第二十二話 謎のレジスタンス
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「それでは、どうかおくつろぎ下さい」
案内を終えたラグーンサイド集落の機械人は部屋から退室する。
キャラバン隊が案内されたのは高い櫓の上層にある、ゲストハウスの広い部屋だった。壁にはバッテリーや燃料タンクが置かれ、解放感のある窓には下に見える集落の家並みと──そして広がる大海原が臨む。
「おお! 何度見てもここの景色は良いものだな!」
キャラバン隊の機械人達の多くは、窓から景色を眺める。
「ほら、エクスとクラインはここに来るのは初めてだろう? よく見てみるといいさ」
そう促されエクス、クラインは窓の傍へと向かう。
「ほう? 海の景色はさっきも見たけど……それよりずっと、見栄えがいいぜ」
「──うん。これはこれで、いいね」
地平線の遠くまで見えそうな青い海……。それは、相変わらず美しいものだった。
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ガイン、ディーゴは集落端の資材置場へと来ていた。
外にある山のように積まれた残骸の山とは別に、別区画では残骸から分解してその材質、部品ごとに整理された倉庫が存在する。
二人がいるのはその倉庫の中。棚ごとに置かれた資材を見ながら、品定めをする。
「ほう? こちらにはこの金属は希少だからな。これは多く欲しい所だ」
「ガイン殿、あちらの部品も集落の機材に必要だろう」
そんな風に話し交換する物を考えていた時、ある機械人が現れる。
「よく来たな。ガインさんと、それにディーゴさんや」
それは楕円形を思わせる本体に手足が生えたような機械人。ガインはさっそく、挨拶を行う。
「これは長老どの。お久しぶりでございます」
彼こそこのラグーンサイド集落の長老。ガイン達二人も会うことこそ少ないが、何度か交易を行うなかで知ってはいた。
「ふむ。交易品の交換という事だな、大変よろしい。そちらの集落も、また苦労しているようですからな」
「しかし……なぜ、長老どのがわざわざここに?」
ガインの問いに、長老はふむふむと頷く。
「実はだな、そちらのディーゴをぜひ借りたい。彼と少し話がしたいと思ったのだよ」
この事はこのラグーンサイド集落に来るとよくある事だった。
何しろ長老とディーゴはかつての旧友。そのためキャラバンで来るたびに彼一人で、話に行くことはあった。
それを知っていたガインは頷き了承する。
「問題はないとも。……と言うことだディーゴ、話をして来るといい」
「──はい」
ディーゴは一礼し長老の元へと向かう。久しぶりなのか、長老は嬉しそうな様子で、彼を迎える。
「ほう、久しぶりだなディーゴ。会えてうれしいぞ」
「吾輩も勿論である。……しかしリープ殿から会いにくるとは、ただ事ではありませんな」
リープとは長老の名だ。そしてディーゴの言ったことが図星なのか、長老は言葉を濁らせる。
「ああ。だがここでは何だ、少し場所を変えて話すとしよう」
ディーゴは長老に連れられ、彼の住居へと入る。
「さてと、ここなら大丈夫だろう」
そう一言つぶやき長老は話しはじめる。
「改めて、共に女王の打倒を目指すレジスタンスの同士であるディーゴと再会でき、私は感激だ」
「吾輩もラグーンサイドの同志と再び会え、心から嬉しい。……他の同志達は元気にしているか?」
──だが、これを聞かれた瞬間、長老は俯きある事を伝えた。
「残念だが……この集落のレジスタンスは、殆ど全滅した」
ディーゴはそれを聞き驚愕する。
「馬鹿な! ここのレジスタンスは、規模が大きかったものだったはずだ」
戸惑う彼を諭すように、長老は説明する。
「それが……レジスタンス内部に、スパイが紛れこんでいたらしい。私を含め数人は気づかれずに済んだものの、多くはスパイめの卑劣な手により全員──」
さぞ無念であったのか、長老の声にはくやしさの感情が混じる。
これにはディーゴも何も言うことは出来ない。
「だがその犠牲により、我らはスパイについて知ることが出来た。……幸い向こうはラグーンサイドのレジスタンスは全滅していると思い込んでいる。つけ込む隙は十分にあった」
「それでスパイは、もう始末したのか?」
「いや、奴はまだ何食わぬ顔で集落にいるとも」
──これを聞いてディーゴは明らかに気に入らないように言った。
「なぜ! 同志たちの仇を討たなければ! なのに──」
だが、長老は諭すように話す。
「まぁ待て。いずれ報いは受けてもらうが、スパイであるなら利用したいと考えたのだ。
……それに私のこの考えにより、ある情報が新たに分った」
そして、こう続けた。
「この集落に女王の腹心の一人──シャドーが来るらしい、との情報だ。
あやつをこの手で仕留めれば、女王の弱体化へと繋がる」
「シャドー、だと!? 話では恐ろしいほどに強い傭兵だと言う話だ。……本当に、大丈夫なのか?」
女王お抱えの傭兵、シャドー。その事を知っていたディーゴは心配になる。
……が、長老は意に介さない。
「心配はいらぬ。いかに強かろうと、しょせんは一人の機械人だとも。私を含め残存するレジスタンス総出で掛かれば、倒せる可能性はあるはずだ。
多くのレジスタンスが女王の手にかかった。──その報い、少しでも多く受けてもらう」
「……」
長老は例え自らが刺し違えたとしても、それを果たすつもりであった。
「だが、これは我々の問題だ。ディーゴにはただ、その事の生き証人になってもらいたいのだ──もし我々全員に何があってもな」
いつか訪れる勝利のためなら、命さえ惜しくない。それが女王と戦う……レジスタンスである。




