アルケミスト・アダマシア
戦闘が終わる
その場には、二人以外には屍しかなかった
変身が解けて、元の姿に戻っていく感覚がした
手を見ると、ちゃんと人の手だ
ガラスに映る自分もいつもの自分だ
なんか骨格が矯正されて不細工顔じゃなくって美形になってるような・・・
だけどそこで俺は気づいた・・・・・その服には赤い人間の血がべっとり染みついていた
「これは・・・俺が」
俺は改めて周りの屍を見る
自分でも信じられない気分だった
いきなり怪物に変身して、訳の分からないまま戦って
全員俺が殺した
唖然としている俺に少女が話しかける
「君、自分のしたことが分かってる?」
「もうじきここに政府の人間が証拠隠滅に来る、機密を知った君は恐らく捕まるか消されるだろう」
「・・・なんだって?」
証拠隠滅?政府の人間?消される?
よくわからないが、俺は今すごくやばいことに首を突っ込んだのかもしれない
「ついてきて、君に助けられたお礼に君を助けたい」
「私は鮫島竜子、君の名前は?」
俺が助けた、俺を助けようとしてくれるパーカー少女
彼女の名前は鮫島竜子
良い名前だと思った
礼儀正しい彼女を信用してもいいと思った
「俺は生間生・・・」
「良い名前ね」
俺も名前を名乗った
「こっちよ」
鮫島竜子は体の向きを変えて歩きこちらを誘導する
「私は悪の組織「アダマシア」の戦闘員よ」
彼女は悪の組織の一員だと名乗った
俺は彼女を信じることにした
その時だった
目の前に現れたのは
「生もとうとう巻き込まれてしまったか・・・一足遅かったな」
俺の父生間真、親父だった
「親父・・・!?」
「あなたは・・・昨日私達の組織と契約したブラックコンドルさん・・・・どうしてここに?」
隣の鮫島竜子も驚愕していた、理由はよく分からないが
知り合いなのか?
「ああ、怪人化装置のサンプルの無事を確認しにな・・・」
「いったいどういうことだよ・・・」
怪人化薬装置てなんだよ?サンプル?
急展開だな本当に、何がどうなってるんだ
その数時間後
親父が指定した倉庫に俺達は来ていた
周りを見ると、数十人の銃や剣や杖で武装した集団がいた
そこへ、親父に携帯で呼ばれ電車と徒歩で駆け付けてきた
生間愛、姉ちゃんが来ていた
「愛も来たか・・・」
「お父さん、いきなりこんなとこに呼びだして・・・・生までどうしてこんなとこに買い物は?」
「!血だらけじゃない・・・・いったい何が」
姉ちゃんは俺の血まみれの服を見るにすぐに駆け寄って心配してきた
「あー俺もよくわっかんねぇ」
「今からオヤジが大事なこと話すってさ」
その時だった
後ろから声がした
その声は確実に生間美代、母親の声だった
「じゃあ話そうか」
「お袋・・・?」「お母さん?」
だけど、何か雰囲気が違った
そして妹の翼を除いた、家族会議が始まった
もとっともこの家族会議で母親は母親でなく母親の形をした別の何かだったなんてな・・・
その後しばらく親父の説明が続いた
その説明には驚愕の事実の連続で
いっぺんに言われると頭がパンクしそうなだった
とりあえず、声にだして整理しよう
「じゃあ話を整理すると・・・」
「親父が政府が隠し持っている違法な怪人化薬を見つけて」
「そのせいで母さんが意識不明で、今母さんにの中に入ってるのが得体の知れない天邪鬼とかいう幽霊科学者で」
「親父は悪の統領だって?とんでもないことになってんな・・・」
こういうことらしい
自分で言っていてもさっぱりわけわからん
とりあえず、単純にまとめれば
親父は政府の黒い事実を知ってしまい
そのせいで母の意識は不明になる
そこへ思念的存在である天邪鬼が現れ、お袋の体を乗っ取る
親父は政府の闇を暴くと同時に母を救うため、悪の組織として活動することを決める
うん・・・これは寝る前にもう一度整理が必要な案件だ・・・
さらに親父は言葉を続ける
それは
俺があの少女を助けたようと死んだ時、突然ベルトがトランクケースに入っていたベベルトが光って
俺に装着され、コックローチマンという畏敬の怪物へと変身した理由を
「お前が適合したその怪人化装置、ベルトは怪人化薬のリスクを軽減するものだ」
「量産試作品だがベルトにはAIがあり自動で適合者を探す、それを着けることによって理性を保つことができる・・・そう政府の記録に書いてあった」
・・・つまりこのベルトと怪物への変身は、全て政府が裏で製造していた怪人化薬の影響で
俺は偶然、適合率が高くて
ベルト自身のAIの判断で俺が選ばれ、怪人コックローチマンの誕生ってわけか
「・・・保てたかどうかは疑問だけどな、結局影響はあるってことか」
もっとも、理性を保つ機能があるらしいが
俺が聞いたあの声はどう考えても悪魔の囁きにしか聞こえなかったが
俺は、一通り聞いた後、今度は鮫島竜子について疑問が出た
彼女と向かい合う
「で・・・鮫島さんは・・・」
「竜子でいいわよ」
彼女は気軽に苗字のさん付けでなくし下の名前を呼び捨てでいいと言ってくれた
それならお言葉に甘えてそうしよう
俺は、親父が説明したことをもう一度言葉に出して言う
「じゃあ竜子は親父が立ち上げた悪の組織が人手不足の為に、同盟契約した悪の組織ってわけか・・・」
「その通りよ、私の両親は政府直属の工場で怪人化薬の製造に関わってたのよ、末端の製造員だけどね」
「で、両親が逃げ出して娘の私も巻き込まれて、両親が立ち上げた悪の組織もとい反政府組織「アダマシア」の一員になったてわけ」
「規模は30人程度の小さな組織だけどね」
・・・・ということらしい
この事実も衝撃的だった、彼女の両親が怪人化薬の製造職員で
逃げ出した後に反政府組織を結成、親父と協力し合う約束をしていた・・・てことだよな
その事実も気になるが、俺はやはり
俺が可愛いと思っていた、彼女は悪の組織の戦闘員だったなんてな・・・そのことが先に来てしまっていた
それでも、見た目が好みなので嫌うことはないだろうと、そう思った
そして竜子口からさらに衝撃的な事実が告げられる
「・・・私、実は生まれた時から怪人化薬を飲まされて育ったの・・・・・・・・」
「な・・・」
竜子のその言葉に、俺はただ困惑と驚愕の表情だった
「竜子ちゃん・・・・」
「竜子・・・すまない」
「パパとママは気にしないで、従わないと殺されただろうし」
近くにいたであろう竜子の両親(見た目は普通のおじさんおばさん)は彼女に謝る
彼女は笑顔で気にしないでと答えた
「まじか・・・・・・・竜子はでけぇもん背負って生きてんだな」
「まぁね・・・」
幼い頃から怪人として生きてきたなんて、その苦労は計り知れない
だってひょんなことから人を殺してしまう可能性があるんだから
「・・・・」
俺は何も言えないでいた
逃げるようだけど
話題を変えよう、一番重要なことを天邪鬼に質問しなくてはならない
暗い雰囲気が変わるわけでないが気は紛れる
「で・・・お袋は治るんだよな?一番重要なのはそこだ」
母親が本当に治るのかということだ
「ああそうさ、君たちが政府の怪人化薬のサンプルをより多く手にいれて、研究を完成させればその逆、命を一つ蘇らせることなど天才の私には造作もない」
母親の顔をした天邪鬼はそう説明した
用は怪人化薬のサンプルをいっぱい手に入れてこいてことか
それにしても、こいつが母親の顔でしたり顔で話してるのが気に食わない
「・・・・・なんか、お袋の姿でその口調で喋られるとやけにムカつくな」
「安心しろ生、息子と意見が合うなんて珍しいな」
そんな俺の考えと同じらしく、親父と珍しく意見があった
「親父も親父でいきなり悪の組織とか飛びすぎだろう」
「そうよ・・・・・私たちに相談も無しに」
姉ちゃんは何か言いたげだった
「・・・まぁ俺もそう思うが、真っ当に政府に訴えてももみ消され暗殺なりされるだけだ」
「なら、最初から悪の組織として大ぴらに活動した方が、正体を隠せて家族を守れる・・・・・・・・・・って思ってた」
「のは大間違いだったわけだ」
そうだろうな
現に俺や姉ちゃんはこうやってすぐ巻き込まれてるわけだ
「生や愛を巻き込むつもりはなかったが、だからこうなってはもう一緒にいた方がいいと俺は判断した」
「二人には本当にすまないと思ってる」
そう言って親父は俺達二人に頭を下げる
そんな親父に対し、俺は・・・
「まぁ、俺は親父の悪の組織に乗っかるつもりだけどな」
親父悪の組織の一員として一緒にやってくと言ってやった
「自分で言っといてなんだが、いいのか?」
「どうしてかはわかんねぇが、この怪人化薬が入ったベルトを巻かれちまった以上もう無関係でいられないしな」
そうだ、このベルトが巻かれた以上、秘密を知った以上
遅かれ早かれ、政府の連中が俺を消そうとするだろう
だったらお袋を治すため、俺は
逆に政府の闇を暴いてやる
何もせずやられるもんか、戦って抵抗してやる
それに、鮫島竜子のことも気になる
幼い頃から怪人化薬を服用してきた彼女を助けたいと思った
「竜子の秘密も知った以上、俺は竜子のことも助けたいと思ってる」
「え?生さん・・・・・そんな私は・・・・」
俺の言葉を聞いて、顔を赤くして謙遜する彼女
「後は俺は翼が巻き込まれなければそれでいい」
「私も、翼だけは・・・絶対に巻き込みたいくないわね」
姉ちゃんは小声で俺に同意した
そして、姉ちゃんも俺とほぼ同じ考えだったらしい
「よし私も、お父さんの悪の組織に入れて・・・私がお父さんの秘書としてサポートするわ」
「愛もいいのか」
・・・俺的には意外だった
姉ちゃんはもっと反対するかと思ってたけど・・・・
「うん、二人だけじゃ不安だし・・・何より自分の身ももう安全じゃないて分かっちゃたし」
「私も今日からお父さんと一緒に背負っていくから」
そういえば、姉ちゃんは親父のことが大好きだった
それならまぁ納得できなくはないだろう
「・・・・・二人とも、親孝行がすぎるぞ」
「そのうえで、巻き込んですまん」
親父は再度俺達に頭を下げる
「別に気にしなくていいぜ」
「これからよろしくねお父さん」
俺達二人は、そんな父受け入れる
「ありがとう、今日から俺達一家の新たな門出だ」
「俺達は一家で悪の組織だ、その名は」
「アルケミスト・アダマシア(A&A)だ」
アルケミスト・アダマシア、それが一家で悪の組織の名前だ
だけど世界は悪魔は俺達をあざ笑う、俺達の家族の大切な存在
「・・・ろ・・・目を・・・開けてくれ・・・!」
「諦めてはいけない翼、死んだら家族が皆悲しむ」
末っ子の翼が自殺で命を落とす
俺達はその時、世界に負けそうになった
心が折れそうになった
俺を含む親父も姉ちゃんも一晩中泣いていた
だけど、翼は世界に負けなかった
天邪鬼の手術で一命を取り留めた
「パパ・・・」
翼は、一回死んでも、性別が男性に変身する体質になっても
復讐が目的だけど、生きようとしてた
俺達の前に明るく姿を現してくれた
それが俺達を再び前へと進ませてくれた
「まずはヒーロー養成学園もとい輝星学園に入学おめでとう翼・・・」
時に場所は代わり、ここは悪の組織の本拠地が置かれてる地下空間
その大広間
玉座に座ってるのは俺の親父である生真真
黒いコートを羽織り、顔を鳥の意匠がついたマスクで隠してる
「いや、幹部コードネーム:ダブルウィングよ」
コードネーム:ダブルウィングこれは翼が裏の世界で活動するための名前
「そして幹部コックローチマン」
コックローチマンは俺のコードネーム
「いいか、心して聞けこれは潜入捜査である・・・とても大事なことだ」
親父は真剣に神妙な面持ち(多分眉間に皴がよってる)で翼に言うけど
翼は、心配症の親父を安心させようと笑顔で
「分かってるって、戦い方はお兄ちゃんに、ハッキング関係も天邪鬼さんにバッチリだよ」
今日までの成果を報告書に纏めて話していた
天邪鬼に電子機器の使い方や情報の抜き取り方も習い
ヒーロー側に潜り込む為のスパイ訓練は十二分に身についたと豪語する
「ああ、ではさっそく学園に溶け込みヒーローに関する機密情報を盗んでくるがいい」
「あ・・・む、掛け声はそうだな・・・」
「アルケミスト(錬金術)だ」
アルケミストねぇ・・・なんかかっこいいし悪くねぇな
俺は、手を胸に当て宣言する
「「アルケミスト!」」
まさか翼まで悪の組織に加わっちまうなんてな・・・
心配すぎるぞ・・・
俺はそう考えた
そして生間真は・・・
(まだ幼い翼に危険な事はさせられない、政府の手が及びにくい独立行政法人のヒーロー学園ならばいざという時に逆に娘を保護してもらうことも可能だ)
(悪の組織の頭領なのに甘いな俺は・・・所詮一人の親だという存在だいうことは否定できんか)
そう考えていた