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始まりのアリスと銀の弾丸  作者: 遠堂 沙弥
日常の崩壊
20/24

別行動~カイン、キーラ&フラン~

 アリスとヴァンが出掛けている間、カインとキーラは少しの間ソファに座ってくつろぐことにした。


「そういやオレ等、ずっと寝てねぇな。さすがに夜通し忙しかったから疲れたぜ」


「お前はまだ体力バカだからそれ程疲労は溜まっていないだろ、オレは完全に夜行性だから朝はキツ過ぎる」


 どことなくキーラに対して侮蔑を込めた口調でカインが言い放つと、キーラはカインのことを睨みつけはするが反論はしなかった。苦虫を噛み潰したような表情になりながら、カインの横で寝ているフランをじっと見つめる。


「そいつ・・・、どうなっちまうのかな」


 何となくキーラが訊ねると、カインは眠そうな表情でちらりとフランの方に視線をやりながら小さく答える。


「アリスレンヌの洗礼を受けたんだ、もう普通の人間ではいられないさ。オレ達と同じ―――――――年を取ることもなく永遠に時が止まったままで、『黒の黙示録』から逃げ回る日々を送るだけさ」


 カインの言葉にキーラは眉根を寄せながら拳に力を込める、何かを思い詰めたように黙って床を見つめるキーラを見据えながらカインは、少し間を置いてから口を開いた。


「―――――――まだ憎いのか? 彼女のことが」


「―――――――っ!」


 キーラの心の内を探るには、このたった一言で十分だった。そしてその効果があったことはキーラの表情を見れば一目瞭然である。憎しみのこもった瞳と―――――――反面どこか迷いのある表情にカインは鼻で笑う。


「何がおかしいんだよ」


「別に、ただ・・・昔シャルルに言われたことが真実だったってのがわかって、お互い戸惑っているだけさ。そうだろ?」


 カインに見透かされたような言われ方をして面白くないキーラはそっぽを向きながら黙秘を決め込む、ここでいつものようにムキになって反論しない所を見たカインは、今のがキーラにとって図星だったことを察した。


「とにかく―――――――ここまで来た以上オレ達はシャルルの待つ本部へ行かざるを得ない、もう諦めろ。お前がどんなに『異端者アビシオン』達を避けたって・・・オレ達は結局同族でしかないんだ、避けようがない。どんなに自分を拒絶しようともな。それならいっそお互いを利用し合う方が得ってものだ、『白の騎士団』も『黒の黙示録』も・・・『紅の兄弟』だって日々進化し続けてる。身体能力の方じゃなく設備や技術的な面でだ。フラフラと根なし草をし続けて来たオレ達じゃ、そういった科学的解釈で進化することは不可能に近い・・・そういうのは専門じゃないし。だったら色んな能力を持つ組織で情報を得る方が、よっぽどオレ達の探し求めているモノが見つかりやすいだろう」


「んなのはわかってる、結局オレ達だけである程度世界を回ってみても何の手がかりもなかったんだ。挙げ句『白の騎士団』にアリスを奪われちまった。―――――――わかってんだよ、でも・・・やっぱイヤなんだ! オレはこんな化け物になんか・・・っ!」


 キーラが感極まって声を荒らげた時、今まで疲労と貧血で寝入っていたフランがようやく目を覚ました。もぞもぞと体を動かして瞳を開けたので今度はカインがキーラを睨みつける。

フランは回りをきょろきょろと見渡して、そこが自分の知らない場所だと気付くのに相当な時間を要した。まだ寝ぼけている様子で虚ろな眼差しのままボーッとしているので、キーラが声をかけてみる。


「よぉフラン、オレのこと覚えてっか? 色々あってわけわかんねぇだろうが、とりあえず腹減ってねぇか」


 そう言ってキーラは先程ヴァンのキッチンで見つけた缶詰を開けて一応匂いを嗅いでみて、安全だと確認してからフランに缶詰とスプーンを差し出そうとする。

缶詰を開けた瞬間良い香りが周囲に広がって、フランは思わずくんくんと鼻を動かしながらキーラの方へ引き寄せられる。

そんなフランの様子を見ながら「単純過ぎる」とカインが頭の中で呟いた時だった、フランは突然何かを思い出したかのように缶詰を持って差し出しているキーラの方ではなく全然反対方向へとうろつき始めた。


「何だ、一体何がしたいんだよこいつは・・・」


 子供の面倒を見たことがないカインは怪訝な表情を浮かべながら少し距離を取ってフランの行動を観察する、それは勿論キーラも同じで首を傾げながら仕切りに缶詰で気を引こうとしてみた。しかしフランはお腹を鳴らしながらも、泣き顔になって大声を出す。


「アリス! アリス、どこ!?」


 フランの目的が分かって二人とも肩を竦めた、苦笑しながらキーラがフランを捉まえて状況を教えてやろうとした。


「落ち着けよフラン、アリスなら今出掛けてるけど・・・すぐに帰って来っから! とりあえずメシでも食えって、ホラ」


 フランを宥めようと腕を掴んで無理矢理缶詰を持たせようとした瞬間、フランは缶詰を握り潰して中身をぶちまけてしまう。驚いたキーラがフランの顔を見るとアリスがいない不安からか、フランの表情が『あの時』と同じように恐ろしい形相になって牙を剥き出しにし・・・こめかみに血管を浮き上がらせて、全身の筋肉が激しく脈動しながら不気味な音を立てている。


「お・・・おい、ちょっと待てよ! まさかまた巨大化する気かお前!?」


「―――――――巨大化って何の話だ、キーラ!?」


 フランの異形の姿を見たことがないカインはフランの異常に驚きながら、素早くソファから飛びのいた。


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