不可視の女王
アリスは二人の男に従い、研究所へと向かった。
研究所の回りには恐ろしい数のグールの群れがいたのに、今はどこにもグールの姿は
見当たらない・・・。
「アリスレンヌ、これも一応規則なので申し訳ありませんが・・・。
手錠の方はきつくありませんか?」
「あ・・・はい、大丈夫・・・です。」
なぜか金髪の男は、仕切りにアリスを気遣う。
アリスは二人に連行される間、抵抗出来ないように両手に手錠をかけられていた。
黒髪のユリウスという男は気を失ったキーラを抱えて、後ろからついて来ている。
たまに後ろを振り返り、キーラの状態を心配するアリスに・・・ユリウスが
ぶっきらぼうな笑みを浮かべて話しかけて来た。
「心配すんなって、気を失ってるだけだって言ったろ。
お前が目を離した隙に、こいつをその辺に捨てたりするなんて思ってんのか?
そんなことはしないから、安心しな。」
親しげに話すユリウスに対し、諫めるような口調で注意を促す。
「ユリウス、何度も言うが・・・彼女に失礼なことは・・・っ!」
「わーかってるってピート、丁重に扱えってんだろ。」
二人のそんな会話を聞きながら、アリスはこの二人がそれ程悪い人物のようには
思えなかった。
しかし実際は・・・、研究都市の中にはマンションで襲ってきた男と同様のグールが
大勢いた。
アリスがいるにも関わらず彼等はアリス達を襲い、そして今目の前にいる彼等も
抵抗出来ないようにキーラの気を失わせ・・・こうして研究所へと連行しようと
している。
そこにどういった意図があるのかわからない以上、安易に彼等が安全だと・・・
そう決めつけるわけにもいかないが・・・話せばわかってもらえるような、そんな
気さえしていたのだ。
(今頃カイン君はどうしているんでしょうか・・・。
もう研究所の中に入って、お父さんの研究資料を探しているのでしょうか。)
不安が消えないまま・・・、アリスは研究所の中へと通される。
入口には数人の警備員のような人物が警戒していて、金髪の青年・・・ピートが
身分証明のようなものを警備員に見せると・・・そのまま通行許可が出た。
「ユリウス、ライカンの方は手術室へ運ぶように指示が出ている。
そこへ連れて行って、厳重に拘束しておくように・・・とのことだ。」
ピートの指示を聞いて、アリスは慌てて声を荒らげた。
そんなアリスの反応に警備員がすかさず警戒して、腰にあった警棒を手に取り構える。
「手術室って・・・どういうことですかっ!?
キーラ君にヒドイことをしないでください、あたし・・・言うことをちゃんと
聞きますからっ!!」
ピートが警備員を制止すると、静かな・・・落ち着いた表情のまま説明した。
「落ち着いてください、アリスレンヌ。
何も彼の命を危険にさらすような真似はしません、私が約束します。
少しだけ・・・、彼の細胞を接種するだけですから・・・。」
「細胞・・・っ!?
それならあたしのを使えばいいじゃないですか、あなた達・・・あたしの細胞が
欲しくてこんなことをしているんでしょう!?
キーラ君は何も関係ありません、・・・だからっ!!」
アリスの言葉に、二人は顔を見合わせ・・・少しだけ驚いた表情を見せた。
それからユリウスが静かな口調で、優しくなだめようとする。
「お前はイーシャと話があったんじゃないのか・・・?
こいつに手荒な真似はしないってピートが約束したんだ、こいつは嘘をつかねぇ。
それはオレが保証するから、安心していいぜ。
だからお前は・・・、早くイーシャに会って来い。」
ユリウスもピートも、とても真っ直ぐな瞳でアリスに訴えかける。
その目に・・・言葉に嘘はないと感じたアリスは、抵抗をやめ・・・大人しくした。
心配そうに去っていくユリウスと、抱えられているキーラを見つめながら・・・。
アリスはピートに案内されるままに・・・、エレベーターに乗った。
<20階、オペフロア>
「これでよし・・・っと。」
ユリウスは手術室の真ん中にある医療用のベッドにキーラを横たわらせると、
頑丈なベルトでしっかりと拘束した。
あとは細胞を摂取する担当医が引き継ぐのか、ユリウスはそのまま手術室を後にする。
ドアを閉め・・・閑散とした周囲に目を配りながら、小さくため息を漏らした。
「さて・・・と、オレの役目はこれにて終了ってな。
ピートの方はどうしてっかな?
へっ・・・イーシャのやつ、癇癪起こしてなきゃいいけど。」
独り言を呟きながら、ユリウスはわざと・・・手術室に鍵をかけずにその場を離れた。
<50階、研究室フロア>
エレベーターから降りて、アリスはピートについて行き・・・とある研究室の
前に立つ。
ドアには『イーシャ・バース』と、そう書かれたネームプレートが掛かっていた。
アリスは研究所の中に入ったことがない、無論・・・父や姉の研究室にも。
姉の研究室を前に緊張するアリスは、そこで何を聞かされるのか・・・。
何が起きるのか・・・、不安で押し潰されそうになっている。
(これまで・・・、信じられない出来事がたくさん起きました。
グールと呼ばれるたくさんの化け物に襲われて、怪しい人達に連行されて・・・。
この研究所で一体何が行なわれ、何が研究されているのか・・・。
イーシャお姉ちゃん達の目的が何なのか・・・。
あたしが、・・・何者なのか。
正直・・・とても怖い。
このドアが開かれたら・・・、もう二度と後戻り出来ないような・・・。
お姉ちゃん達と過ごした幸せな日々が、永遠に失われるような・・・。
でも・・・、きっとあたしは知らなくちゃいけない・・・。
自分のこと・・・、お姉ちゃん達のこと。
それを知った上であたしは、決めなくちゃいけないんです。)
そう心の中で言い聞かせ、アリスは決意を新たに・・・イーシャへと向き合った。
ドアが開かれ、中に通される。
イーシャの研究室に入ると、そこには壁一面に大きな本棚がずらりと並べられていて
たくさんの本がしまわれていた・・・。
医学書、歴史書、蔵書・・・ありとあらゆる分野の本がびっしりとしまってあり、
入り切らない本達が軒を連ねるように重ねられ、殆ど足の踏み場もない位だった。
(イーシャお姉ちゃん・・・、自分の部屋とあんまり変わらないですね。)
アリスが2年間暮らしていた家の、イーシャの部屋は散乱状態であった。
若い娘のようにお洒落な服やブランドもので部屋が散らかっているのではなく、
その殆どがこの研究書のように難しい本が大量に積まれていたのだ。
黒板には難しい数式や公式などが走り書きで書かれ、何か閃く度にその辺の資料の
裏に殴り書きしたメモがあちこちに散らばっている。
まさにイーシャは、『片付けられない女』であった。
ピートも多少苦労しながら本を踏まないように中へ入り、研究室の隣へと移動する。
そこは先程の部屋とは違い、かろうじて足の踏み場があった。
デスクの横に真っ白い白衣を来た女性が立っている。
赤みがかった茶髪・・・、今はコンタクトにしているのか・・・いつもかけている
メガネは外していた。
鋭い眼差しでアリスを確認するが・・・、その顔に笑顔はない。
「イーシャお姉ちゃん・・・、あたし・・・っ!」
そうアリスが言いかけるが、言葉を遮るようにイーシャが言い放つ。
「知ったのね、・・・自分がただの実験動物だったってことに。」
「・・・・・・っっ!!」
ズキンと・・・、胸が痛んだ。
心臓を鷲掴みされたように、アリスは・・・一瞬呼吸が出来なくなる程のショックを
受ける。
しかしそんなアリスの状態などお構いなしと言う風に、イーシャは微かに嘲笑を
浮かべながら・・・続けた。
「大体は観測班から聞いてるわ、アリス・・・。
どうやら例の二人から・・・、色々と事情を聞いたみたいね。
どうせあんたのことだから、二人の言葉を疑ってここまで来たようだけど・・・残念。
彼等の言ってることは、正真正銘・・・全て真実よ。
もう少しあんたを利用することも出来たんだけど・・・、でもいいわ。
こうして、あたしの本当の目的であるノスフェラトゥが研究所の近くにいるんだもの。
あんたも聞いてるんでしょ?
カインと呼ばれているあの男がノスフェラトゥ・・・、つまり吸血鬼だと
いうことを・・・。
吸血鬼は『覚醒者』の中でも、最強と謳われる種族。
もっとも・・・『不可視の女王』自体が、元々吸血鬼の一種なんだけどね。
不老長寿で不死身に近い再生能力を有し・・・、力ある者ならば眷族を増やすことも
可能・・・。
最も『不可視の女王』に近い能力を有してると言えるわ・・・!
アリス・・・、あんたの遺伝子ならとっくに様々な方法で接種済みなのよ。
だからもう家族ごっこをする必要はどこにもないわけ、・・・わかる?
あとは他の実験動物と同様に、地下の檻の中で暮らしてもらうだけ・・・。
他のデータを取るにしても・・・もうそれで十分なのよ、あんたは。」
冷たい眼差し・・・。
アリスのことをただの『物』としか捉えていない、そんな氷のような瞳で・・・
イーシャは言い放った。
耳を疑った・・・。
今見ていること、聞いていること、その全てが悪い夢なんだと・・・。
そう信じたかった。
優しかったイーシャ・・・。
ずっと一緒にいると、そう約束していた・・・。
例え何があっても心はいつも側にあると、そう話していた・・・。
それは全て・・・、アリスを都合の良い実験動物として利用する為・・・。
利用する為に仕組まれていたことだった。
全部が嘘・・・。
全てが偽り・・・。
幸せに過ごしていた日々、その全てがまやかしだったのだ・・・。
ショックで口が利けないアリスは、そのまま卒倒しかけたところをピートに
支えられ・・・かろうじて立っていた。
しかし力が入らない。
微かに震えながら、アリスはもう一度・・・イーシャに手を伸ばす。
「お姉ちゃん・・・、嘘ですよね?
本当はそんな風に思ってなんか、いないですよね・・・!?
あたしは・・・っ!」
「うるさいっ!!
これだからあんたといるとイライラするってのよ、少しは頭使ったら!?」
イーシャは甲高い声を張り上げながら、アリスを睨みつけ・・・怒りを露わにした。
「あんたのそういうところがホント・・・、癇に障るのよっ!
その遺伝子がどれだけ危険か、どれだけ貴重かっ!!
なのにあんたはそんなことお構いなしで、悠々と世界を渡り歩いて・・・っ!
そうやって邪悪な遺伝子を撒布し続けて・・・っ!
おかげでこの世は、化け物がはびこる世界になってしまった!!
都市には『覚醒者』が溢れ・・・、『黒の黙示録』による人間狩りが
人々の安全を脅かす・・・っ!
その種を招いた張本人が・・・、あんた一人だけが呑気な顔して穏やかに暮らして
いいと思ってんの!?
そんなのあたしが許さないっ!
全ての化け物の始祖であるあんたを・・・、とことんまで利用してやるわっ!!
その為ならあたしは何だってするわよ、人体実験でも動物実験でも・・・。
あんたを生きたまま解剖することだって出来るんだからね・・・っ!
なんたってあんたは化け物の母・・・、『不可視の女王』なんだから。」
<再び20階、オペフロア>
「う・・・っ。」
手術室のベッドに拘束されたキーラがようやく目を覚ます。
ひどい頭痛で頭を押さえようとするが、拘束用のベルトで思うように動けない。
「う・・・くそっ、なんだこりゃ・・・っ!」
見ると頭から足首まで・・・、いくつものベルトでがっちりと締め付けられている
状態の自分に、キーラは視線だけで回りの状況を把握しようとする。
薬品などが並べられている棚、すぐ横には医療用の器具、その他諸々の機材。
「ちっ・・・、そういやオレ・・・奴等に捕まっちまったんだな。
しくったぜ・・・、あとでカインに何言われるかわかったもんじゃねぇ!」
キーラは冷静さを取り戻すと、もう一度拘束ベルトを力ずくでちぎろうと試みた。
しかし相当頑丈なベルトなのか・・・キーラの力ですらびくともしない。
「ちくしょ~・・・どうなってんだよ、このベルトはっ!?
このオレの力でもちぎれないって、・・・どういう素材だっ!!」
体力の浪費を避ける為、キーラはベルトを無理矢理ちぎるのは一旦諦めた。
そしてもう一度、冷静になって状況を整理する。
(やっぱさすがに『白の騎士団』の本拠地ではあるな・・・、一筋縄じゃいかねぇぜ。
大体何から何までどうなってやがんだ!?
そもそもこの町に入った時から妙だった・・・。
オレの嗅覚は数百キロ先まで判別出来る、そこらの犬とはワケが違うんだ。
なのに突然現れたグールに気付かなかった・・・、それどころかあの二人!
あいつらの接近に気付かなかったのも腑に落ちねぇ・・・っ!
あの時のオレに油断はなかった、なのに背中を取られた。
・・・全く臭いがしないなんてそんなの有り得ねぇ!)
がちゃがちゃ・・・。
物音がした。
思考を止め、キーラは物音がした方へと視線を走らせる。
そこには明らかにここの学者でも、研究員でもない格好をした男が・・・ごそごそと
棚の引き出しを開けては閉めたりと・・・、思い切り物色をしていた。
キーラの顔が引きつる。
ヒッピーの格好をした男は、思い切りベッドに拘束されているキーラのことを
無視して何かを探している様子だった。
「う~ん・・・、やっぱここじゃないのかしら?
こりゃ出直した方がいいわね。」
「おい、おっさん。」
キーラが声をかける。
しかしヒッピー風の男は、一瞬手を止めるも・・・振り向くことなく無視した。
「いやいやいやいや・・・?
ここじゃないとしたら、やっぱ地下なのかしらね・・・!?」
適当にゴムでしばった黒髪が揺れる。
決して後ろを振り向くことなく、やり過ごそうとするその態度にキーラは
明らかな不審さを感じた。
この男の見た目や態度もそうだが、それ以前にキーラは別のことでも不審さを
感じている。
この男の接近にすら、気付かなかった。
これだけ近くにいるにも関わらず、この男の『臭い』を微かにしか嗅ぎ取る
ことが出来ないことに・・・キーラは疑問を抱いていた。
彼が何者であれ、もしここでうまく事を運ぶことが出来ればそれらの疑問が
解決するかもしれない。
それはイコール、『白の騎士団』に対抗する手掛かりにもなるからだ。
「そこの怪しいオネェ言葉のおっさんに言ってんだよ、聞こえてんだろうが。」
だがしかし言葉遣いだけは相変わらずのようで、とても相手を引き込もうとする
態度には程遠かった。
何度も話しかけられ、さすがにこれ以上やり過ごすことは不可能だと判断したのか
・・・ヒッピー男は肩を竦めながら、諦めたように振り返る。
真っ黒とまではいかないが日焼けした肌、面倒臭そうな目、うさんくさい口元。
アゴには無精ひげを生やし、適当に伸びた黒髪は適当にゴムでまとめている。
30代半ばの・・・どこからどう見ても、明らかにチャラい男だった。
「あれ・・・? もしかしておたく、言葉が通じる人間だったりしちゃう!?」
「・・・どこからどう見ても、人間に見えないか!?」
「あ~、いやね?
オレ様てっきりここの実験動物か何かだと思ってさ、そんでここにお邪魔
したわけなのよ。
言葉が通じなけりゃ、オレ様が何をしてるかなんて・・・チクれないっしょ!?」
ふらふらと落ち着きなく左右に揺れながら、その男が説明する。
「・・・つーことは、おっさんはここに侵入した不審人物ってわけだな。」
キーラが呆れた顔でズバリ言い当てた。
ヒッピー男はオーバーリアクションを取りながら、慌てて否定する。
「ち・・・っ、違うわようっ!!
オレ様ちょっと道に迷っただけでね・・・!?」
「道に迷ったら他人様の戸棚の引き出しとか開けちゃうのか・・・?」
「ぐ・・・っ、最近の若いのって・・・結構鋭いんだからヤだわぁ~。」
がっくりと肩を落としながら、男は両手で顔を覆い・・・泣いたフリをする。
しかしキーラにとってこれ以上の幸運はなかった。
「まぁいいや、おっさんが何者なのかはこの際別として・・・。
ワリーけどこのベルト外してくんねぇか!?
そしたらおっさんが不法侵入者だってことは黙っててやるよ。」
「いや、それはちょっと・・・。
オレ様別に悪いことする為にここに来たわけじゃないのよ!?」
「じゃあ何しにここに来たんだよ、こんな化け物共がはびこってる魔窟なんかに。」
「う・・・、それはその・・・守秘義務ってやつで。」
なかなか首を縦に振らない男に、キーラはだんだんとイライラしてきた。
その時、キーラは鼻をひくひくと動かし・・・誰かがここへ近付いて来る臭いを
嗅ぎ取る。
その気配はヒッピー男も気付いたのか、それまでヘラヘラしていた表情から一変。
突然真剣な面差しを一瞬見せたかと思うと、またすぐ面倒臭そうな顔に戻っていた。
「お兄さん、ここはひとまず助けてあげるから・・・ちゃんと守ってよね!?」
「え・・・、あれっ!?」
いつの間にかキーラを拘束していたベルトが全て外されていた。
起き上がると素早くドアの横に身を潜め、息を殺す。
足音がだんだんと近付いてくるが・・・そのまま、この手術室を通り過ぎて行った。
ここに用事があった者ではなかったことに安堵すると、キーラは男の方に向き直る。
「サンキュな、オレはキーラだ・・・おっさんは?」
一瞬、間があった。
「じゃあ、・・・オレ様のことはヴァンで。」
「じゃあ・・・って、偽名かよ。」
「いやぁ~ねぇ・・・、源氏名ってゆってくれる!?」
「・・・キモイぞ、おっさん。
まぁいいや・・・今はそれで、今後もあんたと慣れ合う理由はねぇし・・・。」
キーラの冷たい返しにヴァンはショックを受けたような顔を作ったが、無視する。
外の気配がなくなると、早速ここを脱出し・・・アリスを取り返す算段を練った。
「あんたがここで何をしてたのかは聞かねぇけど、ここから出るまでは手を組もうぜ。
それとも何か、他に目的があったりすんのか?」
「いんや? とりあえずオレ様もここから無事に出るって方向でいいわよ?
そっちこそ他に目的があるんでない!?」
キーラは言葉に詰まるが、味方は多いに越したことがないと判断して・・・
とりあえずある程度説明することにした。
「実はオレの仲間が一人、捕まったんだ。
そいつを取り戻さねぇことには、ここから出るわけにもいかねぇ・・・。」
「あ~、それは大変ねお気の毒様。
それじゃ、オレ様はこれで・・・。」
がしっとヴァンの襟元を掴んで引き戻す。
ひくひくと短気を起こしているキーラは、懸命に怒りを押し殺しながら問いただした。
「なにいきなり一人で逃げようとしてんだよ、別にあんたに手伝ってほしいなんて
一言も言ってねぇだろうが・・・っ!」
「あ~~、でもなんかそんな空気だったわよねぇ・・・!?
オレ様って面倒事とかにあんまり首突っ込みたくないのよ。
この通り平和主義者なもんで。」
「よく言うぜ、こんな場所に潜入してる辺りすでに平和とか穏便とかに無縁じゃねぇか。
とにかく・・・あんたがいても足手まといなだけだからな、マジでここを出る所までの
付き合いでいいって。」
「そお!? その方がオレ様も助かるわ。」
何とか和解し、二人は手術室を抜け出した。
目指すはアリス奪還・・・、キーラはなりゆきで正体不明のヴァンと共に脱出を試みる。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
あくまで「逆ハーレムもの」として書いてる小説
なんですが、序盤である現在はちょっとばかり
シリアス面が目立ってしまってます。
話の内容によって長くなったり、すごく短かったり
しますがどうぞ温かい目で読んであげてください。
アリスが現在登場しているキャラで、誰とイイ感じ
になるか・・・予想、もしくは希望もしてみてくれ
たら嬉しいです。
もしかしたらそれをヒントに、リクエストに応えよう
と思う・・・かもしれません。




