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始まりのアリスと銀の弾丸  作者: 遠堂 沙弥
日常の崩壊
12/24

我が子

 その時の気分やノリもあると思いますが、この回から比較的短めに投稿していこうと思います。

長いと「書く」のも「読み返す」のも時間がかかり、更新スピードが大幅に遅くなってしまいがちな私。

短いからイイという意味ではありませんが、せめて読者様に忘れられない程度の間隔を保ちつつ更新していこうと思った次第であります。


 後ろを振り向かず出口へと向かって無理矢理アリスを連れ出そうとしていたキーラであったが、突然その足が止まった。

フランを見捨てて逃げることが出来ないと言う彼女の言葉に躊躇ったわけではない、そんな迷いはとっくに振り払っていた。

急に感じた恐ろしい気配にキーラの額に冷や汗がしたたる、息を飲み・・・すぐ近くで感じる『確かな』恐怖に足がすくんでいるのだ。

まるで自分の首すじに巨大な大鎌を突き付けられているような・・・、死神に自分の命を握られているような、そんな恐怖感である。


しかしキーラは知っている、この気配の正体を。


 ゆっくりと後ろを振り向くキーラ。

今自分が手首を握っている人物を、アリスの方へと視線を移して目を瞠った。

そこには怯えも、恐怖も、焦燥感も何もない、無感情なアリスが立っている。

瞳は真っ直ぐとフランの方へと向けられて、ただ黙ってじっと見つめている。


「―――――――――アリ、ス!?」


 念の為キーラは力の限りアリスの手首を引っ張った、しかしそれまでの華奢だった彼女とはまるで別人のようにキーラがいくら引っ張ってもびくともしなかった。

まるで巨大な岩にロープをくくりつけて引っ張っているような、そんな感覚である。

一瞬にして回りの空気が変わった、アリスの異変に気付いたのはキーラだけではなくイーシャやユリウス達も気付いてるようだ。

キーラ達に対して攻撃を仕掛けて来るでもなく、まるで恐れるように距離を取り始めて・・・アリスを見逃すまいと目を凝らしている様子であった。

そんな中イーシャがぽつりと・・・、畏怖を込めて呟く。


「・・・アリス、レンヌ。

 全ての異端者アビシオンの母である・・・、不可視の―――――――女王っ!?」


 イーシャの言葉に反応するかのように、ユリウスもピートも反射的に後退した。

そしてキーラも無意識に掴んでいた手首を離して、数歩後ずさる。

アリスはキーラに構うことなくフランの元へと歩んで行き、それから18号と呼ばれる怪物の方へと視線を移す。


「―――――――愛しい我が子、お前をその苦しみから永遠に解放してあげる。」


 アリスの口調は静かだがどこか威厳がこもっており、18号に告げるや否や足元に落ちていた瓦礫を拾い上げると尖った部分で自分の手の平を傷付けた。

ぽたりと血が流れたと同時に、次の瞬間―――――――――アリスは素早い身のこなしで18号の懐に入り込むとそのまま傷付けた右手で腹を突き刺す!

突然の激痛に18号は身をよじりながらフランから離れて行き、それから懐にいるアリスの方へと視線を走らせた。

自分の腹を傷付ける『敵』だと認識し、アリスに向かって抵抗の意を示そうと右腕を振り上げるも・・・その腕は宙で止まる。

ゆっくりとまるで硬直したかのように18号の動きが鈍くなり、短く呻きながら振り上げた腕を徐々に下ろしていった。

ずぶりと18号の腹の奥深くまで、突き刺したアリスの腕が肘の辺りまで入る位に深く押し込めて・・・アリスは憂いに満ちた表情を浮かべながら、小さく囁くように・・・慈しむように優しく声をかける。


「大丈夫、私の血はお前を苦しみから解放してくれるだろう・・・。

 だから安心してお逝きなさい、愛する我が子―――――――我が同胞よ。」


 もう片方の手で18号を優しく撫でながら、アリスは全身緑色の醜い怪物に向かって死の宣告をした。

嗚咽しながら両目から涙を流している18号の体はやがて緑色の肌から灰へと変貌して行き、膝をついた衝撃によって全身が灰の塊となった肉体は土煙を上げるように周囲に飛び散ってしまった。

その様子を一部始終見逃さなかったキーラ達は言葉を失っている、誰一人として動けず・・・まるで全身を石にされたかのようだ。


 続いてアリスは全身を血だらけにしているフランの方へ向かい合うと、状態や様子を観察するようにじっと見据えている。

フランは息を荒らげ、今にも失血死しそうな状態にアリスは両手を差し出してフランを招く仕草をした。

その仕草がどういった意味を持っているのか理解出来ていないフランであったが、激痛と過度な貧血によって足元がふらついて膝を床についた状態となり、たまたまアリスの意思に応えた形でアリスとフランは同じ目線の位置になる。

アリスはゆっくりとフランの大きな顔をさすり、それから首筋へと噛みついた。

短く呻きながらもまるで抵抗の意思を見せることなくフランはアリスに抱き締められている状態で、奇妙な快楽を味わった。

全身の力が抜けて行くように、そして首筋に伝わるアリスの唇の感触と突き刺さる牙のわずかな痛み。

アリスがフランの首筋に噛みついて血をすすっていたのは数秒程で、ゆっくりと顔を離したと同時にフランの体は再び縮小していくように縮んで行って―――――――――元の小柄な少年の姿へと戻っていた。


しかし、これまでと全く異なる部分がある。


 フランの体は全く違う種の皮膚を縫い合わせ、適合すらせずに縫い目部分から肉が見えていたり膿んでいたりと酷い状態であった。

だが今は縫いつけられた皮膚の色や種類は異なったままだが接合部分はわずかに適合しており、張り裂けた皮膚と皮膚の間は驚く程の早さで治癒されていっている。 痛々しい状態だった全身は拒絶反応すらなく縫い目部分こそ残ってはいるものの、比較的綺麗なものだった。

しかし失った血液だけは戻らないせいか、フランはそのまま意識を失ってしまう。

倒れるフランを抱えるように支えてアリスは新しく『我が子』となったフランの頭を愛しそうに撫でてやった。


 



 短か過ぎて「あっけない感」が否めません(笑)

突然のスタイル変化に一番迷惑をかけてしまうのは読者様、本当に申し訳ありませんです。

長い文章の方が好きな方、短い文章が好きな方、色々いらっしゃると思いますが、どうぞ今後はこういった短め投稿というスタイルでご了承願います。

(恐らく同時期連載中「猫又と色情狂」の影響かもしれないです・・・)


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