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第五十六話 勝利と、平和



 ────


 エクス達とレジスタンス一行は無事にグリーンパーク集落へと戻った。

 途中別れたディーゴ、アービィ達も全員無事だった。そして、女王を倒したことでそのコントロール下にあった機械兵士も全て機能を停止……長年各地の機械人を脅かしたその脅威も、これで消滅した。




「皆の物、お疲れ様だ。大変な戦いではあったが、無事に勝てて良かった。

 全員生還し、他の集落の皆も救えた。吾輩としても……喜ばしい」


 集落の大木の周りで機械人は集まり、戦いの勝利を祝い合っていた。

 機械である彼ら、彼女らは良質のバッテリーやオイルをを補給し……あちこちで明るい談笑の声が響く。そんな中、マティスもカラカラと大笑いしながら言う。


「ははっ! 女王を前にした時にはダメかと思ったが……何とかなって、良かった、良かった」


「マティス殿もご苦労である。しかしまさか、我々を苦しめていた人類女王が、私と同じ管理コンピューターであったとは。

 セリスも、まさか女王の分身体だとも」


 ディーゴはそう言ってセリスの方を見る。彼女はギース、ガインにリズ、そしてウーシェイら集落の有力者とともに、幾らか離れていた所で話をしているみたいだ。


「──その事なら私は既に知っていた事だ、ディーゴ。……生まれこそそうではあるが、セリスはセリス、確固たる人格を持つ一人の人間である。

 だから私もそれを秘密にしておいた。セリスにそう、頼まれたからな」


「長老の言う通り、そう言う事だ。だから安心しなよ、ディーゴ」


「むぅ、長老殿にマティス殿に言う通りではあるな」

 

「ディーゴさん、レジスタンスのみんなでもお祝いを……しています。もし良かったら…………来てくれると嬉しいです」


 そんなアービィの言葉。ディーゴはそうだったなと、軽く笑って言うと。


「分かった。吾輩も今から向かうとも。

 ──そう言う事だから失礼するぞ。互いに、この祝いの時を楽しもうではないか」





 ────


 その一方で……エクス達は。


「あははっ! 何はともあれ僕達は勝てたんだ、良かった、良かった」


「私はずっと、心配してたから。みんなの事や……兄さんの事も」


 クラインとミースの兄妹も、戦いの勝利に喜んでいた。もちろん……無事に戻って来れたことも。


「だから言ったろ? 無事に戻って来るってさ。まぁ、それも一番はエクスのおかげでは──あるけれど」


 そう言ってクラインは、一緒にいたエクスに視線を向ける。


「あはは、それ程でもないさ。みんなのお陰…………って」


「ったく! 謙遜なんてするなよな。だって、エクスの力で女王を倒したんじゃないか」


「それは……まぁ。でも、クラインは本当変わらないね。僕のあの姿を見ても、全然」


「ハハハ! そりゃ驚きはしたさ。でも、エクスはエクスだろ? いちいち気にはしないとも」


「……なぁ、俺はあまり詳しい事は分からないんだけど、どうかしたのか?」


 傍で座っていたギリ―は、その話に気になるように首を傾げる? それにミースも。


「兄さん、私も戦いの事をまだあまり聞いていなくて。ちょっと知りたい、かな」


「説明しようにも難しいな。むむむ……何て言えばいいか」


「ふふっ、僕の代わりにちゃんと説明してよね、クライン」


 話に困るクラインと、他人事のように微笑んでいるエクス。


「エクス! 人任せにしないで、説明してくれよ。大体僕もよく分からないんだからさ」


 そんな風に四人でいる中に……一人の人物が、エクス達のもとにやって来る。


「やぁ、良ければ私も混ぜてくれないだろうか?」


「──セリス! もちろん、大歓迎だぜ」


 やって来たのはセリスだった。ギリ―は彼女に会えて嬉しそうに駆け寄る。


「本当に無事で良かったぜ。女王にやられたんじゃないかって、心配してたんだ」


「ふふ、半人前であるギリ―を置いて、いなくなるわけにはいかないからな。

 ……それにエクス、クラインも。今回は色々と世話になった。改めて礼を言う」


 セリスは二人にも礼を伝えた。エクスは微笑みながら、首を横に振る。


「礼なんて構わないとも、色々と集落で世話にもなったから。これで少しは返せたかな」


「ああ! 水臭いさ、セリス! まぁ……どうしてもと言うなら、狩猟隊の隊長の座でも──」


「に・い・さ・ん!?」


 調子に乗ったクラインに対して、ミースは両手を腰に当てて、カーボン肌の頬を膨らませる。


「こんな時でも変わらないなんて……呆れるにも程があります」


 彼女の言葉、クラインは明るい笑い声を上げると。


「いーじゃないか、いつも通りで。

 ──うん、だからこそ良い。こうして無事に、いつも通りみんなでいられる事が……やっぱ良かったって。

 そう……本当にさ」


 クラインは本当に、嬉しそうに笑顔を見せて言った。

 

「……クライン、君は」


 エクスも、それにセリスにミース、ギリ―も……この言葉に、反応したようで。


「クラインの言う通りだぜ。だって、もしかするとあの人類女王に全員やられてしまっていたかもしれないんだぜ? 大切な集落だってきっと、なくなっていたと思う。

 それがこうしていられるんだ。俺も嬉しいぜ」


「兄さんたちのおかげで、だからだもんね。エクスさんやマティスさん、レジスタンスの皆さんが頑張ってくれたから。だから……私たちも」


 ギリ―とミースも優しい気持ちになって。最後に──エクスは、にこりと微笑んで言った。



「みんなが幸せで──嬉しいよ。それがきっと何よりだって、僕も思うから」


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