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第五十一話 女王との対峙と、クラインの叫び

 時間は少し前に遡る。

 エクスを残し、マティス、クラインは道を進む。

 目指す終着点、女王がいるであろう城の中央制御区画へと。そして……それはもう間もなくだ。


「この道を一直線、その先に──」


「人類女王がいるって訳だろ? マティス」


 これまで通った道よりも一回り小さい、人二人がどうにか通れる一本道を走る二人。

 通路には光筋が走る幾つも線があり、光は通路の奥へと向かう。そんな中で先頭を走るマティス、そして──。


「……ここだな。ようやく、たどり着いたぜ」


 通路の終点。固く閉ざされた扉が目の前に現れた。


「この扉の向こうが中央制御区画。そして恐らくそこに、女王が。

 けれど扉はどうする?」


 扉には開けるための取っ手はおろか、開く手段が見当たらない。……どうやって開ければいいか。


「下がってくれ、クライン。開ける手段が分からないなら話は簡単、一気にぶち壊せばいい!」


 威勢よくマティスが言うと、複腕に握る重火器。バズーカにガトリング、二丁の機関銃……計四つの武器の銃口を扉に向ける。そして引き金を引こうとした瞬間だった。


「「!!」」


 瞬間、扉が二人の前で開いた。いきなりの事でクラインも、マティスも驚きのあまり固まるものの、すぐにはっとして目の前の光景を注視する。

 扉の先、そこは暗く、すぐ手前にある床面以外はいかに機械人である二人でも先を見通せず闇ばかりが先を包む。


「勝手に開いたけれど、どう言うことだ。それに扉の先……本当に城の中枢なのかよ?」


 分からなくてクラインは戸惑うものの、マティスはかすかに笑い声を上げると、それから覚悟を決めたようにして言った。


「ともかく扉の先に入れば分かるとも。最初から、私達はそうするしかない。だろう?」


 さすが人生の先輩とも言うべきか、マティスはしっかりとしている。クラインも、彼女程肝の座りは足りないにしろ、覚悟をしてここまで来た一人だ。

 当然、やる事は一つだと分かっている。


「さて、先に進もうか。鬼が出るか蛇が出るか……見ものだ」


 自分でも気合いを入れるように活を入れると、今度はクラインから先頭に立って扉の先に入る。続けてマティスも。

 

「相変わらず、暗いな。一体どうなっているんだ?」


 入っても相変わらず中は真っ暗で、辺りはよく分からないでいる。だがいつ何が起こるか分からない、二人とも身構えて戦闘態勢を維持したままだ。クラインは大剣を、マティスは計四本の腕に握る複数の重火器を構えている。

 辺りを見回し、マティスは警戒する。


「辺り一面闇ばかりだ。困ったな、どうなって──」


 辺りは暗いまま、身構えながらも戸惑いがあった二人。……そんな時に。




「よく来たな、ガラクタども」


 部屋の奥から声がした。それとともに明かりがぼうっと光り、部屋の全容が明らかになる。

 そこは大きく広がる、玉座の間のような空間であった。左右には何本もの柱とパイプや導線、複数の機器が樹木のように生え……奥には光りさえ届かない闇を背景に、漆黒の玉座があった。


「ここは制御区画だろ? 一体どんな作りになっているんだ……それに」


 玉座に座っているのは銀色の仮面を顔に被り、全身を黒いローブで包んだ人物。あれこそが……もしや。


「……人類女王なのか。あれが」


 あれこそ人類唯一の生き残りとされ、機械兵士を使役し機械人を苦しめてきた人類女王だと。そう考えたクラインは再び呟く。一方、マティスはすぐさま武器の銃口をその女王の元へと向ける。


「見つけたのなら話は早い! このまま吹き飛ばしてやるとも!」


 そして迷う事なく引き金を引いた。

 同時に放たれる無数の弾丸の嵐。それは玉座に座る人類女王を襲う……が。攻撃が届くより手前で、見えない壁のようなもので阻まれ無効化される。


「何だとっ!」

 

 マティスは驚く一方で、クラインはその光景に覚えがあった。


「あれはシャドーの時と同じバリア。やっぱり女王も持っているのか」


 そんな状況の中、玉座に座る人類女王は含み笑いをする。


「ふふふふっ、随分な挨拶ではないか。……まぁいい。貴様らごとき存在など痛痒に感じぬ」


 ひとしきり女王は笑ったのちにクライン、マティスに対して言った。


「二人……か、ここまで辿り着いたのは。いかに下等なガラクタであろうと私のもとに辿り着いたのだ。

 我こそ最後の人類にして、唯一この世界を支配する資格を有する王──人類女王の元にな。ようこそ、ここまで来た。歓迎しよう」


「……くっ」


 攻撃は通じない。これでは女王を倒す事だなんて出来はしない。しかし圧倒的不利な状況において、マティスは女王と対峙して言い放った、


「歓迎すると言うのなら……機械人に対する侵攻を止めてもらいたいな。城の周りにいた大量の機械兵士も見た。女王、一体何のためにこんな事をする?」


 正面切っての問いかけ、対して人類女王は余裕をもって、冷たく言い放つ。


「決まっている。この星は私の……人類のものである。それを、人類の道具として作られた機械如きが横取りして支配を握っている。

 それが我慢ならんのだ、だから──私の力を持って機械、ガラクタどもの全てを滅ぼしてやるのだ」


「何だと……っ」


 これに驚愕するマティス。そして、クラインもまた驚きと、怒りの眼差しで女王を睨む。


「そんなふざけた理由で、みんなをずっと苦しめていたのか!

 例え機械だとしても俺は、俺たちは生きているんだ! 最後の人類だか何だか知るものか、それを踏みにじって良い権利なんて誰にも……あるわけがない!」

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