅で(まい)()と二人きりの時間を過ごしていた。

 ダイニングテーブルには、山盛りの唐揚げが積まれた大皿が載せられている。


「全部……私が食べていいの……?」


 (まい)()の口からは今にもよだれがあふれ出そうだ。


「勿論ッスよ! 先輩のために作ったんスから!」


 (こと)()が言うが早いか、(まい)()は箸を手に取り唐揚げを次々と口に放り込む。

 その幸せそうな顔ときたら。


「のほぉおいしぃ~……! (こと)()ぢゃぁああん、ありがどぉおおお~! いだだぎまぁああ~しゅ!!」

「先輩、順番バグってます! 落ち着いて食いましょう!」


 (こと)()にも勢いは止められない。(まい)()にとっては、泣くほど嫌な補習授業を戦い抜いたご褒美なのだ。


 本来ならば、(まい)()の勉強を手伝ったレもんにも礼をするべきなのだろうが、今日は不哀斗(ふぁいと)を連れて夜まで外出中だった。


(アイツら気ぃ使いやがって……こりゃ意地でも先輩との仲を進展させないと格好がつかねーな)


 とはいえ、がっつきすぎるのも考えものだ。(こと)()は普段どおりのトークを心がけた。


「そういやテストも一段落しましたし、バンドメンバー探さねーとッスね。先輩は誰か心当たりありますか?」

「う~ん……私、友だちいないから……」


 ぐうの音も出ない失言だった。だが、下手に謝ればかえって(まい)()がみじめになる。


「せ、先輩のミュージシャンシップに釣り合うメンバーっつーのもなかなか難しいッスよね! でも心配ご無用ッス! オレが()(つくろ)っておきますんで!」


 実際、(こと)()には当てがないでもなかった。ただ、嫌われているっぽい相手なので、少し声をかけづらい。


(……アイツを誘うのは後回しにしとくか。色々面倒そうだし)


「あと三ヵ月かぁ。今月中には何とかしたいよね~」

「そッスね。最悪、ドラマーだけでもどうにかして見付けますよ」


 文化祭のライブに出演したいと、常日頃から話をしていた。(おく)多部(たべ)高校の軽音部は過疎っているので、バンドさえ結成できれば余裕で出番をねじ込めるはずだ。


「よぉ~し、そっちは(こと)()ちゃんに任せて、私はカラアゲに集中だぁ~!」


 箸に突き刺した唐揚げと飲み物を両手に(かか)げ、(まい)()は高らかに笑う。愛しい相手の上機嫌な様子に、(こと)()の気分も高まった。


「大根おろしもありますよ! シソの葉とポン酢はお好みでどうぞ!」

「味変たすかるぅ~! ほんとカラアゲ最っ高ぉ~! おつまみにも最適だし!」

「いいッスね! 酒のつまみにも…………え?」


 (こと)()は、(まい)()の手に握られている缶を見て愕然とした。桃のイラストが描かれているが、中身は明らかにチューハイだ。


「うぇへへ~! おうちから持ってきひゃいまひた~!」

「高校生が酒は……いや……先輩はいいのか……?」


 つい忘れがちだが、(まい)()は三留して二十歳を超えている。あらゆる意味で大人らしさとは無縁ではあるが。


「こんらのジュースみらいなもんらよ~! (ころ)()ひゃんも飲むぅ~?」

「じ、自分はやめとくッス!」


 (こと)()は即答する。間接キスの申し出は大変ありがたいが、正義のヒーローが未成年飲酒などするわけにはいかないのだ。

 それよりも、たった数口でベロベロになっている(まい)()を、速やかに介抱すべきと判断した。


「なぁんらぁ~? (わらし)の酒が飲めないってゆ~のかぁ~?」

「ベタな酔っぱらいネタやめてくださいよ。今お水持ってくるんで……」


 流し台を向いた(こと)()の後ろから、(まい)()が両腕でしがみついてきた。


「行かないで」

「……! せん……ぱい……?」

「レもんちゃんたちばっかズルいよぅ……私も(こと)()ちゃん()の子になりたいぃ……」

「オレん()の!? そ、それって……」


 (こと)()の脳はフル回転を始めた。この家に入るということは家族になる、つまり名字を(めい)治家(じや)に変えるということ――すなわち嫁入りである!


(マジかぁっ!? ま、待てよ……まだ先輩のご両親に挨拶(あいさつ)もしてねーし、ユイノーっつーのはどうすれば……ボンデージリング? だっけ? 確か給料の三ヵ月分だったよなぁ……急いでマキナに前借りしねーと……!)


 様々な思考が(こと)()の脳内を駆け巡っていたが、それも長くは続かない。腰に巻き付いた(まい)()の腕から、ふと力が抜けたのを感じたからだ。


「先輩……!?」


 (とっ)()(まい)()の体を支える。はたして、愛しき婚約者は(こと)()の腕の中で寝息を立てていた。


(もしかして、酔っ払って寝言言ってただけか……?)


 一抹の寂しさを覚えるとともに、(まい)()の隠れた本心――と思いたい――を聞けた喜びも、(こと)()の中で交錯していた。


 気を取り直して、(まい)()をソファに横たえる。無邪気な寝顔を目の前に、(こと)()の胸は再び高鳴りを増していく。


(真っ昼間から人ん()で酒飲んで、勝手に寝ちまうダメ人間先輩……何て愛くるしい生き物なんだ……っ!)


 震える指で髪を()きながら、(まい)()の顔をもっとよく見ようと、(こと)()が身を乗り出した時だった。


「……おい、ワレェ。何や手つきヤラしないかぁ?」


 不意に見開かれた(まい)()の瞳は、神秘的な()金色(がねいろ)に染まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ