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学校の先生とトイレの花子ちゃん  作者: かわやのはなこ
6/11

放課後の学校徘徊

森本が悪霊に取り憑かれて暴れた後、祠堂は教室に戻ってきて通常通り授業をした。


その日の放課後。

午後8時過ぎ。暗くなった学校で、職員室の扉が開かれた。


扉を開いたのは、真っ赤なジャージの男だった。


「じゃあ、祠堂先生、僕も帰りますねぇ〜!」


彼はリュック片手に、職員室の奥の方の席に座っている祠堂に一声かける。


「おう、お疲れさん」


祠堂はパソコンと睨めっこをしたまま、返事をした。


「お疲れ様でーす」


その後男は職員室を出ていき、扉はガラガラと音を立てて閉められた。


祠堂以外誰もいなくなった職員室は、しんと静まりかえる。時たま祠堂のパソコンのキーボードを叩く音だけが響いた。


「ふぅ、今日もやっと夜がやってきたのじゃ」


そんな声と共に祠堂の真横に現れたのは、黒髪おかっぱの少女だ。彼女は初めからそこにいたのか、祠堂の机の上にちょこんと座っていた。


「花子ちゃん、今日もありがとう」


「何を今更」


花子はそうは言いながらも、感謝されたことが嬉しそうだ。自然と笑顔になる。


すると、そのタイミングで、ガラガラと先ほど閉められた職員室の扉が開かれた。


中に入ってきたのは、山羽だった。彼女は、姫城の安全を護るために、一度姫城と共に家に帰っていたのだ。その際は、姫城自身にもバレないようにこっそりと尾行している。


ちなみに、登下校中は、姫城家の朝霧も護衛にまわっている。


「お疲れ様です。祠堂さん」


「お疲れ様、山羽さん。少しはゆっくりできた?」


山羽は、「はい」と簡単な返事をしながら、職員室に設けられた自分の席に座った。


「おや、お主、着替えてきたのか?」


花子の言うように、山羽は黒いスーツを身に纏っていた。

ちなみに、昼に学校で過ごしていたときは、Tシャツにスウェットパンツというラフな格好だった。


「ええ、ここからはスクールサポートスタッフではなく……怪保としての仕事ですから」


「怪保特別性のスーツかぁ」


さっきまでずっとパソコンを触っていた祠堂は、目線を山羽に移してから、グッと背伸びした。


「はい。特殊技術で製作された、対怪異の特別製です。あっ、あとこんなのも……」


山羽はそう言いながら、左手の腕の袖を捲った。


そこにあったのは、腕時計。一見何の変哲もないものだが……。反応したのは花子だった。


「何じゃそれ、気持ち悪い」


「き、気持ち悪い!?失礼なことを言うなよ」


祠堂は慌ててツッコミを入れる。花子は気持ち悪いなどと言うが、正直、祠堂にはただの黒いシックな腕時計としか思えなかった。

それに同意したのは、意外にも装着者である山羽だった。


「怪異である花子さんから見れば、そうでしょう。これには、意図的に使用者の妖気の力、妖力を吸収する力があるんです」


「使用者の妖力を?」


「祠堂さんも知っての通り、私は怪異である『山姥やまんば』に取り憑かれることによって、力を得ます」


昼に森本が悪霊に取り憑かれた時のこと。彼は、ただの小学生であるにもかかわらず、大人の力をものともしない怪力を見せた。それは、怪異が取り憑いたからだ。

彼女もそれを利用して、山姥の力を使って戦う。


「しかし、山姥が取り憑いている間、私の身体の主導権は怪異である山姥側に偏ります。だから、戦いの後、また私に主導権を戻すために、この腕時計を使うんです」


「なるほどなぁ……その人の妖力を空にして、取り憑いている怪異を弱体化させるわけか」


祠堂は、感心したように頷いた。


「そうです。それで、主導権を取り返すわけです。それができなければ、身体を乗っ取られますから」


それを聞いた祠堂は一つ疑問をぶつける。


「それだと、怪異が非協力的みたいだが……なんで戦いになると取り憑いて協力してくれるんだ?」


山羽の話だと、山姥は山羽を乗っ取ろうとする悪しき存在だ。しかし、いざとなると山羽に協力する形で取り憑いている。そこに疑問を持ったのだ。


山羽は端的に答えた。


「怪異を飼っているからです。時には見返り、褒美、時には拷問、見せしめ……奴らは人より知能で劣ります。だから……」


「あぁーー、もういいよ、山羽さん」


祠堂は説明の途中で山羽を止めた。祠堂は急に興味を失ったようで、またパソコンに向き合った。


「……」


山羽も完全に黙ってしまった。


そんな互いに気まずい空間を壊したのは花子の一言だった。


「……さて、わしはそろそろ校内の巡回をしてこようかの」


花子は、そう言うと、机からぴょんっと飛び降りた。


「巡回?」


「そうじゃ。お主らに会ったのも巡回の時じゃったのぉ」


「あっ……」


山羽は会った時のことを思い出した。山羽たちが『落武者』が出ると言う情報提供を受けて、ここ神喜多小学校にきた日のこと。

『思い出してみれば、あの日花子さんは、私たちに去れと言った。あれは、怪異が出るから一般人は去れと言うことだったのだろう』


花子は、困った困ったと眉を顰めた。


「夜の神喜多小学校は、昼にいた澪の残滓のせいか、明日澪を殺そうとするせいか、怪異が多数出現するからのぉ」


「花子ちゃんは、俺がここで仕事している間、一人で見回って怪異を間引いてくれてるんだよ」


「ククッ、お安いことなのじゃ。それに、ここで懲らしめておかんと、明日また今日みたいなことが起こるからのぉ」


「……人に取り憑く怪異がでる、ですか?」


今日みたいなことと言われて、山羽は例の森本の騒動を思い出した。


「そうじゃ。では祠堂、帰る時に呼んどくれ」


すると、花子はそれ以上何を言うこともなく、職員室の扉をそっと開けて去って行ってしまった。


夜は、怪異にも実体があり、物に触ることができるようになる。逆に、通り抜けるなんて芸当は一部の怪異を除いてできなくなるのだが……。


そんなこんなで、学校で唯一明るい部屋である職員室に残されたのは、祠堂と山羽。


山羽は、自分の席から立ち上がる。


「私も、巡回に行ってきます」


「おう、頼むよ」


しかし、山羽はそのまま外に出ることはなく、祠堂の席の真横に立った。目線の先には、仕事に向き合う祠堂がいる。


「祠堂さん、これを」


そう言って彼女が差し出したのは、先ほど祠堂に紹介した例の腕時計だった。


「これは……?」


祠堂は、仕事の手を止めて顔だけで山羽の方を見た。


「花子さんは強力な怪異です。あなたが思っている以上に」


「……それで?」


「だから、作ってもらいました。怪保に」


「……」


祠堂は回転式の椅子を動かして、体を山羽の方に向けた。そのまま黙って山羽を見る。


「花子さんは今は協力的かもしれません……でも、彼女もまた怪異です。いつ祠堂さんに取り憑いて、そのまま我がものにしようとするか」


「大丈夫だよ」


祠堂は即答する。その目は笑っておらず、普段穏やかな彼からは想像もつかないほど冷たい目をしていた。


「心配してくれてありがとう山羽さん。でも、花子ちゃんは大丈夫」


山羽も予想外の祠堂のリアクションに、少したじろぐ。腕時計は差し出したまま、目を逸らした。


「私の両親は、怪異に殺されました」


「……」


「そんな私を拾ってくれた怪保からも、怪異による死者が何人も出ました。血が繋がっていなくても、兄弟だった家族だった、彼らは目の前で殺されました」


「……」


祠堂は黙って聞いている。


「確かに今は、仲間だと思っていても……花子さん、いえ、奴がいつ本性を表すか分かりません。だから、これは持っておいてください」


山羽は引かずに、祠堂にグッと腕時計を押し付けた。


しかし、祠堂はそれでも拒否した。


「いらないよ。花子ちゃんは友達だからね。それに……」


「それに……?」


「それに、花子ちゃんにならこの身体を差し出したって悔いはないよ」


祠堂の言葉に嘘はない。山羽は直感で感じ取った。


「とにかく、花子ちゃんを悪く言うのはやめてくれ」


祠堂は話は終わりとばかりに、また体ごとパソコンに向かってしまった。


山羽の差し出した手が無意味になり、そのまま重力に従って垂れた。


これ以上は無駄だと悟った山羽は、扉に向かって歩き始めた。


「私も巡回に参加してきます。もしコレが必要になったら、いつでも言ってください」


そう言って、腕時計を少し上に掲げた。


「……」



静かな職員室を後にして、山羽は暗い校舎へと足を進めた。


しばらくすると、先に出たはずの花子が暗がりの中、壁にもたれて座っていた。


彼女は山羽を待っていたのか、山羽の存在を確認すると、立ち上がった。


「お主、どこへ行くんじゃ?」


山羽は驚いた様子もなく、歩きながら答える。


「巡回です。夜の触れられるうちに怪異を倒しておきたいですし」


「ククッ、落武者の一人もやれないお主がか?この学校では、またあれに遭遇するかもしれんぞ?」


「うぅ……」


山羽はかつて手も足も出ずに負けた記憶が蘇る。

足が止まった。


「おっと、少しいじわるじゃったな、ほれ、共に見て回ろうぞ」


山羽は花子に痛いところをつかれて言い返したかったが、その通りなので何も言えなかった。


それから、山羽は花子と共に歩き出した。


学年で飼っているのか、二年生のクラスの前を通った時に鈴虫の音が聞こえてきた。

窓の外からも時折り虫の鳴き声が聞こえて来る。


「お主、あの腕時計、祠堂に勧めたじゃろ」


会話を始めたのは少し前を歩く花子の方だった。二人はそのまま歩きながら、喋り出す。


「……はい。まぁ、断られましたけど」


「ククッ、そうか……祠堂は何と?」


「あなたを悪く言うなと……」


暗くて互いに表情は見えないが、それを聞いて花子の声のトーンが一段階上がった。


「そうかそうか祠堂がのぉ。可愛い奴じゃ」


その声を聞いていると、逆に山羽はイライラしてきた。


「あなたは怪異なのに、やたらと人にフレンドリーに話しかけてきますね」


「何じゃ怒っておるのか、祠堂が人であるお主より怪異のわしを優先したから」


「別に、怒ってません」


「まぁ、気にするな。祠堂は決して怪異の肩を持つわけじゃないしの。わしが、特別なだけじゃ」


「だから、怒ってないですし、勝手に惚気ないでください」


会話がある意味噛み合っていない二人。


すると、二人の会話を止めるように一匹……いや、一人の怪異が廊下に姿を現した。


それは、山羽たちのいた廊下の、反対側の一番端にふうっと現れた。

先ほどまではいなかったのに、少し瞬きした瞬間にそこにいる。


「落武者」


山羽の声で、たわいもない話は終わりを迎える。


落武者。かつて戦国の世に生まれ、戦い、尸になっても、肉体がなくなってもなお己の無念を晴らすために現れる怪異。


落武者は、動くこともなく静かに山羽と花子を見ていた。

それに対して山羽は落武者に対して戦闘モードだ。


花子は特に変わりないが、視界に落武者を入れている。

山羽は、腰にぶら下げた古い出刃包丁を、正面に向けて構えた。


「私がやります」


「やれるのか?」


「もちろんです」


その言葉を置き去りに、山羽は走り出した。


「憑け、山姥」


足を止めることなく発した言葉。


「……ギャハ、ギャハハハ」


山羽は不気味な笑みを浮かべる。

髪色が変わり、顔には自然とガングロメイクが施された。


「好き勝手の呼び出しやがってぇぇ!」


山羽に取り憑いた山姥は悪態をつくが、その顔は心底楽しそうだ。バトルジャンキー、その言葉がよく似合う。


彼女は、先ほどまでつけていたメガネを地面にポイっ捨て去った。


「いくぜ、おらぁぁあ」


いまだに動きを見せない落武者にたどり着く直前、山羽は手に持った出刃包丁を思いっきり投げつけた。


ビュンッ


ギンッ


山羽の投げた包丁は、落武者に刺さる前に、弾かれた。落武者のもつ刀によって。


勢いを殺された包丁はそのまま地面に落ち……


「まだまだ行くぜぇ!」


なかった。それは地面に落ちる前に山羽にキャッチされ、そのまま攻撃のためのものとしての役割を果たす。


出刃包丁を掴んだ山羽は、出鱈目に刃を振り回した。


ギンッカンッという金属同士の触れる音が、廊下に響き渡る。


落武者は、その包丁捌きに対して、正確に刃を当て続ける。


互いに攻撃が入ることはない。


「おらおらおら、いね!いね!」


山姥は命のやり取りが楽しいのか、一人でますます盛り上がる。


刃が重なるたびに火花が飛ぶ。


「……」


落武者はどこまでも無機質だった。しかし、だからこそ正確に、山羽の激流のような攻撃を防いでいた。


しばらくの攻防。


その均衡を破ったのは、落武者だった。


怪異は山羽の攻撃を避けつつ、大きく一歩、後ろに跳ねた。


山羽の攻撃が空振る。


「ちっ」


落武者は、刃を構えていない状態の山羽めがけて、刀を横に一線。


目では追えない早い一撃が山羽めがけて伸びた。


しかし、ここで山羽が初めて回避に出る。


思いっきりその場に屈伸した。彼女の頭上を刀が通過する。


「おりゃぁあ!!」


山羽はそのまま一気に切り上げる。足元から飛び上がり、出刃の先が落武者の体を掠めた。


しかし、その攻撃は浅い。落武者の鎧に切り傷がついたくらいのものだった。


もちろん、武者の攻撃は止まらない。


刀を振り切った状態の落武者は、その際に一緒に出した右足を軸にして、くるっと回転した。


そのまま、左足のかかとを山羽にぶつける。


回転蹴りだ。


「……くっ」


山羽は廊下の壁に飛ばされた。


一応、両腕を盾にして防いだようで、背中が壁に軽く衝突した程度で済んでいる。


「ってぇなぁ、じんじん痺れるぜ」


山羽は両手をフラフラと振って、腕に伝わった痺れを取ろうとする。


落武者は相変わらず落ち着いた様子で、刀を山羽に向けて構え直した。


刹那、落武者は山羽の目の前に立っていた。


刀を振り上げて、高い位置で固定している。


ブンッ


風を切る音とともに、刀が振り下ろされた。


キィィィイイイイン


今度は、金属の擦れる音が耳をつんざく。


そこには、必死の形相で、落武者の攻撃を出刃包丁で受け止める山羽がいた。


「あっぶねぇなぁ」


何とか防いだ山姥だったが、それでは終わらない。ズンッと落武者の攻撃は重みを増す。


「……」


何も発さない。何を考えているのかも分からないが、込める力はグングンと上がっていく。


「死に損ないがぁ、しゃしゃってんじゃ……」


そのピンチが山羽に取り憑く山姥の心に火をつけたのか、彼女はガニ股で踏ん張りながら、迫り来る刀を押し返した。


「ねぇ!!」


攻撃を押し返されたことで、落武者が背後によろける。


それを逃す山羽ではない。


彼女は包丁の刃先を落武者へと向けた。


決まった。


山羽は、勝ちを確信した。


彼女は一瞬で判断する。


「ここは」


『斬る』『刺す』


二つの思考が身体を縛る。


取り憑いている山姥の『斬る』という考えと、本来の山羽の『刺す』という考えが一つの脳内、一つの体内で重なった。


その結果、脳からの命令が二つに分かれ、身体はどちらの命令にと従おうとした。そうすると、結局中途半端な動きになる。


「なっ!?」


この反応は、山羽か山姥か。


彼女の繰り出した攻撃は、落武者の横側、何もない空間にスッとくり出された。


山羽が呆気に取られたところで、落武者の攻撃が飛んでくる。


目の前にいる獲物に向けて、刀を突き立てた。


絶体絶命。


「しまいじゃ」


終わりが見えた二人の戦いに入ってきた声は、花子だった。


ずっと様子を見ていた花子が、山羽のピンチを認め、気がつけば二人のそばに立っていた。


「流水」


その言葉と同時に、落武者の体が地面に引き込まれる。


「……!?」


落武者は花子の方を見るが、脚を埋められた時点で、彼に勝ち目はない。


機動力を失った落武者は、花子に向かって刀を振るうが、二人の距離を考えれば、何の意味もなさない。


「流れよ」


必死に呑まれる渦から逃れようとするが、上半身をバタバタさせるだけだ。


10秒もしないうちに、トプンッと、落武者は地面に沈んでいった。


残ったのは、山羽と花子。


山羽は、一切喋らずに下を見ている。


その姿はもとの山羽に戻っており、綺麗な黒髪が彼女の清楚さを増幅させていた。


「あー、その、何じゃ」


花子は一人で言葉を選んでいる。


「まぁ、そんなことも、ある」


それ以上の言葉が浮かばなかったのか、花子はそれだけ言うと、ウンウンと頷いた。


「……」


山羽は黙ったままで花子を見た。


苦笑いの花子と、淀んだ表情の山羽の視線が交わる。


「な、なんじゃ?」


「私、弱いですか」


「……正直、強くはないのぉ」


ここで嘘はつけない。命の駆け引きをする場に立つ者として、己の力量は分かっていなければいけない。


力の過信は、その者の死を招く。


「……」


「……」


お互い沈黙の時間が過ぎる。


「……分かっては、いるんです」


山羽の吐き出した言葉を、花子は黙って聞いている。


「私、弱いから。弱いから、山姥に意識を乗っ取られて……思うように、体が動かないんです」


山羽は立ち上がった。


「山姥に思考を持っていかれないように、自分の意識で戦えるように、私は強くなりたいんです」


山羽は、今回の敗因を『山姥に思考を奪われたからだ』と結論付けたようだ。


花子に向けてぐっと踏み込み、意気込んでいる。


それを見た花子は、少し引き気味に返答した。


「まぁ、どう考えるかは人次第じゃ……ほれ、切り替えれたのならそれでよい。見回りを続けるのじゃ」


「……」


花子の言葉に少し引っ掛かりを覚えながらも、山羽は「はい」と頷いた。


「二度目、ですか……」


山羽が花子に助けられた回数。


「ククッそう褒めるでない」


そう言った花子の顔は満足げにドヤっていた。

その後、少し真面目な顔で呟いた。


「まぁ、お主たちよりは強いのは確かじゃ」


「ははっ、いちいち癪に障る怪異ですね」


それから、二人は一通り校舎内を見て回ってから職員室に戻った。


「おう、おかえり」


祠堂の仕事も終わっていたようで、片付けをしていた。


「二人とも大丈夫だったか?」


書類をコンコンと揃えながら視線を二人へと向ける。


「はい……」


山羽が明らかに落ち込んでいるのを見て、花子の顔を見た。


花子は、山羽にバレない程度に首を横に振った。


「そうか……まぁ、無事なら何よりだよ」


山羽は何も返さない。こんな時に気の利いたことも言えない祠堂は、書類をどさっと机上において、頭をぽりぽりかきながら言った。


「帰ろうか、三人で」


それから、帰りのコンビニで、祠堂は山羽にアイスバーを奢った。

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