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第40話 次元斬

「全く、女優だな。ビビの魔法を解いてやった時の演技にはすっかり騙されたぜ」


「把握してなかったことを部下がしていたことには驚きました。ところで先生」


「なんだ。終わったら一つ俺からも質問がある」


「あっ。私はいいのでお先にどうぞ」


「俺たち、同じ件を話したかったのかもしれないな……?」


「そうかもしれませんね」


「じゃあ話すが、あの軍艦たちの様子は尋常じゃない。

姫様なら何か知ってるんじゃないかと思ってな」


「丁度、私もその件が話したくてここに」


「やはりそうか。先生は先に一人で行かせたんだが、まあ死ぬことはないだろ。

その件について何かあれば頼む」


「実はプリンツ・オイゲンのもとにある誤情報が入りました。

敵が……そう、今の帝国にとって最大の敵がこの町にいるとの情報が入ったのです」


「それはつまり……?」


「そうです、アクセル様です」


「遺体の反応はないはずだが……?」


「誤情報ですからね。なぜそのような誤情報が出回ったのか、心当たりがありますか?」


別に考えなくてもわかることなのではあるが、小僧はちょっと考えるふりをしてもったいぶってから、こう答えたのだった。


「ええっと、そりゃつまり、アクセルに似てる誰かさんがこの町にいることがバレたってことか……?」


「ふふふ。誤情報ではありますが、艦隊はいずれ艦砲射撃によって攻撃を始める可能性が高いです」


「嘘だろ。もうちょいしっかり確認してくれよ海軍も。

教えてくれて恩に着る。速やかに仕事を終わらせて離脱しないとな。

この町にはほかに用事もない。一緒に来るか?」


「あれっ。聞かないんですか?」


と、言うからには皇女殿下は聴いてほしいことがあるのだと考えた小僧は踵を返して彼女の顔をじっと見た。


「聞いてほしいのか。だったら聞くが、死神騎士団とビビが連携していたのはどういうことなんだ?

まさか団長が部下のそんな動きを知らないわけがないよな?」


「利害が一致したので。彼はあなたを倒したいようでした。結果は……まあわかり切ったことでしたが。

この瓦礫を見る限りだともう死んだんですか?」


「逃げたようだ。空間をどうこうする力を持った仲間がいたからな。

姫様、俺は先生からあの剣は三百年以上も昔に――」


「あの方の遺品は髪の毛一本に至るまで宮廷のもの。親族だからと言って渡すわけにはいきません。

あ、でも安心してくださいね先生。あなたの石化病の娘なら宮殿に安置してあります」


安置してある、という言い方では、まるで人間のことを指していないかのようである。

しかし皇女殿下がそのような配慮が出来ないタイプではない、ということは皇女殿下との蜜月の日々の記憶を持っていない小僧にもわかっていた。


「石化病の娘はどうした?」


「会いたいんですか。なるほど、そう言うと思ったから先生も教えなかったんですね」


皇女は目の前の男が拳を握り、必死に自制心を稼働させていることをめざとく発見していた。

コレ以上話していても彼をさらに怒らせるだけであるが、皇女は挑発でもするかのように言った。


「先生は、セルフィさんの家……という場所にいると言っていましたか?」


「先生にも嘘をついているというわけか?」


「多分あなたが思っているのとは状況が違うと思いますが。あの子供はああするしかなかったんですよ」


「やれやれ。どうしてこう、俺の周りの奴は俺のことを殺そうとしてくるんだ?

しかも見たくもねぇ裏の顔まである。見せてくれるなよそんなもん」


「しかし……先生は例外なんですか。あなたを生贄に失った家族を召喚しようとしていると聞きました」


「俺は死ぬのはごめんだ。なぜかと言うと、先生のその目的が果たせなくなるからだな」


「誰もあなたのことを殺そうなんて人はいませんよ!」


とうとう、皇女殿下はさっきまで顔を覆っていたポーカーフェイスの仮面を脱ぎ捨てて声を荒げた。


「私も、ビビ君も、それにきっとアクセル様だってそう。助けたいと思っているんです。

あの悪魔のような魔女の手から。そんなこと、もうとっくにわかっているんでしょう?」


この男は、当然ではあるがこの作品の主人公の一人であり、第一話からその登場人物としての役目を終えるまで、常に首尾一貫していなければならないことがある。

このような甘言には決して動じない、大黒柱のような強い信念が必要なのだ。

彼が腹に決めた一つの信念は、はたから見れば、ただ一人の家族である母親に執着するみっともない姿と等価交換であるが、だからこそ、彼はこの信念を頑迷なまでに守り通すのだ。

公の世界がある。そして信念の世界がある。

かつて世界は腹に決めた信念でどこまでも駆け上がってゆける世界だったが、徐々に両者の位相はずれていき、この時代にはもう、嫌味なまでに公正で一般化された法の支配によって無様なまでに放逐されてしまっている。


社会における正しさと秩序の権化であるこの死神騎士団の団長・シロル皇女殿下はまさに公の世界の名実ともに主である。

男は正しくも間違いでもない世界を生きる一匹の無法者として、両者の間にある感傷的な結びつきがまるで、ぽっかりと黒い口を開けた大きな地割れの上に張られた一本の頼りない糸のように思えていた。

皇女は、いまだ糸電話のようなこの連絡線がまだ生きているのだとすっかり信じていた。

そうでなければ上のように感情的な叫びをぶつけるはずはなく、その一縷の望みを完全に断ち切るようにして、男は言った。


「どんなに楽だろうな。その言葉に縋れたなら。でも俺は、先生のたった一人の家族だからな」


皇女殿下はこの言葉を聞いて大地がひっくり返ったかのように愕然とする思いだった。

と同時に、今まで抱いていた違和感もすべてが雪のように解けてどこかへ流れて行ってしまうのを了解した。

この男が生まれたばかりの娘や妻から逃げるようにして帝都にきて自分と出会ったのも、そのような思いが一貫してあったためであると皇女は理解した。


つまり、たった一人の家族しか持たない先生より先に家族が出来たのが彼は後ろめたかったのである。

次に訪れた宮殿では先生として子供たちと一緒に過ごす生活を快く思い、ここに居続けたいと願い始めている己に自己嫌悪を抱いていたのである。

自分を孤独で哀れな魔女のそばに封印しておくことが、最良の選択であると番犬じみた視野狭窄の頭で、頑ななまでに信じ続けていた。


「世界中が敵に回っても、俺だけは味方でいなきゃいけないんだ。

姫様、あんたがそう思って先生の敵に回ったのは、俺のせいだということなんだろ?」


「違います、これは私が勝手に……!」


「先生を死神騎士団の力で殺せるとでも?

歴史上そいつがどれだけ失敗してきたか一番知ってるはずだろ?」


皇女殿下は悲しそうにうつむいた後、ぽつりと言った。


「すみません。少し計画を話しましょう」


「ど……どういう風の吹き回しか知らないが、聞こうか?」


「私の部下にはアクセル様の組織から引き抜いた死神騎士団員がいるんです。

作戦の重心をそこに置くのはほかの部下から反対もあったんですけどね。

彼女に課した任務は両者の間を蝙蝠のように渡りながら、一か所に戦力の集結を行うように、誘導することでした。

もちろんすべては、魔女イザベルを抹殺するためです。私も、あらゆる力を使ってそれを支援する役目です」


「そうはさせるかっ!」


「私も死神騎士団やプリンツ・オイゲンすらも利用して戦力を集める役目です……もちろん、あなた方も含めて」


「なにっ」


「艦隊による艦砲射撃……港町は焦土と化します。誰も生き残ってはいないでしょう。

魔女の遺体も瓦礫の中に埋もれ、もう発見することは困難。あとは生き残った魔女を始末するだけです」


「ちょっと待てよ……何を言ってる。そんなことはあり得ない。

姫様本人がここにいるんだぞ。戦艦の主砲による艦砲射撃だなんて……そんなことがあるわけ――」


「まさか、私が何の意味もなく突然計画を語りだしたとでも思っているのですか先生?」


小僧は皇女にせせら笑われても、もはや何の感慨もわかなかった。

彼女の次に発する言葉に全神経が集中していた。何でもいい、俺の予想している言葉だけは言わないでくれ。

そう思いながら一瞬だけ待った。待っていた言葉がやってきた。


「時間稼ぎのためですよ。部下には必ずここへ戻るように言ってありましてね。

あっ、部下はさっきお会いしましたよね。彼は"初代のつるぎ"を持っていたと思うのですが」


「あいつか……あいつを殺せば先生が喜ぶと思ったんだがな」


「さあっ、先生。私と一緒に帝都へ戻りましょう。一回、一回だけでいいんです!

あそこにはあなたの娘も安置してあると言ったはずです。ここにあまり長居すると危ないんですからね」


「一つ教えてくれ。要するに……こういうことか?

先生にシンファミリーとかいうやつらの壊滅をしろと依頼したこと自体が、そもそも嘘だったと?」


「シンファミリーというのがこの周辺にいるのも事実です。

アクセル様の組織の末端に位置する者たちであることも、事実です。

ですからその関係でビビ君が計画に関わってきたのを知ったときは驚きはしましたが……計画に支障はありません。

既に先生はファミリーと潰し合わせています。時間の問題でしょうが、射撃開始には間に合うでしょう。

まさか、ファミリーごときが死神騎士団に倒せないと思っていたんですか……?」


「姫様。悪いがもう構ってやれる時間はないぞ。先生なら艦砲射撃でも死なないかもしれない。

問題は……姫様もここから立ち去らないといけないってことだ」


「あなたらしいですね。この状況でもまだ私のことを心配してくれるんですからね」


「当たり前だろ」


「御心配には及びません。仲間が来ますから……いえ、もう来たようです」


皇女殿下が後ろを振り返ると、そこには次元を飛び越えて例の三人組が出現していた。

力は持たされているが、何も知らされていない男、ビスマルクは案の定そこにいる上司が勝手に容姿を元に戻していることに抗議をした。


「団長、どうしてその格好でここを――」


しかし抗議の声もむなしく上司は部下の声を遮ったのだった。


「ご苦労様。総員、撤退します。まったく遅かったですね。迎えに行こうかと思っていたところです」


小僧は耳を疑った。迎えに行こうかとはどういうことかと。


「姫様、おい――」


小僧は油断していたので、一瞬判断が遅れたのである。

次のことに気が付いた時にはすでに遅く、彼は隣町にある、例の城館にいた。

次のことというのは、姫様は、当然小僧も撤退させようとしていて次元を切り裂き、瞬間移動できる部下を待っていたということである。


「クソッ、ここは……あの城か!」


「ご名答。理解しましたね、先生。あなたはもう絶対に……魔女を助けることは出来ないんです」


「いや、まだだっ」


小僧は確かに皇女の言う通り自分が八方ふさがりの状況にあることは理解しているが、それでも頭は冷静だった。

むしろ――いや、だからこそ――いつもの飄々としたおバカそうな雰囲気はなりをひそめ、極限まで研ぎ澄まされた意識が冷たく覚醒していた。


「問題はない……何もな。先生は街が焦土になる程度では死なない。

防ぐべきはお前たち地上制圧部隊というわけだよな。

そして俺はそいつを倒して剣を奪還する。剣を返してもらう理由が一つ増えただけだ。違うか姫様?」


「少し昔話をしましょうか。昔あるところに――」


「なにっ。もうその手は食わないぞ。時間稼ぎはやめろ」


皇女は遮られても構わずに話を続ける。


「魔女の子がいました。英才教育を受けた彼はとうとう帝都にて、初代死神騎士団の団長にまで成り上りました。

彼の遺した"遺産"は生まれ故郷のエルアラメインの地に送り届けられました」


「いい加減にしろ。何を知っている!?」


さっきは威勢のいいことを言っておいてまんまと皇女殿下の術中に落ちている、などと野暮なツッコミはすべきではない。

そのことはいったん忘れよう。皇女殿下は頭の中がかつて存在した自分のオリジナル、ニコという男のことでいっぱいの恩人に向けて話を続ける。


「その地は現在ではノヴァ・ディアブロと……悪魔の名がついた縁起のいい地名で呼ばれているのですが覚えがないんですか?」


「……ない」


「三十数年前、私が生まれるか生まれないかの頃のことです。その地で、最盛期の魔女とアクセル様たちが激突したのです」


「なにっ!?」


「えっ」


今明かされる衝撃の真実に、小僧とビビは思わず口から言葉にならない言葉がよだれのように漏れ出た。

ビビも詳しい話を聞いて皇女殿下たちに味方をしていたわけではないし、そんな時間はなかった。

しかし死神騎士団の三人には周知の事実のようで、二人とは対照的であり、この城館の監視塔の屋上にある狭い空間にはかなり激しい温度差が発生していた。


「何故あの場所に魔女が居を構えたと思うのですか。もちろんその地の領主が愚かで利用しやすかったのはあるでしょう。

ただ……魔女にとってはあの場所が何やら特別な場所であったことは確かなようです」


要するにこういうことである。三十数年前、まだアクセルが死神騎士団であった頃に、ビビ達も夢で見させられたあの事件が起こった。

帝国のとある地方にて、魔女イザベルの本拠地にアクセルたちが乗り込み、魔女の悪魔は封印。

彼女の本体は悪魔が封印された影響で半死半生の状態となり、現在まで目を覚ましていない。

この事件が起こった場所というのが、三百年も前に存在した、ニコや魔女イザベルや、孤独の悪魔が暮らした田舎の村とだいたい同じだというのだ。


余談だが今生きている先生は、そのもともといた先生をもとに生み出した人工生命体に記憶の悪魔の力を使って生前の記憶を移植したものである。

もう一つ余談を言うと、その記憶は必ずしも最新のものを移植したわけではないため、過去に先生はビビと出会っているのだが、その記憶は複製には存在しなかった。

ただし、セルフィの方はその限りではない。彼女は当時の記憶を現在でも残している。


「このビスマルクは、その地を治める貴族の血筋。宝剣を持つに値する男だとは思いませんか?」


あたかも皇女は今までの話によってこの結論が導き出され、それは反論の余地なく、誰もが納得するであろう、とでもいう風に話を締めくくった。

文化が違う。生きてきた文明が、階層が、常識が、すべてが違うのである。

小僧は悟った。これは三百年も昔、自分のオリジナルが生きていた時代からずっと続いてきた物語。

先生は確かに王朝は変わり、時代も移り変わり、皇女殿下の家系は昔の皇帝とは関係はないと考えていた。

確かに彼としても、それは否定しないし、過去の罪を関係ない一族に負わせるつもりは毛頭ない。


だがそれとは別に過去から受け継がれてきた物語はまだ終わっていない。

小僧は自分に責任があると心底から感じていた。この物語を終わらせる責任だ。

ただ、平穏に家族と暮らしたいだけの者たちから力を持つものが奪い、壊す。

彼らの動機が何であれ、良かれと思ったことであれ、もう関係はなかった。


「なんだ。ニコが生前残していた子孫の家系、とでも言ってくれれば譲ったのに……嘘でもな。

そいつを持つに値する男は俺だけだ。姫様、何故だ、何があったなどもはや聞かない。

俺から教えてやれることはもうない。それと――」


「何でしょうか、先生?」


皇女が答えようとしたときだった。ビビは見る見るうちに血相を変えて青くなりながら叫んだ。


「皇女殿下、危ない!」


「あんたの前でも残酷になれそうだ」


一閃。それが終わって数瞬の時が経っても、未来が見える能力を持つ少年を除いてまだ誰も、何一つ状況を理解できていなかった。

たまたま隣にいたビスマルクという貴族の男の上半身が下半身と分離して落下していくのを見ながら、これまでの人生の走馬灯に似た記憶の断片を少年は見ていた。

脳が、状況を切り抜けて生き延びるために必要な情報を記憶から文字通り必死に検索しているのである。

ビビの目に見えた未来の様子は通常ではありえない光景であった。


未来が見える自分なのに、"一閃"の瞬間が見えないのである。

例えるならまるで動画を編集し、切り貼りして任意のタイミングに合成したように。


この能力を少年が自覚したのがほんの少し前のことであるのと同時に、小僧が――ところで、もはや彼にその呼び名はふさわしくあるまい。過去編の彼と混同しないように区別していたが、これからはアベルと呼ぼう――新しい力を自覚したのもついさっきのことだった。

アベルが行ったことを言葉で説明するのはあまり簡単なことではない。

何しろ実際に見たビビもよくわからないのだから。

ただ、突然ビスマルクが斬られる未来を見たので姫様にタックルをかまして、無理やり姿勢を下げさせてどうにか自分も助かることが出来た。


理屈としては、とりあえず次のようになる。

アベルは"引き寄せる"引力と"跳ね返す"斥力を扱える。早い話が、重力である。

ニコは父、孤独の悪魔から時空関係の魔法の扱いを学び、人間の身でありながらこれを扱えるようになっていたが、当然両者の分身であるアベルには朝飯前だ。

本人は殺傷能力が高すぎるのでよほど頭に来て冷静さを失った時にしか使わないのだが。

アベルは静かに切れるタイプだ。頭は冷たく冴えているが、どんな"タガ"も"抑え"も効かなくなり頭に来た相手を最大効率で速やかに破壊できる方法だけ考える。


今までそんな使い方などしたことはなかったが、不思議とどうやればいいのかはすぐにわかった。

"時間を"引き寄せたのである。具体的には時間すら変形するほどの力場が空間に発生し、現在に、"ニコの剣が自分の手に入る"という結果だけを生んだ。

そして次に、"空間をも切り裂く斬撃"が"発生したという結果だけを"発生させたのである。


やり方としては、次のようになる。

空間が超重力で歪んだ"特異点"では因果、つまり原因と結果の関係性はあいまいとなる。

さらに、未来と過去もあやふやに溶け合っている。

その状態で剣を振ると、"過去に剣を振ったから未来で斬れる"という当たり前の結果が出力されるとは限らなくなる。

因果を無視し、斬ったという結果だけを先に持ってきたのだ。

それらが、この世界の物理法則においては――少なくともビビ達が知覚できる世界においては――時間を消費せずに連続して起こったため、まるで一瞬で全てが済んだかのように見えたのだ。


「外すことも知っていた。やっぱりこいつを持つべきは俺だな」


アベルは血もついていない長剣を中身ごと強奪した鞘に納めた。

❝切断する❞よりも先に斬ったという結果が生じているため、斬ったはずの刀身に何もついていない、という理屈にあわないことが起こっていた。

ビビは自分も人間の中では相当強いことは知っていた。

一瞬ではあるが、アベルの力をも封じることが出来ていたので勘違いしていた。

相手はもともと遥か化け物。人間ではない。怪物と怪物に育てられた悪魔の半身なのだ。

全てを断ち切る刃を手に入れた男は、鞘に納めたそれの柄を少年の顔に向けながら言った。


「俺にも未来って奴は見えるらしい。どうなるかは言うまでもないな」


「……作戦が失敗したことは確かなようですね」


などとこの状況でどこにそんな余裕があるのか、皇女殿下は立ち上がりながらつぶやいた。

そんなことはわざわざ口に出して言わなくても明らかなことである。少年も、男も、頭の中に疑問符が降ってわいた。


とうとう、(あと三日で)本当に一周年が経過してしまう。びっくりです。

毎週1話のペースなら今頃50話のはずだったんですが

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