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第五十五話 残されたもの


 かつて人類女王と呼ばれた、管理コンピューターの残骸が炎上する……誰もいなくなった玉座の間にて。

 小さな動く何かがいた。それは──エクスが倒したはずの、シャドーの頭部だった。首元から蜘蛛のような多脚を生やしてカサカサと動き、そして……ハッチのように頭部が開いた。


「女王陛下、やられてしまったのか」


 頭部から出て来たのは、黒くて小さなリスのような、ネズミのような機械生物。……これがシャドーの本来の姿だった。あの漆黒の鎧は本体が動かす……いわば乗り物のようなものだったのだ。


「我にあの身体を与えてくれた恩、果たせなくて残念だ。しかし──」


 チュウ……と、一鳴き。それから後ろ足で頭を軽く掻いてから、天井からぽっかり空いた穴から覗く空を見上げる。


「もうここにいる……用もなくなった。さて、また新しい居場所を、探すことにしよう」


 呟きシャドーは残骸を一瞥、そのまま小さい身体で走り去った。

 その行方は──定かではない。


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