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第2話 夢

「そうみたいですね。野次馬も集まって来ましたし、失礼!」


少女が脱兎のごとく駆け出してこの地面が凍り付いた目抜き通りを離脱し、市街地の方へ消えていくのを見送ると、すぐさま小僧は振り返って後ろに座っている先生に聞いた。


「よかったのか。アレを持ったままじゃあ、悪い奴らに位置を教えてるようなもんだ」


「事情は聴かぬと言ったが何か裏があるな。あの子、身寄りが"なくなった"と言っていたのう?」


「それを引き取ったシンとかいう連中。あの子に遺体を渡したジジイ。

そのジジイに遺体を渡させた連中。あの子から暗殺依頼を受けた男二人。

うむ、情報量が多すぎてさっぱりわからねぇ!」


「何を爽やかに諦めとるんじゃ。とはいえさすがにシンのファミリーが気の毒じゃ。

アレを持ったままでは悪の魔法使いが無限に寄ってくるぞ」


「魔法使い狩りで恨みを買ってるとも聞くからな……!」


今こそ、この世界の設定について長々と説明することにしよう。

この世界には魔法使いと呼ばれる者が存在し、世の中は一部の上級魔法使いと大多数のクズ魔法使いに二分されている。

シンファミリーは典型的なマフィアらしく、売春や闇金といったしのぎがある。


だが最大のシノギは"魔法使い狩り"によって得た上級魔法使いの血だ。

魔法使いの血を摂取すると、その人間は一定時間、その魔法使いの魔法を利用することが出来る。


もちろん上級魔法使いの血を利用してすら、クズ魔法使いでは魔法の出力自体に差があるので思ったような効果を得られるとは限らないが。

それでも上級魔法使いは時間に関する魔法やケガの治癒、死者蘇生、その他非常に有益な能力持ちも多いので狙われやすい。

シンファミリーなどは、上級魔法使いを狩って血を抜き取り、換金して莫大な利益を得ている。


あと、この話の主軸である悪魔の遺体と悪魔に関してだが、それはまたあとで話そう。


「で、どうしようか先生。あ、そうだ。

遺体を持っていればその他の遺体の動きがわかるんだったな」


「この街に遺体の反応は私のと、さっきの子のとで二つで間違いない。

こちらに近付く反応はいまのところない。だがいっぺんに五つとなれば狙う者は狙うじゃろうな」


言っていなかったが、先生は四つの遺体を保有していた。


「マジでこれからどうしようか先生?」


「私が遺体のないこの街に狙いを定めたのには理由がある」


「結果的にはあったけどな遺体」


「話の腰を折るでない。ここには私の協力者がいるのじゃ。そしてお前の」


「俺の? 占い師だけじゃなかったのか?」


「あれとは別件じゃ」


「それがこの街に?」


「うむ。詳しくは後で話すがここが遺体争奪戦の最重要拠点になるはずじゃ」


「遺体争奪戦……ワクワクする響きだな」


「その者は要人なので向こうから接触を待ってくれとのことじゃ。

じゃからこうして商売人に扮してここで待っておったのじゃ」


「俺らずいぶん目立っちまったけど……?」


自分たちを遠巻きに見つめる野次馬との間にある氷が徐々に解け始めているのを眺めながら小僧が不安を口にした。


「問題はないじゃろう。それより宿に戻るぞ。

あの方よりの使者が来るまで待機と言われておる」


「あの方って先生の言ってた?」


「協力者じゃ。とにかく宿へ戻るぞ」


「へいへい」


ということになり、二人は野次馬たちにじろじろ見られながら、霜の降りた砂地をサクサク、キュッキュと音を立てながら踏みしめて歩き、宿に戻った。

二人は仲がいいが、さすがにいい年をした男女なので泊まっているのは別々の部屋だ。

二人の所持金はそう多くはない。泊まっているのは大通りから少し住宅地の方へ入った安宿だ。

その安宿の薄い壁ごしに、隣同士の部屋で泊まっている二人は会話することも出来たほどだからかなり安宿である。


「ここ、メシはなかなかウマいしベッドも硬くて薄いが清潔だな」


「当たりの宿じゃな。小僧、もう休むがよい。

あまり夜遅くまで話しているとお隣さんや上の部屋に迷惑じゃ」


「壁が薄すぎるのが難点だな。先生今何してる?」


「寝床を整えているところじゃ」


「相変わらず神経質だな。ところで先生、昼間のあの女の子のことだけど」


「シンのファミリー所属ならば我々とは対立する命運にあるというわけじゃ。

しかしボスであるシンには会ってみたいのう。遺体について何か知っているのか……?」


「あの子はシンのファミリーだからあのジジイに遺体を持たされたのか?」


「シンのファミリーに遺体を持たすことで本拠地を特定……などと考えたということかの?」


「ああ」


「フフ、それはどうか知らぬが確かなのは、お前の言ったそれは私達が利用できるということじゃ。

シンファミリー壊滅……その時にはあの子が役に立つじゃろう」


「先生もひでーこと考えるね。

でもさ、あの子と遺体を利用してシンを倒そうとしている奴がいたなら、俺たちは手を下さずともシンを倒せるんじゃないか?」


「そうかもしれぬな。小僧、そろそろ休め。私も寝るぞ」


「はいはい。お休み先生」


「ウム」


とっくに部屋の明りは消していたし、ベッドに寝そべりながら先生と話していたので、小僧が眠りにつくには、あとは目さえ閉じれば済むことだった。

先生の部屋の方がどうかは知らないが、小僧は目を閉じ、かすかに窓から入ってくる月あかりをまぶたごしに瞳で受け止めながら眠りについた。


気が付くと、そこは真昼間の明るい場所だった。夢というのは不思議だ。

意識がはっきりとしているハズなのだが、それが夢だとは決して気づくことが出来ない。


「先生、この前の続きなのですが……」


「ん、ああ、えっとごめん。何の話だっけ?」


「もう!」


小僧の目の前にいる少女は手元のノートをバッと広げて小僧の顔の魚拓でも取ろうとしているように、自分よりかなり身長の高い彼に向かって突き付けた。


「試験の傾向はこれでいいですかって言ったんですよ先生!」


「う、うん。いいんじゃないか」


小僧が適当に生返事したのを察してか、明らかに身なりの良い少女は膨れながら続ける。


「しっかりしてくださいよ。私……私、早くここから自由になりたいんですから」


「どうしてだい?」


「通称"死神騎士団"……それになることが出来れば、どこへでも自分の脚で行けるのですよ。

この帝国中どこへでも、邪教徒を殲滅し、帝国に抗う者を征伐するのです」


「俺みたいなか?」


「そうです。私も先生やアクセル様みたいに帝国中を駆け回ってみたいんです。

貴族の娘なんて損な仕事ですわ。私はもう十二歳なんですよ。

いつ政略結婚の弾にされてもおかしくない……でも試験に合格すれば!」


「姫様はよく頑張ってるよ。イケるはずだ」


「それは先生のおかげですわ」


「うん……ちょっとは俺のおかげかもな。

姫様、一族始まって以来の才能と言われてるから必ず合格できるよ」


「ありがとうございます」


姫様は照れながら頭を下げた。ちょっといい雰囲気だったのだが、そこで、なんと二人のお腹が同時にSOSを発した。

そろそろエネルギー補給をしてくれと言っているのだ。二人は顔を見合わせ、そして口角を上げた。


「ふふ、ランチにしましょうか先生」


「ランチ?」


小僧が辺りを見回すと木陰に木製のバスケットが置いてあり、味のある深い茶色で年季が入っているように思われた。

その中には銀色の箱があり、開けてみるとサンドイッチがぎっしりと詰まっていたのだった。


「いやあご馳走になって悪いね、姫様?」


「いつもじゃないですか。本当にっもう、私がいなきゃご飯だって食べられないんですから先生は」


姫様はなまじ自分が何でも持っていて人から世話してもらえるのが当たり前なせいなのだろうか。

逆にこういうダメ男に引っかかってしまうタイプであった。

彼の口にサンドイッチを突っ込む。これはおかずサンドイッチだ。

姫様のは甘めのフルーツサンドイッチと太らないようにキュウリのサンドイッチである。


「姫様のはやっぱり絶品だなぁ。さすが、ここに就職したかいがあったぜ」


「今度は私が作ってみますね」


「えっ」


小僧はコンマ一秒の間に迷い、そして結論を出したのだった。

確かに、姫様のサンドイッチは恐らく失敗する可能性が高いと思われる。

変な冒険は、しなくてよいと言いたいところである。

だが姫様の作ったへたくそサンドイッチを旨い、旨いといって食べるのが格好いいのではないかという思いに駆られたのだ。


「いいじゃないかサンドイッチ。楽しみにしてるよ」


「はい」


話が終わってふと、小僧は周りを見渡すが、やはりこの場所には覚えがない。

姫様に対して口をついて出る言葉も自分の言葉ではなかった。

自分は少女のことを知らないし、この場所のことも全く知らない。


この場所は、あたたかな太陽が優しく照らす草原の、まるで人間の背骨のようにわずかに左右へうねりながら小高く盛り上がった丘の上の一本の大木の木陰だ。

周りが全部草原なのにここにだけ大木が生えているのは、当然人の手が入っているのだ。

高い所から見渡せば草原の中にもちょくちょく建物が建っていて、ここまでの情報から大体のことは察しが付く。


ここはどうやら"帝国"の宮殿のようである。帝国の宮殿は当然、帝都の中心地にある。

むしろ、宮殿に沿って街が形成されたというのが正しい。


その宮殿は広大な敷地面積を誇り、その中には要人はおろか、使用人たちも住めるようになっている。

そうとわかったのは、この姫様がここにいるということが何よりの証拠だからだ。

まさか姫様というのが本当の姫ではないということもあるまい。


「あっ。アクセル様ですわ。ごきげんよう」


姫様は草原の向こうから馬に乗り、数名の子供たちを伴ってこの丘の方へやってくるアクセルを発見すると手を振った。

そして彼が近づいてきて声が届く距離まで来ると、スカートのすそを指でつまんでお辞儀をするという、あのお決まりのしぐさであいさつ。

小僧はそれを寝ころびながら見つめる。


「これは皇女殿下。生徒たちが言っておりますよ」


「まあ。よからぬ噂ですか?」


「姫様はいっつもアベル先生を独り占めしてるとね」


アクセルはニヤッと皮肉そうに笑いながら言った。

小僧とアクセルは目が合い、小僧は思わず絶句する。

アクセルの顔は自分にうり二つだったからだ。


姫様が「アクセル様」と名を口にしていなかったら、向こうから馬に乗って自分がやってきたのかと勘違いしていたほどだ。


「あら……それは失敬しましたわ」


「おかげで僕が面倒みる子が増えて大変なんだけどね」


「何か用かアクセル?」


「二人だけで話せるか?」


「ああ」


と小僧は即答し、姫様にはアクセルの連れてきた子供たちの輪に入るように促した。

姫様はここは引き下がった。本音では、アクセルの申し出を断って先生には自分と二人で居てほしかったところだが。

アクセルは馬具を大きな木の太い枝につないで、馬から降りてある程度の自由を許した。


馬は草原に座り、好きなだけ草を食べ始めた。もぐもぐと前後左右にせわしなく馬の顎が動く。

そればかり見つめ、小僧は自分の顔の方へ影を落としてくるアクセルの方を見ようとはしない。

だがアクセルはお構いなしに話を切り出した。


「面倒なことになったよ。宮廷内に僕らを疑いだしているものがいる」


「俺にどうしろと?」


「もっとも、その疑惑は事実なんだけどね。目を付けられると面倒だ。

僕はそろそろ退散するよ。必要な情報は得られたし」


「そうか。俺は普通にまじめに仕事をしてただけだがお前は違うのか?」


「別に。元々潮時だと思ってたからね……お前は一人の生徒に入れ込み過ぎじゃないか?」


「姫様の事か。才能があるし俺のことを慕ってくれている。目をかけるのは当然だと思うが」


「こっちに迷惑かからなきゃ何でもいいが、いずれこんな日が来ることは分かっていただろう?

僕らは不老不死だ。さすがに十年も見た目が変わらないと疑われるね」


「もう十年になるのか……ここの仕事も意外と居心地がよかったが」


「僕は帝国の皇室を調べたかっただけだから何とも思わないが……お前が入れ込んだせいで姫様は傷つくことになるかもしれないな。

お前を慕っていたのは知ってるが、もう会えなくなってしまうぞ」


「うるせぇよ。アクセル、ここから退散するのはお前の勝手だ。

俺は……姫様が試験に合格するまでは……あとほんの少しだけでいい。

もう会えなくなってもいい。せめて最後まで見届けてあげたいと思う……それが魔法の先生である俺の責任だ」


「責任だの人生に悔いを残さないだの……信念を守り通すだの。

そんなのは短い人生しか生きられない普通の人間の考えそうなことだ。

兄弟とは言え、やっぱりお前とは合わないよアベル」


「それはこっちのセリフだアクセル。

"魔"にも人にもなりきれない俺たちだが、俺は帝国から給料をもらってるからなぁ。

帝国への義理は通させてもらう」


「魔にも人にもなりきれないか……それはお前だけのことだ。

それはそうと、報告だ。"魔女"の動きが活発になってきた」


「"魔女"の?」


「ああ。"こういう時"のために僕らがいる。違うか?」


「その件は俺が何とかしよう」


小僧はアクセルとの話を打ち切った。それから向かったのは姫様たちのいる王立魔法学校の校舎である。

宮殿の内部に建っているそれは唯一、宮殿関係者でない平民でも出入りを許されている建物だ。

アベル先生とアクセル先生はちょっとややこしい立場にあった。


詳しく話すと、アベルとアクセル兄弟は"死神騎士団"なる騎士団に所属していた。

これは皇帝直属の近衛師団の一員であり、非常にイレギュラーで特別な立ち位置にある。

と同時に学校の講師でもあるので、宮殿関係者であり学園の職員でもある。


"死神騎士団"とは、皇帝直属の近衛師団であり、その定員はわずか六名。

その仕事の内容は大きく分けて二種類。表向きの顔は、処刑人である。


この国は絶対王政が敷かれた帝国だが、別に処刑が行われる件数はそんなに多くない。

比較的善政が敷かれている。そのため六人いれば処刑の仕事は事足りる。


そして死神騎士団の裏の顔とは、魔法によって帝国を守ることである。

この世界では、言ってみれば魔法での犯罪はサイバー犯罪に近い。


どちらもその道のプロが悪意を持って犯罪を企てれば、一国を揺るがすほどの大打撃を与えられる。

そしてそれを対策する専門家、言うなればホワイトハッカーのような立ち位置が死神騎士団だ。

何しろ優秀な魔法使いというのはあまりに貴重なうえ、その能力は上澄みに限れば人智を超えているためだ。

必ずしも政界のトップがその専門技術に通じている必要はない。必要なのは対策する専門家だ。


ちなみに仕事柄、死神騎士団は何かと市民にも恐れられている。

そのため皇帝に都合の悪い者を秘密裏に始末する暗殺の仕事もしている、とのうわさもあるが、これは事実ではない。


そして目下、帝国が目をつけている"魔法を使用した犯罪者"の筆頭が先ほど話に出ていた"魔女"というわけだ。

話を戻すが、アベルはアクセルとの話を終えた後、姫様のいる学校の校舎のところへやってきたところだった。


「いやあ姫様、待たして悪かったな……ちょっとアクセルが真剣な用事で話してくるから遅くなったよ」


などと言いながら後頭部をかき、アベル先生が教室に入ってきた。

姫様は机についたまま首だけ彼の方へ向けて続ける。


「当てて見せましょうか。アクセル様になんて言われたか」


「そのアクセル様っていうのやめろ」


「みんなそう呼んでいますからね。当てて見せましょうか、何を言われたか」


「さあて、当てられるかな?」


「"魔女"討伐のため死神騎士団がついに動くかもしれない……そういう話でしょう?」


「そうだな」


アベルは適当に相槌を打ったが、その内心は憂鬱きわまりなかった。

というのもその魔女というのが何を隠そう、自分の母親だからなのだ。


「こういう時のために自分たちがいる」という風な話をさっきしていたのはこのためである。


つまり、アベルとアクセルの母親を皇帝から守るために敵である皇帝に近付き、死神騎士団にまでなってしまったということなのだ。

可能であれば皇帝を翻意させ、死神騎士団の派遣自体をやめさせること。

無理であれば最低でも、母親に手紙などを書いて逃げるように伝えないといけなかった。


「乗り気じゃないのですか?」


「姫様から離れないといけないと思うと、寂しくなるな」


普通、恋している相手にこう言われたら年頃の女の子は嬉しくなると考えられるのだが、姫様は違った。

もちろん嬉しいが、彼女は魔法が得意なだけでなく頭がよく、勇気や行動力もあるタイプだったのだ。

嬉しさを態度には出さず、唇をギュッと噛んで眉間にしわを寄せる。

何の前触れもなく突然険しい表情を見せる姫様。


「ど、どうした?」


「私は怖いです。考えただけで身がすくんでしまいます。先生がいなくなるなんて」


「そりゃあ、人生別れの一つや二つもあるだろう」


「今夜……夜半にいつもの場所に一人で来てくださいね」


「えっ」


「では」


ろくな返事もさせないまま姫様は言いたいことだけ言ってさっさと机の上の勉強道具をまとめて教室を出て行ってしまった。

恐るべき少女である。アベル先生は、今夜の夜半って一体どのくらいの時間帯に行けばいいのか聞きたかったが、聞ける雰囲気ではなさそうなのでやめておいた。

例の場所と言ったらあそこしかない。

そもそも宮殿の中に丘がある、のではなくて神聖な丘の周りに宮殿を建築している。


暖かで水も豊富なこの土地では放っておくと森になるので、丁寧に手入れされて、昔から存在する大木以外は刈り取られて草原になっているのだ。

その大木はよほどのことがない限りどれがどれだか見分けはつかないが、二人はいつも同じ木の下でピクニックをしたり魔法の練習をしたりしていたのだ。

例の場所と言われたら間違えようはない。

アベルは姫様に言われた通りに、夜半にここにいようと決めた。

そこでまだ明るいうちから木の下で木陰に寝そべり、砂時計が時を刻むような繊細な音を立てて風にざわめく背の低い草をクッション代わりに体の下に敷いて眠ったのだった。


そんな夢を見て目が覚めた小僧は、自分がとある港町の壁の薄い安宿で目が覚めたことに気が付くと安堵した。

びっしょりと汗をかいている。この街は夜になると涼しい風が吹くのだが、そんなことお構いなしだ。

網戸になっている窓からは暖かな光が硬いベッドの上にさしこみ、海からの潮風がわずかに吹き込んでいた。


「あー、変な夢だった。こういう時はあそこだな」


小僧は占いを信じるたちではないが、夢占いも知り合いの占い師がやっているのだ。

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