第十七話 予期せぬ再会
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キャラバン車両は廃墟の大通りを走って進む。
こんな風な大通りは廃墟に数多くあるが、今通っているこの通りは車両が通り廃墟群から出れるよう、機械人により整備されていた道だ。
……当然機械生物に荒らされる事も多く、この道を守るのもギース率いる防衛隊の仕事。そして荒らされた道路の補修は防衛隊の属する、整備係の仕事になる。
道路の両側には、高層の廃墟が立ち並ぶ。
植物に覆われ廃墟は新緑色に染まり、風に吹かれ木々や葉の騒めきが聞こえる。
そして道には武器を構え巡回している防衛隊のメンバーがちらほらといた。
──お仕事、ご苦労様……って所だね──
大型荷物が載せられた四番車両の真上で、エクスは外の景色を眺める。
ゆっくりと流れて行く景色、見ていると気分が落ち着く感じである。
──ディーゴさんの言う通り、外を見るには、実にいい場所だ──
見ると上のエクスに気がついたのか、防衛隊の一人が手を振っていた。
エクスもにこっと笑い同じく手を振りかえす。
機械生物が襲撃する様子はなかった。おそらくほぼ毎日のように警備されている、そのせいだろうか。
しばらく走った末、キャラバン車両はようやく長く続いた廃墟から抜け出した。廃墟の先に続くのは、所々草木が生い茂る荒野地帯。後ろを振り返るとそこには先ほどまでいた廃墟の群れが、まるで壁のようにそびえ立っているのが見えた。
再びエクスは前を見ると、広がる大地は廃墟よりももっと広大で地平線の先は見渡せない。
それから更に時は経ったが、景色は相変わらずの荒野……。発った廃墟の姿はすでに見えなくなっていた。
殆ど何もない場所、これだとしばらくはこの景色が続きそうだ。
──それじゃあ、もう戻ろうかな。ベッドも割り当てられていたし、ちょっと仮眠を取るのだっていいかもしれないし──
ぐっと背伸びをしてエクスは立ち上がると、荷台から降りていく。
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再び二番車両へと戻ると、さっきよりも多くの機械人が両側のベッドで横になっていた。
──考える事は彼らでも同じか。たしか僕のベッドは……この辺りだったはず──
さきほどディーゴに言われた場所に、まずは武器などの荷物をベッドに放り投げた。
……だが。
「ふぎゃっ!!」
するとその場所から誰かの叫び声が聞こえて来た。
──あっ、そう言えば……ベッドは二人用だって言ってたっけ──
その事を、すっかり忘れていたエクス。そしてベッドからは明らかに怒った様子の、機械人の青年が顔を出す。
「一体何のつもりだよ! こんな物を上から……」
強い口調でかなり怒っている青年だったが、その正体がエクスだと分かると、一瞬固まる。
「お前は……どうして、ここに」
と、次の瞬間、彼はエクスを指さして叫んだ。
「エクス! よくも、この僕の前に顔を出せたな! お前のせいで僕は──!」
辺りの機械人達も、一体何事かと反応し視線を向ける。
「今のは本当に悪かったよ、つい人がいることに気が付かなかったんだ。えっと、あなたは誰かな?」
さっき荷物を投げた事が原因だと感じたエクスが謝るも、彼の怒りに油を注いだみたいだ。
青年はベッドから降りるとエクスにつかみ掛かって言った。
「まさか僕の事……忘れたのかよ? 俺はお前と決闘したクラインだ! お前に負けたせいで狩猟隊の副隊長から、集落の雑用をするはめになったってのに……!」
「おい! お前たち! 一体そこで何している!」
恐らく機械人の一人が報告したのだろう。キャラバン隊隊長のガインと、副隊長のディーゴが現れた。
「誰かと思えばお前か、エクス。先ほど集落から出たばかりだと言うのにトラブルを起こしおって。……やはりお前は問題の種だな」
ガインはエクスに気づき苦々しげに毒づく。
確かに、この場合トラブルを引き起こしたのはエクスの不注意が原因だ。責められても文句は言えない。
「ディーゴ、エクスは集落へと置いていくべきじゃないかね? この先また問題を起こされてもしたら、かなわん」
ガインは明らかに気に入ってはいない様子だ。
また、この言葉を聞きクラインはふふんと、勝ち誇った表情だ。
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ディーゴもエクス、そしてクラインの二人を見て、丁度その場にいた機械人からも状況の確認を取る。
そしてその上で意見する。
「確かに原因はエクス殿の不注意みたいではある。だが、それに対するクライン殿の怒りも尋常ではないとみた。
聞いた話では以前二人の間には因縁があるそうだ。だとするなら、狩猟隊から補充人員を選んだ我々にも責任があるのではないか?
元々人員も少ない中、両者とも腕は確かと吾輩は見ている。だが……」
ディーゴは少し思案を巡らした後、こんな事を言った。
「二人に因縁があるとなると、このままでは差しさわりがあるのも事実。それに貴殿らはキャラバン隊の新入りだ。出来るなら改めて護衛としての腕も見たいとも考えていた。
──そこで、吾輩に一つ案がある」




