第51話 ベイビーにミルクを
「なんだか久しぶりに会った気がするなぁ。セルフィ」
「私も同じ気持ちだわ。どういうわけだか知らないけど、二人いた仲間は入れ替わったみたいね」
「不本意だがな。二人を見つけ出すのに力を貸して欲しい……なんてわざわざ言うまでもなかったか。
ここに到着する時間まで、すでに占いで当ててるわけだからな」
「そんな大したものじゃないわ」
などと他愛もない雑談を元夫婦が交わしている時であった。
皇女がおよそ彼女の身分にはふさわしくない下品な声を夜の静けさに響かせた。
子供がおもちゃを見つけた時のような素っ頓狂な叫び声は家の中に引っ込んでいる町中の人々や、下水道に住み着いたネズミ一匹にまで聞こえそうなほど繰り返し反響しながら町の奥へ浸透していった。
「うあっ!」
「なんだ藪から棒に。姫様、そんな大きく口を開けちゃって」
「団長、もしかして思い出せそうで思い出せないアレ、とやらを思い出されたのですか?」
「どうして私は今まであの人物のことを忘れていたんでしょうか。その顔で思い出しましたよ、セルフィさん!」
「わ、私?」
「待て待て姫様。セルフィはここに用があってきてくれたんだ。まずは話を聞こう。
俺たちのためになることのはずだ。何か占いでもしてくれたのか?」
平均よりかなり背が高く、そしてそれ以上に身分が高そうな女性が会うなり自分の顔を指さし、だしぬけに騒ぎ出すのであっけにとられていた占い師セルフィ。
久々の出番である。彼女はふと我に返って話を続ける。
「ま、私の占いの魔法がなかったとしても大体何があったのかは察するところだけど占いの結果を言うわね。
先生とビビ君は今、ある男と一緒に居る。その男はアベル、あなたと似た雰囲気があるのよ」
「それがアクセルだな。やはり、ボマーの野郎追尾されて負けたか」
「アクセル様に追いかけられては逃げることは不可能だったでしょうね。
それでセルフィさん、他に何か?」
「そう、それを言おうと思っていたのよ!」
「ママ先生、私もう眠くて眠くて。もう限界なんですけど」
この時代、明かりを一晩つけておくだけでもまあまあのお金がかかる。
そのため城門付近も明かりはなく、光源は欠けた月とセルフィが手にした、ぼんやりとした暖かな光を放つ、まるで持ち主の彼女に似た雰囲気のあるガスランプのみである。
それを持ったそんな中、だしぬけにセルフィの後ろから年齢不詳の女が出てきた。
比較的若々しくてきれいな美女ではあるが、少女のようにも見えるし、中年のようにも見える不思議な女性だった。
つまり全く年齢が不明なのだ。明るい所で見るとまた違うのかもしれないが。
その魔女の顔を見て、アベルはさっきの皇女殿下とほぼ同じようなリアクションをとったのだった。
「うあっ、まさか……まさかミリーか?」
「ミリーこと、ミリアム・シンダーガード。孤児院"セラの家"が生んだ怪物ですよ、先生」
「えっ、あの"魔女ミリアム"ですか。どうなってるんですか団長!?」
アベルが驚いたのは、モードがミリーのことを有名な魔女として知っているということであった。
今一度説明をしよう。ミリーことミリアムは三十年以上も前、孤児院"セラの家"にいた。
セルフィは昔セラの家で孤児たちを面倒見ていた。その影響で、今もミリアムは彼女のことをママ先生と呼んでいる。
先生であるが、同時にママでもあるからだ。さて、ミリアムは三十年以上前からそこで生活をしていた。
そこへ突如現れたのがアベルとビビ少年で、この二人と一緒に行動していたミリーことミリアムは魔女イザベル事件に巻き込まれてしまう。
その際にもビビ少年とそれなりに絡みがあったわけであるが、やはりそれ以上にアベルに対しては並々ならぬ大きさの感情を持っていた。
彼は彼女の初恋の人であり、父親か、あるいは年の離れた兄のような存在であった。
先生の意向でもうアベルには過去に存在した人とのつながりを持たせたくないとのことで、セルフィとともに彼女はこれを渋々了承し、会わないようにしていた。
実に二十数年ぶりの再会である。五十近い年齢だが、魔女なので普通の人に比べると容貌を誤魔化す術には事欠かない。
彼女も魔女たちの例にもれずとても実年齢を見た目から推し量ることは出来ないような見た目をしていた。
とはいえ、半吸血鬼化してしまったセルフィが六十近い年齢でありながらまるで二十代のように見えるのに比べれば、ややミリアムのほうが年相応で自然な外見をしていると言えるのだが。
本人には言えないが、ちょっとだけママ先生のことを羨ましいと彼女は思っていた。
彼女は極めて俗っぽい魔女だからである。ミリアムは昔からプラグマティスト。
実用主義者で効率主義者で現実主義者の面の強い性格だった。
語れることはほかにも色々あるが、ここではこの辺で説明は終わりにしておこう。
大事なことは次のことだ。ミリアムは瞬間移動の魔法を身に着けている。
この世界の魔術師の上澄みしか出てこないのでそうは中々思えないかもしれないが、ほとんどの魔術師は大したことは出来ない。
そして上級の魔術師でさえ空間をどうこうするなどという大それたことはまずできないのだがミリアムは才能だけで小さな子供の時からそれを可能にしていたのである。
また、彼女の出身地は三百年前に同じく空間系の魔術を身に着けていた"ニコ"と同じであることから、遠い血縁関係などがあっても決して不思議ではない。
つまりアベルやアクセル兄弟とは遠い親戚にあたることになっていても不自然なことではないが、彼女の魔法の才能の源泉は不明な点が多く、血縁関係も明らかではない。
孤児院にいたことからわかる通り孤児だったので親の顔も知らないのである。
とはいえ、当然大人になった彼女は瞬間移動の魔法を扱える。その力でもって、彼女はセルフィの元へやってきた。
そしてそのままアベルを出迎えに来た以上、彼女がどういうつもりかは火を見るよりも明らかなことであった。
「まだ戦っていたのね、アクセルと。何十年もずっと。
いいえ、何百年もと言ったほうがいいかしら」
「待て待て、どういうことだか説明してくれ!
セルフィに呼ばれてミリーが来るのはわかるが、二人は何で知ってるんだ?
ミリーは死神騎士団には入っていなかったはずだが」
「魔女ミリアムと言えばその筋では知らぬもののいない魔女ですよ、先生。
魔人アクセルすら彼女を捕えることは出来ず……まあ早い話、情報通の魔術師の間ではアクセル様とライバル関係だと思われてます。
もっとも、それすら裏の話ではありますが」
「まあアクセルの名を知ってる時点でかなりの魔術師だろうが……って、そうじゃないだろ。
モードレッドはその理由でミリーのことを知ってるみたいだったが、姫様とミリーはまるで面識があるみたいだったな」
「そうよ」
と言い、ミリアムがその疑問に答える。ただし気がせいてるのが手短に、そして早口でだ。
「あなたの娘を彼女に引き渡したのも私。今回の"魔女の一撃作戦"も事前に把握はしていたわ」
「なにっ!? だからそれがどういうことなのか説明してくれ」
「それは私の口からは……どうするのママ先生?」
「わかったわ」
中々話が前に進んでこないのだが、それもこれもこの期に及んでまだアベルに知らされていない情報が山のようにあるのだからしようがない。
彼に納得させなければ物語は前に進まない。納得は何事よりも重要だ、という見解においては筆者もアベルも一致している。
納得とは理解し、許可すること。逆に理解できないことは許可することが出来ない、ともいえる。
行動をするからには、それに必ず結果が伴う。その結果は納得のいく過程から導き出されたものでなくてはならない。
何を行動すべきか。その指針が納得である。すなわち、納得するということは己の正義と判断を信じると言うことだ。
納得しなくても行動をする、ということは己以外のところに、判断の指針を求めているということでもある。
それは"常識"だったり"宗教の教え"だったり個人によってさまざまであるが、そのように自分以外のものに判断の基準を置く者と、"納得"を欲するものとでは全く相いれないであろう。
どんなに時代が変わっても人間社会というものは、法や宗教ではなく己だけを信じるアウトローよりも、社会的な通念に重きを置く従順な者の方を重視してきた。
だから"納得"は、社会的な常識に反してでも追及せねばならないという"覚悟"を持つ必要があるのだ。
そんなアベルが納得するのに必要な情報を与えるためにセルフィは重い口を開いた。
「私はあなたに名前をもらったわ。セラの名前は捨てた。私も捨て子だった」
「なにっ!?」
「だから捨て子を拾っていたわ。でもそれは私がして欲しかったことをしているだけで、後ろ向きな行為だったのよ」
「そ……そうか?」
と言ってアベルはモードのほうを向いていった。二人とも、腑に落ちない話に眉尻を下げて困惑の表情を浮かべている。
「な……なんで私に振るのよっ」
「そんなことを言われたのは初めてだった。私のしていることは清貧で非の打ちどころのない善行だった。
誰もが私を心優しい慈母と褒めてくれたからね」
よく変な宗教が「世界に愛を」とか「世界平和」みたいなスローガンを打っているイメージがあると思う。
あるいは政治家とかが「日本を変える。」とか「国政を、前へ。」みたいなふわっとしたスローガンを打っているのはよく目にするだろう。
このような中身のない、それでいて否定しようのない前向きなことを言っている者の言葉は信用しないほうが身のためである。
上記のような言葉は事実上、無意味で中身のないものだ。それでいて正しい、良いことを言っている。
そのため相手の反論や否定は封じている。このように否定困難な善良のヴェールを纏っているということは、逆に言えばそれの奥に何かを隠しているということでもあるわけだ。
要するに第一印象を良く見せることで、言葉を信じやすくさせる効果がある。言っていることが詐欺だったとしてもだ。
最良の対策はそもそも関わり合いにならないことである。
セルフィも同じで、孤児を育てると言うのは全く非の打ち所がない善行だ。
彼女は誰にも批判されようのないヴェールを纏っていたのである。
だからそれに対し否定の言葉をかける者は、アベルを除いていなかったようだ。当然と言えば当然である。
その本人でさえ、自分が本当にそんなことを言ったのか懐疑的である。
「私自身のために生きていいのだとあなたは教えてくれた。気がつかせてくれたの。
だから名を変え、私は孤児院を閉鎖することにした。最後の世代が大きくなったから」
「……娘のことはどう思ってるんだ?」
「だからそのことを話そうと思ってたのよ。帝都の死神騎士団の方が直々に現れたのが数年前のことだったわ。
私とあの娘の石化病を治せる可能性があるから帝都に預けてみないかと、この皇女様がいらっしゃったの。
迷ったけど、やっぱり娘にはいずれ普通の暮らしをさせてあげたいと思って」
「なるほどな」
とだけアベルは口にした。色々言いたい気もするが、それを全部言うとややこしいのでやめておいた。
皇女の考えは正しいし、その話を聞いて娘を預ける判断をしたセルフィにもアベルは十分理解を示すことが出来る。
だが一方、次のことを今の彼は了解している。皇女は嘘はついていないが、少々人が悪いというか騙す気満々でセルフィに話をしたようだ。
セルフィ親子の石化病は魔女イザベル由来。その魔女を研究した成果が帝都にはあるので、確かに娘の石化病を治すことは無理ではないだろう。
少なくとも、治せる可能性があるとしたら帝都の宮殿を置いて他にはあるまい。
しかし結局のところ、皇女は娘を預かった理由を単にこの"魔女の一撃作戦"と呼ばれる二十年もの間ひそかに進行させてきた計画の実行段階に際し、手札として使えれば御の字。
とでも考えてセルフィに上記の話をしたのは明らかであり、そこに"恩師の娘および妻"という理由で与えられてもおかしくない温情は見受けられなかった。
「あの大人しかった姫様がなぁ」
「あれから数年……少しぐらいは大きくなったかしら。
立って歩いたり喃語を話すくらいは出来るようになってたのよ?」
「一年に一週間も成長しないとは、手のかかる子供ねぇ」
「そう言うなモード。その代わり若い時代が常人の数十倍は続くんだ。
もっとも、そうならないように俺も研究をしに帝都へ行っていたんだが」
「あの研究はどうなったの? 仮に成果があったとしても、あれから帝都へは一回も行けてないんでしょ?」
「ああ、今思えば先生が帝都には近寄らせないようにしていたんだろうな。
俺は記憶を取り戻した。記憶の悪魔が取り戻させてくれたんだ。
恐らくそれまでは、宿主だった先生の許可がなかったようだが、もう先生はいない」
「もうあの人がいない……?」
「もういないんだ。俺はずっと後ろめたかった。誰よりも孤独な先生より先に家族を作ったのが」
「そんなことはないわ。あの人はあなたの幸せを第一に考えてくれているはず」
「先生、ここはひとつ、魔女ミリアムの力を借りませんか?」
「そうしましょうよ。絶対そうした方がいいわ!」
などと女たちに詰め寄られたアベルは、ぼんやりとランプの光に照らされた顔に複雑な陰影を作りながら答えた。
「俺は怖かった。守るものが出来るのが。
俺の命の使い道は、先生が親父を復活させるための犠牲だと、そう考えて生きてきたから」
「先生……!」
皇女の心に一点の曇りもなかったかというと、それは事実とは異なっていた。
自分の力ではアベルをとうとう変節させられなかった、という点において不満や嫉妬の感情は確かにあった。
だがそれでも、彼が意見を曲げようとしているところを見ると胸が苦しく、鼻の奥深くが急激に痛みを伴いながら運動を開始していた。
目頭に涙がにじんで、声がかすれていた。彼女の期待通りの言葉を男は続ける。
「ミリー、帝都へ連れて行ってくれ。姫様、協力してくれるな?」
実のところ聞きたいことは山ほど残っていて、質問もすべて答えてもらっているわけではいのだが、アベルはその問題をいったん保留することに決めた。
今、何をすべきか。自分に何ができるのか。つい先ほどまでの彼には迷いしかなかった。
皇女たちの手前、まるで迷いなどないかのように黙々と歩を進めてこの町までたどり着いたわけだがその内心は、五人同時に告白された中学生くらい揺れ動いていた。
「はい。私はあなたにあの子に会ってほしかった」
「やっと意地張るのやめてくれたのね。ああそうそう、遅れたけど私は死神騎士団のモードで、こちらは団長の皇女殿下よ」
と、モードはミリアムたちに自己紹介を行った。
ミリアムは名高い魔女らしいのだが、ここは普通の市井の人と変わらない形で返事を行った。
「これはご丁寧にどうも。私は見知った人や場所、物には"マーキング"してそこに跳ぶことが出来るの。
もちろんあの娘のところへね。でもいいのかしら。
ママ先生からは"ビビ"って子供を助けに行かないと、と聞いたけど」
口ぶりからしてミリアムはどうもビビ少年が、彼女の妹同然に育った女が産んだ子供であるとは知らない様子であるがそのことを説明している時間も惜しいと考えたアベルは説明を断念せざるをえなかった。
そもそもビビは本当にその女から生まれた子なのかどうかも、皇女から聞いた話でしかないので確証はないのだが、確かめている時間もない。
「とにかく、どっちも助けに行かなきゃならない。時間は限られている。
急に赤ん坊一人世話しなきゃならなくなるが……それでもいいか、セルフィ」
「えっ、あの子を返してくれるの? それなら何だってするわ!」
「そう言うと思っていた。自信はある。俺は記憶が戻ったからな。石化病を解く薬なら、俺は作れるはずだ」
「えっ、それじゃあ、あなたがいてくれたら、娘はとっくに……?」
「だからかもな。会うことを許してもらえなかったのは。
こんな時間だ、宮殿も警備は手薄だろう。一瞬で盗ん……いや、連れて帰ってくるぞ」
「了解。じゃあ二人で行きましょうか」
ミリアムの提案に、その場にいた彼女以外の全員が同じ言葉を発してしまった。
「えっ」
「何を驚いてるのよ。決めるのは私。さ、時間がないんでしょう?」
「ちょっと待って――」
久しぶりに会ったので思い出すのに時間がかかったのだが、そういえばミリアムはこういう性格だったと思い出して得心がいったアベルだったが、気がつけばそこはさっきいた街の入口とはずいぶん違う光景の場所だった。
先ほど上の方で、明かりをつけているのは金がかかる時代と言ったが、ここはそもそも普段人が立ち入らない場所。
石化病の子供を安置している場所である。明かりは全くないのだが、何故かミリアムの顔だけ見える。
彼女は魔女らしく懐から小さな杖を取り出した。杖と言っても体を支えられるような代物ではない。
せいぜい長さは三十センチメートルもないような指くらいの太さの枝を加工して作った、木製の杖だ。
その用途は完全に魔法用で、体など支えたらすぐに折れてしまうことだろう。その枝の先がまるで電球にでもなっているように白く発光していた。
目が慣れてくると、アベルとミリアムは自分たちが全く意外な場所にいることを了解した。
空には欠けた月。月光が照らすは宮殿に生い茂る草原の草たち。そこに、丸まって寝息を立てている泥んこの子供がいた。
「なにっ!?」
「ど、どういうことなの。あの子は宮殿に安置されているはず……!?」
「いや、待て。間違いない。人違いじゃあないぞ。この子は間違いなくセルフィの子だ」
曲がりなりにも父親の言うことだ。無視できないものがある。
異論をはさむつもりはないが、代わりにミリアムはこう質問した。
「それはそうだけど、どうしてこんなことに……もしかして治療は!?」
「いや、よく考えてみれば全く納得したよ。そうか。アクセルはそこまで考えていたのか?
いや、あり得ないな。あいつはそういうタマじゃあない」
「えっ、だからどういう――」
「――この子やセルフィの石化病の原因というのは吸血鬼が生命力を与えるのと引き換えに眷属化させたことだったんだ」
「それが先生のことね。で、先生はどこへ行ったのよ」
「死んだ。だから眷属契約も解けたようだ。この子は生まれて初めて、人間として生きているんだ」
「なんですって?」
アベルは泥んこの娘を抱きかかえた。つい今朝までは死神騎士団らによって最低限の世話はされていたのだろう。
キチンと洗濯された赤ん坊用の薄い――いかにも女の子らしい桃色の生地に彼は微笑を禁じえなかった――肌着を半分くらいは泥にまみれさせている娘は、どうやら腹が空いて、この宮殿内の大自然を満喫しながら池で水分補給。
その後月明かりのほとんどない夜の暗闇の中、泥遊びをしていたら疲れて寝たらしい。ずっと石化病だったので外で遊ぶという経験もなかっただろうからあり得ない話ではない。
幸運だったのは池で万が一の事故を起こす前に大人によって奇跡的に見つかったことだった。
「泣かない。赤ん坊は本能的に泣くもんだが、泣いて人を呼ぶと言うことを知らないんだろう」
「石化してたら、そりゃあね……で、感想は?」
「いや感想って……」
どういうわけだか、こういう年頃の女性というのは赤ちゃんの感想を必ずと言っていいほど求めるものである。
むろん、可愛い以外の返答は許されていないので、じゃあ最初から可愛いでしょと聞けばいいのであるが決まってそうしようとはしないものである。
「うむ……冷静に考えてみると、赤ちゃん一人を急に世話することになるのって大変なんじゃないか?
お腹を空かせてるようだ。つかぬことを聞くがミリー、母乳って出るか?」
「本当につかぬことを聞くわね。出るわけないでしょっ!」




