別行動~アリス&ヴァン~
ヴァンのエスコートの元、結局アリスは二人きりで買い物へ出かけることとなった。
不安がないといえば・・・やはり嘘になるかもしれない、静かで平和だった研究都市での生活から外の世界へと飛び出し・・・そこから色々な出来事が起こった。
そして見知ったばかりの男性と二人で買い物をすることに、緊張気味に歩くアリスにヴァンは無責任な笑みを浮かべながら和ませようとして来る。
「まぁまぁそんなに警戒しなくってもホント、変なこととかしないから安心してよ!」
「いえっ! そういうことじゃないんです、ヴァンさんには色々と助けてもらいましたから警戒してるとか疑ってるとか・・・。
そんなことは・・・。」
慌てるように否定するアリスに、ヴァンは静かにはにかみながらキーホルダーを弄ぶ。
「そんじゃ何? 何がアリスちゃんを不安にさせるわけ?」
その言葉にアリスは再び沈んだ顔色になると、カインやキーラ達が残っている事務所を振り返りながら黙りこむ。
「―――――――研究所で起きたこと、かしら?
信じていた者に裏切られ・・・更には自分の命が狙われている、かもしれない。
確かにそんなことが立て続けに起こっちゃ不安にならない方が嘘よね、でもね・・・落ち込んでたらダメよ?
せっかくの可愛い顔が台無し、暗~~い顔してちゃイヤなことばかり呼んじゃうもんだから・・・辛くっても笑顔でいた方が
気持ちも少しは晴れるってもんよ。
酷なこと言ってるかもしれないけどさ、世の中って案外そんなモンなのよ。
笑顔でいればきっといいことが起きる!
そしたらその笑顔でもっと回りの人達を笑顔にすることが出来るかもしれないじゃない、その方が楽しいわよきっと。
深く考え込んだって、悩んでたって、アリスちゃんを待ち受ける真実が変わるわけじゃない。
アリスちゃんにはカイン君もキーラ君もフラン君も、オレ様やシャルルだっているんだから・・・一人じゃないんだから。
―――――――一人でいる方がよっぽどつらいんだから、そう考えれば自分は幸せなんだって・・・そう思えて来ない?」
にっこりと白い歯を見せて笑うヴァンに、アリスは少しだけ微笑んだ。
「そう、ですよね。
あたしは一人じゃないです、みんな一緒にいてくれるんですよね?」
「そうそう、その笑顔よ!
少しは元気出た?」
「・・・もしかしてあたしのこと、慰めようとしてくれたんですか?」
真っ直ぐと見つめるアリスの無垢な眼差しに、ヴァンはたじろぎながら慌てて否定した。
「ま・・・っ、まさかぁ!
おっさんそこまで気ぃ使いじゃないわよ、何言ってんのかしらこの娘ってば!
オレ様は可愛いアリスちゃんの笑顔を見たいが為に歯の浮くセリフを並べただけなんだってば、・・・本当よっ!?
ほら、わかったら早くエレガントかつデリシャスな洋服を買いに行きましょ!」
「―――――――デリシャスは意味が違うと思うんですけど。」
苦笑いを浮かべながらヴァンについて行くアリス、バツの悪そうな顔になりながらヴァンは頭をぼりぼりと掻いてフィラデルフィアで最も高級なお店が立ち並ぶショッピングモール街へと案内した。
(―――――――そう、孤独ってのは本当につらいもんなのよ。
アリスちゃんにはあの青年達がいるけど・・・、バースの娘はそうもいかない・・・か。)
その後ブランド品が並ぶ高級ブティックへと足を踏み入れたアリスは、ヴァンや店員の手によって散々着せ替え人形扱いされながらもようやく普段着と正装を購入した、その所要時間はおよそ3時間―――――――。
カイン、キーラ、フラン用の普段着と正装はヴァンの独断と偏見で適当に見繕い、およそ30分程で終えた。
明るく気さくでよく喋るヴァン、彼のラフな物腰にアリスはようやくヴァンと打ち解けることが出来たようである。
女性の扱いに慣れているのか、いい加減に見えるが小さな気配りなどからアリスは完全にヴァンに対する警戒心をなくしてその後も買い物を続けた。
恐らく疲れて空腹に陥ってるであろうカイン達の為に、アリスとヴァンはジャンクフードの店に入って大量に食べ物をテイクアウトした。
思っていたより荷物が多くなったので帰りはタクシーに乗って、カイン達が待つヴァンの事務所へと急いだ。




