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第二十九話 対決、エクス対シャドー




 余裕を見せるシャドー。

 だが、現実として圧倒的に有利にあるのは、そのシャドーである。

 

 ──何が何だか知らないけどこっちだって、向こうの事を知るチャンスになるはず。だから……ご期待に応えないとね!──



 

 剣を手に、向かって行くエクス。


「はあっ!」

 

 そして一気に斬撃をシャドーへと繰り出す。だが──。


 ……キンッ!


 シャドーは金属甲冑の手甲で、易々と一撃を防ぐ。


 ──やっぱりそう簡単には……行かないか!──


 武器そのものが悪いと言うわけではない。だが、相手の装甲の強度が、それを大きく上回っていた。

 

「その程度か?」

 

 シャドーはビームソードをエクス目かけて放つ。

 その鋭い突きを、エクスは後ろに飛びのいて避ける。距離は相手の武器のリーチ外だ。再び仕切りなおそうとした、その瞬間──

 今度は右手をエクスに向け開かれる。手の甲には発射孔があり、その部分が瞬く間に輝き出す。


 ──まさか!──

 

 エクスが何かを悟った、次の瞬間。発射孔からは大出力のビームが放たれた! 

 空間ごと引き裂くような一筋の閃光──。

 放たれた光筋は廃墟の一部を粉砕し、その場にいた数体の機械歩兵を巻き込み、瓦解。

 すぐ近くにいたエクスは、崩落する廃墟に巻き込まれた。

 

 

 土煙に覆われ辺りは見えなくなる。

 シャドーは様子を伺うように、立ち尽くす。……すると。

 土煙を突き破るように飛来する、幾つもの飛翔体が出現っした。その正体は全弾ともにミサイル。ミサイルは次々にシャドーを襲い、激しい爆発がその姿を包む。

 一方、廃墟の瓦礫には土埃で汚れたエクスが立っていた。汚れてはいるものの、外傷らしいものは見受けられず無傷のようだ。

 手に持っていたのは、さっきの攻撃で使い果た、空になったミサイルランチャー。

 どうやら先ほど崩落に巻き込まれた機械歩兵の中に、重装歩兵も混ざっていたらしい。その武装を拝借したのだろう。

 もはや用済みになったミサイルランチャーを捨て、今度は近くで機能停止した機械歩兵が持っていた、機関銃を代わりに入手する。


 ──ビームを放つことも可能か。一体、どれほどの技術が使われているのやら──


 エクスはこう考えながら前方を見つめる。 

 

 ──直撃は、したと思うけど。やったか──

 

 しかしその考えとは裏腹に、爆炎の中にはシャドーが平然と立ち尽くす。

 全身を覆うマントは焼け落ち、傷一つない、黒光りする金属甲冑が露わとなる。


「……ふん」


 シャドーはゆっくりと闊歩し、ゆっくりとエクスに向かって歩みを進める。


「くっ!」


 迫る姿を目掛けてエクスは機関銃を連射するも、放たれる銃弾は悉く鎧に弾かれる。何十発も連射した末、機関銃さえも空になった。

 シャドーは相変わらずの無傷。エクスへと迫りながら、こう言葉を発した。

 

「……こんな物ではないはずだ。まだ、お前は色々と隠しているのだろう? 

 さぁ、それを見せてみるといい。でなければ──」


 相手は最強の武器を持ち、攻撃までも通用しない。

 追い詰められたエクスではあったが、その表情には絶望した様子は微塵もない。


「さてと、どうかな? たとえそんな物があったとしても、簡単に手の内を晒すわけにはいかないね!」 


 と、そう言うやいなやエクスはシャドーに背を向け、脱兎の如く逃げの一手に出た。

 これにはシャドーも一瞬固まったものの、すぐに機械歩兵に指令を出す。


「くっ、どんな手を使ってでも奴を止めろ! 武器も使って構わん!」

  

 すると先ほどまで固まっていた機械歩兵は動き出し、追跡を始める。

 そしてシャドーも先陣を切るようにエクスを追った。




 ────


 かつて工場だった廃墟の中を、走るエクス。

 行く手には数体の機械歩兵が遮るものの、それを瞬く間に蹴散らす。

 剣で切り捨て逃げ道を確保する。……しかし。


「逃がすものか!」


 その瞬間、背後から迫るシャドー。

 手元のビームソードを一閃し、ついエクスは刀身で防ごうとするも無駄だった。

 高エネルギーの刃の前に容易く剣は切断された。そしてその刃が自らを襲う寸前、折れた剣を手放し間一髪で回避する。 



 だが、これで再び武器を全て失った。機械歩兵はわらわらとエクスを取り囲み、そしてシャドーが前へと出る。


「さすが、やるじゃない」


 正面に立つシャドーを前にエクスは言う。


「……」


「そのビームソードと言い、見た所高い技術力を持っているみたいだね。

 ところでどうだろう? 交換条件として君や人類女王、その組織について教えてくれないかな。そしたらこっちも──」


 ──が、言葉を言い終わらないうちに、エクスの真正面に刃先が向けられた。


「口先だけは回るようだが、もう良い。所詮は小物……女王陛下に会わせる価値もない」


 冷たくシャドーは言い放つと、ビームサーベルを構える。


「何処のガラクタかは知らないが──ここで消えろ!」


「……ちっ」


 ──話が通じれば楽だったのに。今の段階で、こんな真似は避けたかったけど──


 対してエクスも、何か行動を起こそうと身構える。

 



 だが……次の瞬間、包囲していた機械歩兵の一画で爆発が起こり数体近くをバラバラの残骸と化した。

 

「何だと!」


 シャドーもそれに反応した瞬間、今度はグレネードらしき物が飛来する。

 グレネードはシャドーとエクスのすぐ近くで破裂し、大量の煙幕をまき散らす。

 

 ──これは、一体誰が──

  

 エクスも訳が分からないでいると何者かの人影がその手を引いた。


「こっちだ、急いで逃げるといい」


 それにはシャドーも察知したらしく、逃亡を阻止しようと動く。

 対して人影はスプレーガンらしき物を構えると、その足元に向けて中身を放った。

 シャドーの足元には中身と思われる半ゲル状のものが絡みつき。一時的にではあるが動きを封じる。


「今のうちだ。さぁ、早く」


 手を引っ張られ、何者かとともにエクスはシャドーの包囲から脱出した。



 

 ────


 廃墟から出ると、そこには既に複数の機械人が待っていた。全員ともに何らかの武装を所持し、そして横には地上に設置された迫撃砲がずらりと並んでいた。


「大丈夫だったかな? エクス殿」


 エクスの手を引き、外に連れ出したのは、キャラバン隊副隊長のディーゴであった。


「ディーゴさん……どうしてここに?」

 

「悪いが話は後だ。──さぁ、エクスも無事救出した。残る人類女王の手先はあの中だ、廃墟ごと吹き飛ばしてしまえ!」


 ディーゴの号令とともに、機械人は迫撃砲に砲弾を詰め、廃墟めがけて一斉に発射した。

 砲弾は空中高く飛び、その後大きく曲線を描き廃墟に向けて落下……そして着弾した。

 いかに大きな廃墟と言えども、何発も着弾し炸裂して行く砲弾の前には無力。

 中にシャドーと機械歩兵を残し、廃墟は無残にも崩れ落ちた。




 廃墟は破壊され、跡には巨大な瓦礫の山があるだけ──


「反応は見えない。……これで奴らは」


 恐らく機械歩兵、そしてシャドーも大量の瓦礫に押し潰されたのだろう。

 いかに武器による攻撃が無力とは言え、さすがにこれでは……。

 エクスは改めてディーゴに話しかけた。

 

「ありがとう、ディーゴさん。それに……」


 すると向かい側の機械人達から、年配と思われる一人の機械人が歩み出た。


「これはエクスさん、今回は面倒ごとに巻き込んでしまいましたな」


「……あなたは?」


「私はラグーンサイド集落を束ねる長老、そして女王に抵抗するレジスタンスの一員、リープでございます。あなたの活躍もディーゴから伺っており、こうして会えた事も光栄に存じていますとも」


 そして彼はこう説明する。


「申し訳ない。君の動向は把握していたが、そのまま危険な目に遭わせてしまった。だが、おかげで女王の腹心であるシャドーを倒すことが叶った。……君のおかげだ」


「つまり、僕は囮として使われていたと言う事だね」


 これにはディーゴも長老とともに謝罪した。


「吾輩からもそれは謝る。何しろ、奴を倒すにはこの手段しかなかったのだ」


 だが当のエクスは別に気にしている……と言うわけではない。


「別に僕は平気だよ。少しだけど相手の事も分かったしね。けど……」


 するとふと、瓦礫の方へと視線を向けた。


「せめて直接、話は聞きたかったけどね。まぁ──仕方がないか」


 肩をすくめ、もはや興味なさげでエクスは視線を反らそうとした。まさに、その時──

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