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雅致(ガチ)百合学園トンデモニウム  作者: 真野魚尾
第八章 地湧降誕、魔王エムロデイの巻

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番外編 本間瑛子はホンマええ子

 私は2年C組、(ほん)()(えい)()。これといって取り柄のない、成績だけは上の下クラスのモブ生徒です。


 A組の()(ぼう)(どう)さんや、G組の(めい)治家(じや)さんのような一軍女子には素直に憧れます。けれど、あいにく私は人に誇れる美貌も運動神経も持ち合わせていません。


 わかっています。私は青春の主役にはなれないんだってこと。

 ただ、それが少しだけ淋しくて。




 憂鬱を晴らしに立ち寄った駅前のゲーセンで、格闘ゲームに興じる私がいました。

 こんな冴えない私でも、ゲームの中でだけは強くて格好いい女の子になれるんです。


 だからって、調子に乗って連勝しすぎたのがいけませんでした。対戦相手を怒らせてしまうなんて。


「わりゃあケンカ売っとんか! おぉん!?」


 短ラン・ボンタン・リーゼント――前世紀の遺物みたいな格好をした不良さんに(から)まれる私。リアルファイトは御免(こうむ)ります。


「す、すみません」

「ちゃんと立って挨拶せぇや、ネェちゃん……ってデカァ!」


 失礼しちゃいます。これでもギリギリ170cm未満なのに……いいえ。彼が見ているのは私じゃありませんでした。

 私の後ろに立っていた、運命の人。


「お兄ちゃんよォ、素直に負けを認めないのは見苦しいぜえ」


 確実に身長2メートル以上はある、全身筋肉もりもりの女の子が、不良さんを指でつまみ上げて物理的に追い払ってくれたのです。


「あ、ありがとうございます!」

「なぁに、同じ学校のよしみだぜえ」


 それがG組の転校生・寒富(さぶどみ)不哀斗(ふぁいと)ちゃんと、私との出会いでした。



  *



 翌日、私は不哀斗(ふぁいと)ちゃんと学校であっさり再会を果たしました。何しろ、一目でわかる目立ちっぷりでしたから。

 その日のうちに私たちは休み時間や昼休みを一緒に過ごすようになって、お互い大好きなゲームを通じて少しずつ仲良くなっていったのです。


 ある時を境に、不哀斗(ふぁいと)ちゃんは何故か小学生サイズに縮んでいました。(めい)治家(じや)さんに空手で負けてこうなったらしいのですが、私にはわけがわかりませんでした。


 でも、見た目が変わったとしても不哀斗(ふぁいと)ちゃんは不哀斗(ふぁいと)ちゃんのままでした。

 私たちはそれまでと同じように、ゲームや格闘技の話で盛り上がって、心の距離を縮めていきました。


 そんなある日、私は不哀斗(ふぁいと)ちゃんから打ち明けられるのです。


(ほん)()さん、実はおれちゃまは悪魔なのだじぇ」


 冗談には聞こえませんでした。私は信じます。不哀斗(ふぁいと)ちゃんが心優しい悪魔だってこと。


「勇気を出して言ってくれてありがとう。大好きだよ」


 そうして、二学期が始まって間もない頃、私たちは友だちから恋人同士になっていたのです。



  *



 修学旅行を来週に控えた昼休みでした。

 部活棟のベンチで一緒にお弁当を食べた後、私は手編みの手袋を不哀斗(ふぁいと)ちゃんにプレゼントしました。


「練習ついでに編んでみたんだ。よかったら使ってね」

「ありがとう。大切にするのだじぇ」


 編み物なんて中学以来だし、不格好だけど心は込めたつもりです。


「クリスマスに間に合うようマフラーも作ってるから、楽しみに待っててね」


 午後の授業まであと十分。私たちは各自のクラスへ戻っていきます。


 ところが、です。不哀斗(ふぁいと)ちゃんと別れた直後、私は渡したはずの手袋を片方持ったままだったことに気がつきました。


 急いで追いかけると、不哀斗(ふぁいと)ちゃんは渡り廊下の途中で、ちっちゃな女子二人組に通せんぼされていました。


「伯爵級のザコが(こと)()センパイと同居してるなんて生意気っしょ!」

「身の程を知るべし……」


 それぞれピンクと水色のツインテールにした双子ちゃんには、体育祭の前夜祭ライブで見覚えがありました。

 軽音部の一年生、(いん)()(ばる)魔与(まよ)ちゃんと魅能(みの)ちゃんです。


「そんなこと言ったらレもんも伯爵級だし、同居もしてるのだじぇ」


 言い返す不哀斗(ふぁいと)ちゃんに、双子ちゃんたちも揃って反論します。


「あ、アイツ意外と強そうだし! アンタを先にシメるのが効率的っしょ!」

「断じてビビってるとかでは(あら)ず……」


「お前らこそ発想がザコっぽいじぇ」


 不哀斗(ふぁいと)ちゃんの一言は双子ちゃんの図星を突いてしまったみたいです。


「う、うるさぁい! これでも喰らえっしょ! 必殺ぅ、臀靠(でんこう)せ――」


 マヨちゃんのヒップアタック――の出がかりに、不哀斗(ふぁいと)ちゃんの中段蹴りがカウンターヒットしました。


「ぐほぁ~っ!!」

「おねいちゃぁああ――ぁん!!」


 撃沈したマヨちゃんにミノちゃんが慌てて駆け寄ります。


「す、すまんのだじぇ。反射的に脚が出てしまったじぇ」


 不哀斗(ふぁいと)ちゃんは申し訳なさげに肩をすぼめていました。

 事情はわかりませんが、可愛い女の子たちがケンカするのは見てられません。私はたまらず三人の間に割って入ります。


「殴り合いとかよくないよ! そんなに勝負したいならゲームで決着をつけよう!」


 その場の思いつきで口走ってしまった私。でも、もう後には引けません。




 同じ日の夕方、私の家には不哀斗(ふぁいと)ちゃんとマヨちゃん、ミノちゃんが集まっていました。

 約束どおりのゲーム勝負。ソフトはパーティゲームの定番『大恩寵スマックシスターズ』です。


「そんなぁ~! マヨが最下位だなんてぇ~!」

「同率二位……」

「やっぱり(ほん)()さんは強いじぇ……!」


 私は空気を読まずにぶっちぎりで優勝してしまいました。みんなからの尊敬の眼差しがくすぐったいです。


 でも、この日の出来事がきっかけで、マヨちゃんミノちゃんともよく遊ぶ仲になれたのは幸運でした。

 マヨミノちゃんは不哀斗(ふぁいと)ちゃんとのわだかまりも消えたみたいで、私としても万々歳です。いつまでも仲良くしてくれたら嬉しいな。



  *



 不哀斗(ふぁいと)ちゃんと過ごしたクリスマスイブの翌朝。

 前もって聞いていた話ではあるのですが、不哀斗(ふぁいと)ちゃんはマヨミノちゃんとともに「避けられない戦い」に(おもむ)かなければならないそうです。


「おれたちは必ず勝ってくるじぇ。これからも(ほん)()さんと一緒にいるために」


 私より30cmも小柄な不哀斗(ふぁいと)ちゃんの背中が、まるで出会った頃と同じぐらいに大きく感じられました。


「うん。不哀斗(ふぁいと)ちゃんは強いもの。絶対に負けたりしないよ」


 一度は受け取ったマフラーと手袋を私に預けて、不哀斗(ふぁいと)ちゃんは出かけていきました。


 どうかみんな無事で帰って来てね。(ほん)()(えい)()は信じて待っています。

(ほん)()さん イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/822139844189282732


不哀斗(ふぁいと)・マヨミノ姉妹 イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/822139844250743499

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