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第一話 終末世界と、機械と──異邦人(表紙付き)

ここから第一話になります。

表紙はこちら、イラストはかっぴゔぁらさんより頂きました

挿絵(By みてみん)



 ────


 見渡す限りに広がる……廃墟と自然。



 かつて人類のものであった大都市は、その元々の耐久性の高さにより廃墟としてまだ形は残っていたが、もはやその栄華は過去のものとなっていた。

 白銀に輝いていただろう壁や建造物は灰色、褐色へと変色し、何より全体は草木やツタなど緑で覆われていた。

 風化によって崩壊した建物や道路の窪みには水が溜まり、周囲も森へと変貌している。人類の遺産は大昔に人類が存在していなかった時と同じく、長い時をかけながらも自然の中へと還ろうとしていた。

 植物だけではない。鳥に魚や、動物までも、人類により征服された大地の再征服レコンキスタを成し遂げた。これは今地球全土で起こっている出来事。残された人間の文明は、もはや残っていなかった。


 

 ……否、厳密に言うならそれは少し違うだろう。

 風とともに聞こえる草木のさわめきと動物の鳴き声、鳥のさえずり。

 しかし、そんな中である異質な音響が響く。

 金属を擦り合わせるような鋭い音。さらに断続的にガチャガチャと聞こえる、固い質感の音。

 明らかに自然が生み出す音ではない。むしろそれとは対称的の……。



 音源の一つは廃墟の合間を悠々と歩いていた。

 灰色と黄色が混ざった巨体を揺らし、太い四足の足は強く大地を踏みしめる。だがそれは動物のような自然の生物ではない。

 その前身は金属で形成されており、脚部にはタイヤが幾つも取り付けられ後部に尻尾のように大きいクレーン、胴体下部には作業用だったとも思えるアームがムカデの足みたいに生えている。

 頭部は胴と同化し顔の両側には採掘用のドリルと中央に排土板、その後ろには口のような粉砕機が見え隠れする。



 人類によって生み出された機械、ロボット達は人類が滅びた後も稼働を続けていた。

 かつて人類が手を下し、指示を行わずとも自動に機械が工場規模で……もしくは個体自らの機能により自動生産、修理、補給、改修を行えるように作られた結果、もはや人類に奉仕する目的が失われたにも関わらず、今なお稼働を止める様子はなかった。

 しかし本来の目的が喪失したために、機械はその機能が著しく変化。役目を持った自動装置だったものは新たな目的を獲得するために自動生産を経て数世代を経て、機能を次々に増設、生物のような進化を遂げた。

 だがその内に複数の機能同士の合併、拒絶反応、そしてシステムのバグが長い年月、世代において生じた末に次第に野生化、いわゆる機械生物へと至った。

 今ではもはや自然の動物類と……ほとんど変わらない。




 あの巨大機械は本来、土木作業用の重機ロボットだった。今はたび重なる修理や改修、もしくは一部のロボットが持つ機能、自己生産機能により何代も世代が経つにつれ、自然の生物のように進化を果たしたのか、今ではその様相を一部に残し姿はかつての原型を留めないほどに変わり果てていた。

 無論、機械生物はこの一匹のみではない。細部は違えど同型のものがその付近に十数匹の群れを作り、他にも中型、小型の複数種の機械生物が多く生息している。

 その群れは今、廃墟の一画で微動だにせず背部から太陽光発電パネルを展開し、充電している最中だ。

 動物が水や食料を必要するとは別に、機械生物はほとんど電力の補給が必要となる。

 今、群全体では太陽光発電をしているが、それ以外にも複数の発電機能を所有している。

 また世界には惑星のマントルから直接熱量を得て、それをエネルギーに変換するに事より理論上半永久的に稼働する発電プラントがかなり残っており、そこで電力を補給することも多い。

 もっとも繁殖や成長、修理に拡張・改造を行う場合にはその分の部品、パーツを生産する分の原料を摂取する必要がある。

 それは鉱物などの資源を採掘、または同じ機械生物などを捕食することで摂取する。──つまり機械生物の間でも食物連鎖の関係は成立していた。

 



 宙を飛んでいるのは、元々は小型荷物の運搬用だったドローンの姿だ。

 球体の本体にクモのような八本の足と、本体上に四つのプロペラ……単純な外見から考えると、人間によって製造された当初からさほど変化することは無かったのだろう。

 すると近くの廃墟の闇で物体の影が動いた。そして次の瞬間、陰から金属の塊が飛び出しドローンを襲った。

 その正体は、大昔の小型恐竜みたいな二足歩行の機械生物だ。

 脚部は筋肉繊維を思わせる複数のケーブルと金属骨格が絡み合うことにより構成され、腹部には縦にタイヤが二つ並んでいる。タイヤもそうだが胴体もまるでバイクのようにも見え、この機械生物は人工知能を搭載したバイクから進化したのかもしれない。

 口に咥えたドローンを鋭い牙で噛み砕き、咀嚼する。

 金属が潰れ、砕かれる音が周囲に響き、捕食しているバイク型機械生物はそれに夢中になっていた。

 だが──



 

 突然、ある気配を察した機械生物は警戒して頭を上げる。

 頭部中央の巨大な目玉を思わせる高感度センサーカメラは数十メートル離れた地点の草むらの中で、何かが輝くのが見えた。

 そして本能的に危険を感じたのかすぐさまこの場所から離れようとした…………

が、既に手遅れだった。

 逃げ出そうと脚部のモーターを動かそうとする前に、その頭部は何かによって粉々に粉砕された。

 ほとんど残っていない頭の一部から煙と火を噴いて機械生物は倒れる。

 腹部のタイヤや脚部をでたらめに動かし、しばらく痙攣した後に停止した。



 すると完全に停止したのを確認したのか、草むらがガサガサと動いて何かが姿を見せた。


「……ふっ、どんなもんだ! 俺の腕もなかなかのものだろ!」


 草むらから現れたのは二つの人型をした何かだった。

 先ほどバイク型機械生物の頭部を破壊した武器なのか、硝煙が昇ったままの一メートルを超す大型狙撃銃を得意げに掲げ無邪気にそう自慢していたのは、さながらブリキ人形のような無骨で大柄の人型ロボットだった。


「なぁ? セリス、見ていてくれただろ?」


 そう言って爛々と光る赤いモノアイを向けた先には背丈の高くクールで大人びた、スタイルの良い身体を際立たせるボディーアーマを身にまとう金髪少女らしき姿がある。

 彼女の方は、人間とほぼ同じ外見をしていた。

 しかし両耳の代わりに生えている尖った機械のセンサー、さらに右肩に繋がる華奢な身体とは不釣り合いな装甲に覆われた頑丈な金属腕が、人間とは違うことを証明している。


「ふふっ、この距離で一撃とは随分と腕を上げたじゃないか。良くやったよ、ギリー」


 編み込んだ長い後ろ髪を揺らし、機械の少女──セリスは冷静で恰好の良い、薄っすらとした微笑みを見せた。




 かつて人類の助けになるような機械やロボットは変貌し、多種類の機械生物へ進化を遂げた。廃墟を闊歩しているあれらのように野生動物の如くと化したものが、数多い。

 しかし────中にはそれとは違う別のものと化した存在もいた。このセリスとギリーもその一部。

 彼女らは元来人間とともに共生していた、多種に渡る人型ロボットの末裔だった。

 仕事は肉体労働に頭脳労働、もしくは人間への娯楽提供と様々だったが、それでも人間との交流が多かったためにその制御系、機械頭脳は他のものより高度だった。そして知能と精神はほぼ人に近いものとなっていた。

 そのせいだったのだろう。人類が滅びた後、彼らのような生活と文化を築き、自らとその社会を発展させていた。

 人類という知的生命体が消えた以上、この人型機械生命体が後継者として地球文明を引き継いでいた。

  



 セリスに褒められたギリー。彼女みたいな表情は出せないが、その様子は先生に褒められた幼い子供のようにとても嬉しそうだった。


「やった! これで俺も一人前ってことだ!」


「……喜んでいる所を悪いけど、一旦落ち着こうか」


 しかしセリスははしゃいでいるギリーをいさめた。


「確かにギリーは、このモーターラプターの中心制御装置のある頭を破壊して動かなくした。うんうん、さすがだ。けど……」


 彼女は倒れたバイク型機械生物、モーターラプターに目を移す。相変わらず地面に倒れたままだ。

 だが……!

 突然、ギギギと音を立てその身体、尖った腕と脚部が動き出した。

 そして自らで起き上がると、もはや一部しか残っていない崩れた頭部を二人に向けた。


「機械生物の中にはああして中心制御装置が破壊されても、予備制御装置が働いて再起動する個体もいる。

 さてと……もう一度やり直しだ」


 頭部は壊れて機能していないが、胴体にもセンサーはあるらしい。モーターラプターは自らを攻撃した存在を捉え全力で向かって来る。



「うっ、うわぁぁっ!」


 接近して来る金属の怪物、それに怯えたギリーは狙撃銃で何発も放つ。しかし怯えて狙いすらつけていない狙撃銃では一発も当たらない。

 距離は数秒も経たないうちに縮まり、すぐに数メートルもない距離となった。


「……仕方ないな、少し借りるよ」


 セリスは隣のギリーから狙撃銃を奪う。

 もはや目と鼻の先におり腕を広げて襲いかかるモーターラプター。そのむき出しな胸部中央に狙いをつけて、彼女は銃の引き金を引いた。

 元来遠距離から使用する狙撃銃、その高加速で高威力な弾丸を至近距離で食らった胸部は、予備制御装置のある背部もろとも吹き飛んだ。




 身体の中央に空洞が開いた機械生物は、襲い掛かる体勢のまま固まり後ろに力なく倒れた。

 狙撃銃をギリーへと返しセリスは機械生物の残骸を眺めて、残念そうにため息をついた。


「はぁ……、中身はボロボロ、回収して利用できるのはあまり残っていない。そしてギリー、そんな様子じゃ一人前にはまだまだ遠いぞ」


「ううっ……」


 彼女からの言葉にギリーはしょげている。

 すると────そんな時。セリスは上から何か観察するような視線を感じた。

 野生の動物や機械生物は、余程の事がない限りそんな視線を向けることは無い。視線を感じたのはこの廃墟群で一番高い塔の頂上からだ。



 彼女は塔に目を向けるもそこには誰もいない。

 ただの気のせいだったのか……セリスは忘れることにした。

 そして、落ち込むギリーの大きな肩を慰めるようにセリスはポンポンと叩く。


「また次に気を付ければいい。そう落ち込まずに、精進に励めばいいだけさ」


 しかし、そんな励ましも彼はほとんど聞いていなかった。


「けど、獲物がこれだけじゃみんなは満足しないだろうな。ギリーは少しここで待っていてくれ、私は、新しく別の獲物でも探すさ」


 だがギリーは首を横に振った。


「その必要はないぜ。今度こそ…………ちゃんと仕留めてみせる!」


 そう言って彼は新たに弾丸を装填し狙撃銃を構えて狙いを定める。

 狙う相手は──遠くを闊歩する重機型の巨大機械生物だ。


「おい待て! あれは……!」


「見ていてくれ。こんなに鈍いんだ、例えさっきみたいに再起動しても今度は近づく前にまた倒してやるぜ!」


 セリスの静止を聞かず、ギリーは重機型機械生物の頭を狙い狙撃銃で撃つ。

 今度の弾丸は頭部に命中、爆発を引き起こした

 弾丸は先ほどよりも強力な炸裂弾。例えあれ程大きくても、十分に効果があると考えていた。


「よしっ! やったぜ!」


 しかし──




 煙が晴れて見えるようになるとその頭部は外殻装甲がいくらか剥がれ、下の骨格部が僅かに見えてはいるが、破壊には程遠い。


「だから待てと言ったのに! あれはギガノユンボ、大人が数人がかりでも危険な機械生物だ。そんな武器の火力で相手になるものか!」


「け、けど! 傷は少しでも与えているし、あんなに動きが遅いなら……」


「……馬鹿っ!」


 頭部左側面の溝を走る五つの光点、つまり機械生物ギガノユンボの小型アイセンサーが一点に集中し、ギリーに目を付けた。


「くそっ!」


 そう吐き捨てて彼は再度狙撃銃を構えて放つ。銃弾は何発も頭部に当たるも、やはり破壊には至らない。

 何度も撃つうちに、あっと言う間に狙撃銃の弾が尽きた。

 急いでギリーは銃弾の装填をしようとした。が…………。



 ギガノユンボは、その後部に付属するクレーンを大きく振り回した。

 クレーンから銀色のケーブルの軌跡を空中に描き、鋭く重いフックが宙を裂く。


「ギリー! 危ない!」


 危険を察したセリスはギリーを突き飛ばした。

 ギリーも、そして彼女自身も全体重をかけて突き飛ばしたせいで、揃って地面に倒れた。それと同時に二人が立っていた場所をケーブルが横へと薙ぎ払い、フックは後ろに建っていた廃墟の壁を粉砕する。

 唯一の武器であった狙撃銃は飛んできたケーブルにもろにぶつかり、見事に両断されていた。

 真っ二つになった銃を見てセリスとギリーは寒気を覚える。一歩間違えれば……両断されていたのは自分達だったかもしれない。


「これで分かっただろ。ああなった以上、もう手が付けられない。とにかく……急いで逃げるぞ」


 セリスの言葉に彼はうなづくと、二人は起き上がりこの場所から離れようと駆ける。

 同じく機械体である彼らはかつて存在した人間のもの以上に、身体能力は高い。

 後ろをギガノユンボが追いかけるが、足が遅く互いの距離はあっという間に遠のいて行く。ギリーが振り返るとその影は小さくなっていた。




「はっ! ここまで来れば、もう追って来ないだろ!」


「いや…………よく見てみろ」


 彼はアイセンサーの精度を上げて目を凝らすとギガノユンボの脚部が四足とも変形し、頑丈な大型タイヤが展開しているのが見える。 

 そして脚部のタイヤを激しい音を立てて回転し出すと、セリス達へと真っ直ぐ疾走して来た。


「……ひいっ! 冗談かよ!」


 ついにギリーは悲鳴を上げた。


「怖がる暇があるなら足を動かせ! 潰されたくないだろう!」


 セリスは彼に叱責する。

 ギガノユンボの速度はすぐに二人のスピードを凌駕し、大質量が高速で走る。盛大な地響きとともに迫って来た。


「けどっ、どうするんだよ! こんなのすぐに追いつかれちまうぜ!」


「何、対策は出来ている。あの図体でこの速さだ……、すぐに止まったり旋回するなんて器用な真似は無理だ。

 いいかギリー、とにかく可能な限り距離を縮めさせてやれ。そして右でも左でもいい、とにかく曲がってデカブツの進行方向から離れれば、簡単に巻けるはずだ。

 どうだ分かったか、分かったら返事をしろ!」


 返事を言葉にする余裕もないギリーは、ただこくこくと頷く。



 瞬く間に接近してくるギガノユンボ。追いつかれるのも時間の問題だ。


「あの先の脇道が見えるか。私が三つ数えるから、数え終わったらすぐにその脇道へと避けろ」


 セリスの言葉にギリーは再び頷く。


「よし、なら三……二……一……」


 そう言うと同時に二人は脇道へと曲がった。セリスは何とかたどり着き、あの機械の化け物の進行方向から逃れた。

 しかし……ギリーは。 


「うわっ!」


 セリスは突然、後ろからそんな叫び声を聞いた。振り返るとギリーが転んで地面に倒れているのが見える。


「……っ! ギリー!」


 ギガノユンボはすぐそこまで迫り、助けに行こうにも間に合わない。

 彼女は思わず顔をそらした。そしてすぐに…………大きな、金属がぐしゃりと潰れる音がする。





 

 あれから周囲の状況は嘘のように静かになった。


「すまない、ギリー……助けられなくて」


 仲間を見捨てた、強い罪悪感を感じながらセリスはそらしていた顔を、再び前に向けた。

 するとそこには……。


「はぁ……、はぁ……」


 見るとギリーは地面に倒れたままではあるが、全くの無事だった。

 そして彼の前にいたギガノユンボは────上から落ちて来たのか、それと同じくらいの大きさの瓦礫で押しつぶされ機能停止している。

 ギリーは振り返りセリスの顔を見ると、力ない笑い声を上げた。


「やぁセリス。はははは……とても運が良かったみたいだ、突然あそこの廃墟から

瓦礫があいつに落ちて来て……。でなければ…………今頃」


 本当にギリーの言う通りだった。

 しかし……こんなに大きな瓦礫、タイミングよく自然に落ちてきたのか。それとも……。




「何とか上手く助かったみたいだね。うんうん──僕も嬉しいよ」


 さきほど瓦礫が落ちてきた廃墟、そこから誰かの声が聞こえた。

 声は明るく鈴の音ように透き通った音色だった。


「……誰!」


 セリス達は上を見上げる。


「ここに来てようやく誰かに出会えたのに、そう言われるなんて僕は悲しいな。これでも命の恩人なんだよ?」


 声はカラカラと心地良い響きを立てて笑う。


「けど──よく考えれば、そう思うのも無理ないか。いいよ。僕もしばらく一人でさ迷っていて少し人恋しく思っていたんだ。だから特別に、姿を見せるとしようかな。…………とうっ!」


 威勢のいい掛け声とともに、高い廃墟の上から何者かが跳躍する。

 空中でクルリと一回転、見事な着地を機械生物の残骸の上に決めた。


「……しゅたっ! 我ながら見事な着地じゃないか。そうは思わない?」



 そこに立っていたのは少女とも少年とも定かではない容姿の、銀髪の美しい異邦人だった。

 背丈はやや小さく、高身長のセリスと比べればその差は目立ち、外見年齢も彼女より低く見える。

 首元には赤いマフラーを身に着け、白い半袖の上着に同じく白い半ズボン、その袖の先からは、健康な肌を覗かせている。


「なっ! お前は一体誰だ!? 見たことのない姿だがもしかして余所者か?」


 その異邦人はギリー、セリスを交互に眺め、興味深々な様子を見せる。


「ふむ、なかなかの驚きようじゃないか、君。とても感情豊かで僕は好きだよ」


 丁寧だが、心なしか上からの物言いをする異邦人にギリーは強い反感を覚える。


「……何なんだよ! いきなり現れてその言い草は!? それに俺は君じゃない、ギリーって名前もちゃんとあるんだ!」


「おっと、これは失礼したね。それじゃ改めてよろしく、ギリー」


 悪気はなさそうだが何だか独特なペースに、さすがのギリーは反感を通り越して呆れた様子だ。


「ちょっと変な様子みたいだけど、これでギリーについては分かったかな。さてと次は……君かな、お嬢さん」


 異邦人はそう言い、セリスに向けてニコッと微笑む。


「……私にか?」


「その通り。良ければ名前を聞かせてくれないかな?」


 ──いきなり会ったばかりなのに、随分と失礼な──


 内心セリスはそんな事を思ったが、目の前の謎の異邦人の正体が気になった彼女は、ここは素直に答えることにした。


「……セリスだ」


「セリス、いい名前じゃないか。ふふっ、しばらく辺りをさ迷ったけど、ようやく人と出会えたよ」


「──だが、そう言うお前こそ一体何者だ? 様子から見ると、この近くの者ではないな」


 そんな風に戸惑う、セリスの問いに異邦人は自信たっぷりに答える。


「僕の名前はエクス。…………かつてこの地球に存在した、人間さ」


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