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第三十一話 一応の決着


「たあぁぁっつ!」


 いきなり別方向から、何者かの斬撃がシャドーを襲った。

 フォースフィールドがそれを防ぐも、自身の全長以上の大きさを誇る巨大な大剣による大質量の攻撃。 それによる衝撃は完全に吸収することが出来ず、シャドーはぐらりとよろめく。


「誰だか知らないけど、これ以上やるなら僕が相手だ!」


 現れたのは、集落にいたはずのクラインだった。


「悪いけど武器は勝手に借りさせてもらったよ。……ちょっとばかし、僕でも重いけど」

 

 その横では倒れたディーゴを残ったレジスタンスが回収していた。


「どこまでも、鬱陶しい連中だな」


「……まだやるつもり。だったら、容赦しないよ!」


 どうやら本気でシャドーと戦うらしい。これには溜まらず、エクスは言った。

 

「よせ! クラインが戦える相手じゃ……」


「エクスは下がってなよ。ちょっと変わった相手だけど、僕だって──」


 だが、クラインが言葉を言い終わらない内に──。


「……えっ?」


 瞬く間にシャドーは距離を詰め、クラインの持つ大剣を真っ二つにした。

 彼のすぐ目の前に迫った黒騎士、その凶悪な刃が、クラインの頭まで切断しようとしたその瞬間──。



 間にいきなり、割って入ったエクス。 手には先ほどディーゴが落とした、ヒートブレードを握りビームソードを防いだ。

 ヒートブレードの熱量は最大出力、これにより鋭い剣先を止めていた。


「誰かと思えば……! だが、そんな武器では」


 攻撃を止めているといえ、これでは一時的にすぎない。

 エクスの持つヒートブレードも先ほど同様、刀身に亀裂が入って行き、いまにも折れそうだ。


「愚か者どもめ、今すぐに引導を──」




 ────


 だがその瞬間……。

 

「──!」


 突如、シャドーの胸部に小さな爆発が起こった。

 そして後ろによろめき、その部分を片手で抑える。


「……」


 一方、エクスが持つヒートブレードは、亀裂が剣全体に走り……砕け散った。

 


 シャドーが抑えた手を放すと、ほんの僅かではあるが装甲の一部が砕け、その破片が掌に付着していた。

 先ほどまでフォースフィールドにより、傷一つつける事が出来なかった身体に──今こうして一撃が入った。


「まさか、これは──」


 まるで茫然としたように、シャドーはつぶやく。ヒートブレードによる攻撃では、ありえない。だとするなら──。

 そんなシャドーに……エクスは睨み、冷たく言い放った。



「これで満足か。貴様の正体は知らないが、まだ続けるつもりなら──私は、容赦しない!」




 エクスの姿を間近で見ていたクラインは、思わず言った。


「エクス……お前……」


 クラインの目の前では、いつもエクスはいい加減で軽い感じと雰囲気ではあるものの……それでも優しく、穏やかであった。

 最初会って、いきなり決闘をした時でさえも、そんな様子を崩すことはなかった。



 ──なのに、あの鋭い目や、気迫だって違うじゃないか。自分の事を『私』って言ってたし、まるで別人みたいだ──


 思わず戸惑いを、隠せずにいたクライン。



 一方で、シャドーはエクスを正面から見据え沈黙する。エクスもまた睨んだまま──、両者は向かい合う。

 ……だが、突然シャドーの方が視線をそらし背を向けた。


「ふっ、今はよそう。──我の用事は既に完了した」


「……」


 シャドーはそう言うも、対するエクスは沈黙したままだ。

 その沈黙に際しシャドーは一度、再びエクスに顔を向けた。


「エクス……か。いいだろう、また近いうちに……再び相まみえようぞ」


 


 すると崩れた廃墟から、最初シャドーが乗っていた大型の機械馬が走って来た。

 シャドーは走って来た機械馬の背に飛び乗り、荒地の向こうへと去って行った。




 ────


 シャドーが去り、残されたレジスタンスと、エクスそしてクライン。軽傷のレジスタンスは重症の仲間を見て回っていた。そしてディーゴも……。


「良かった、命には別条は……ないみたいだ」


 幸い軽傷で済んだ長老は、ディーゴの傷を確認してひとまず安堵した。

 ビームソードにより胴体に穴が空いたディーゴだが、内部機器には致命的なダメージは入っていない。応急処置さえすれば十分持つだろう。

 他のレジスタンス隊員も重傷者は多いものの、命に別状がある者は奇跡的にいなかった。




 一方エクスそして、クラインはと言うと……。


「……エクス」


 シャドーの去って行った地平線を眺め、立ち尽くすエクス。クラインはそんな姿を見て未だ頭の整理が出来ずにいた。

 正体不明の謎の敵に、辺り一面の無残な光景、そしてエクスの豹変──。先ほどは勢いにまかせ飛び込んだが、今にして思えば……この状況に混乱を隠せない。



 エクスは暫く無言で佇んでいたものの、落ち着いたように地平線から視線を外す。

 そしてさっきまでの雰囲気は何処かへと消え、いつものような穏やかな様子で、傍にいたクラインに話しかける。


「ふぅ……大変な目にあったね。ケガはないみたいだけど……クラインは大丈夫だったかな?」


「……あ、ああ」

 

 クラインは我に返り返事を返す。

 結局何であったのかわからないものの……とにかく、謎の強敵であるシャドーとの戦いは終わった。

 この戦いが後に彼らに及ぼすものは、一体何なのか。──その時はまだ知る由もなかった。



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