表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/58

第十七話 予期せぬ再会



 ────


 キャラバン車両は廃墟の大通りを走って進む。

 こんな風な大通りは廃墟に数多くあるが、今通っているこの通りは車両が通り廃墟群から出れるよう、機械人により整備されていた道だ。

 ……当然機械生物に荒らされる事も多く、この道を守るのもギース率いる防衛隊の仕事。そして荒らされた道路の補修は防衛隊の属する、整備係の仕事になる。

 


 道路の両側には、高層の廃墟が立ち並ぶ。

 植物に覆われ廃墟は新緑色に染まり、風に吹かれ木々や葉の騒めきが聞こえる。

 そして道には武器を構え巡回している防衛隊のメンバーがちらほらといた。

 

 ──お仕事、ご苦労様……って所だね──


 大型荷物が載せられた四番車両の真上で、エクスは外の景色を眺める。

 ゆっくりと流れて行く景色、見ていると気分が落ち着く感じである。


 ──ディーゴさんの言う通り、外を見るには、実にいい場所だ──


 見ると上のエクスに気がついたのか、防衛隊の一人が手を振っていた。

 エクスもにこっと笑い同じく手を振りかえす。




 機械生物が襲撃する様子はなかった。おそらくほぼ毎日のように警備されている、そのせいだろうか。

 しばらく走った末、キャラバン車両はようやく長く続いた廃墟から抜け出した。廃墟の先に続くのは、所々草木が生い茂る荒野地帯。後ろを振り返るとそこには先ほどまでいた廃墟の群れが、まるで壁のようにそびえ立っているのが見えた。

 再びエクスは前を見ると、広がる大地は廃墟よりももっと広大で地平線の先は見渡せない。



 それから更に時は経ったが、景色は相変わらずの荒野……。発った廃墟の姿はすでに見えなくなっていた。 

 殆ど何もない場所、これだとしばらくはこの景色が続きそうだ。


 ──それじゃあ、もう戻ろうかな。ベッドも割り当てられていたし、ちょっと仮眠を取るのだっていいかもしれないし──


 ぐっと背伸びをしてエクスは立ち上がると、荷台から降りていく。





 ────

 再び二番車両へと戻ると、さっきよりも多くの機械人が両側のベッドで横になっていた。


 ──考える事は彼らでも同じか。たしか僕のベッドは……この辺りだったはず──


 さきほどディーゴに言われた場所に、まずは武器などの荷物をベッドに放り投げた。

 ……だが。


「ふぎゃっ!!」


 するとその場所から誰かの叫び声が聞こえて来た。


 ──あっ、そう言えば……ベッドは二人用だって言ってたっけ──

 

 その事を、すっかり忘れていたエクス。そしてベッドからは明らかに怒った様子の、機械人の青年が顔を出す。


「一体何のつもりだよ! こんな物を上から……」


 強い口調でかなり怒っている青年だったが、その正体がエクスだと分かると、一瞬固まる。


「お前は……どうして、ここに」


 と、次の瞬間、彼はエクスを指さして叫んだ。


「エクス! よくも、この僕の前に顔を出せたな! お前のせいで僕は──!」


 辺りの機械人達も、一体何事かと反応し視線を向ける。


「今のは本当に悪かったよ、つい人がいることに気が付かなかったんだ。えっと、あなたは誰かな?」


 さっき荷物を投げた事が原因だと感じたエクスが謝るも、彼の怒りに油を注いだみたいだ。

 青年はベッドから降りるとエクスにつかみ掛かって言った。


「まさか僕の事……忘れたのかよ? 俺はお前と決闘したクラインだ! お前に負けたせいで狩猟隊の副隊長から、集落の雑用をするはめになったってのに……!」




「おい! お前たち! 一体そこで何している!」


 恐らく機械人の一人が報告したのだろう。キャラバン隊隊長のガインと、副隊長のディーゴが現れた。


「誰かと思えばお前か、エクス。先ほど集落から出たばかりだと言うのにトラブルを起こしおって。……やはりお前は問題の種だな」


 ガインはエクスに気づき苦々しげに毒づく。

 確かに、この場合トラブルを引き起こしたのはエクスの不注意が原因だ。責められても文句は言えない。


「ディーゴ、エクスは集落へと置いていくべきじゃないかね? この先また問題を起こされてもしたら、かなわん」


 ガインは明らかに気に入ってはいない様子だ。

 また、この言葉を聞きクラインはふふんと、勝ち誇った表情だ。




 ────


 ディーゴもエクス、そしてクラインの二人を見て、丁度その場にいた機械人からも状況の確認を取る。

 そしてその上で意見する。


「確かに原因はエクス殿の不注意みたいではある。だが、それに対するクライン殿の怒りも尋常ではないとみた。

 聞いた話では以前二人の間には因縁があるそうだ。だとするなら、狩猟隊から補充人員を選んだ我々にも責任があるのではないか? 

 元々人員も少ない中、両者とも腕は確かと吾輩は見ている。だが……」


 ディーゴは少し思案を巡らした後、こんな事を言った。


「二人に因縁があるとなると、このままでは差しさわりがあるのも事実。それに貴殿らはキャラバン隊の新入りだ。出来るなら改めて護衛としての腕も見たいとも考えていた。

 ──そこで、吾輩に一つ案がある」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ