人類の終わりと、物語の始まり
遥か未来、人類文明は機械の発達の末に滅亡した。
コンピューター、ロボット技術の発展は人類文明の完全な機械化をもたらし、人間は彼らの主人として繁栄と安寧を謳歌していた。
労働も生産も、社会や流通の管理も、そして娯楽の提供まで全て機械が行い、もはや人間は機械の世話さえ受けていれば、何もする必要もなく幸福に暮らせた。
それはまるで母親に身を任せる赤子のように……。
しかし、その代償はあまりに大きかった。
機械によるユートピアが誕生してから、約一世紀の間は問題はなく人類は地球上で繁栄を築いていた。
だが、それ以降の世代から出生率の大規模な低下が、急速に人類全体を襲った。
やがてその出生率は0.05にまで低下。男女20組のペアにつき、新生児が一人生まれるかどうかだ。
新種のウイルスによるものか、人類と言う種そのものに限界が来たのか、もしくは──安寧の極致に達した社会の中で生存能力と繁殖力と言った生物全てが持つ生命力が失われたのか……、原因は分からないままである。
もはや長年にわたり惰眠を貪っていた人類にはその問題を解決する力も、意欲さえも殆ど残っていなかった。
自らの築き上げたユートピアの中で人類は緩やかに穏やかに、そして平穏に地球から消え去った。
はずだったが────
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時は流れ、人類が滅がて更に千年後……。長い年月が経った地球はその環境も大きく変化していた。
かつては木や草が広がる広大な平原だったこの場所も、今では全てが枯れて砂漠と化している。
あるのはサボテンなどの乾燥に強い植物、そしていくつかの昆虫やトカゲのみだ。
時間は夜、人工的な明りのないこの場所では空に星空がまばゆく輝いていた。無数の星々が瞬く空、いくつもの星座や天の川もはっきりと分かる。
──最も、もはやそれすら覚えている存在がいるのかどうか……。
そんな夜空の下で、一匹のトカゲが砂漠の大地を歩いている。
おそらくはエサを探しているのだろうが、時々歩いては空を見上げる仕草はさながら空の星を眺めているかのようだ。
するとトカゲは上を見上げたまま、ふと立ち止まる。視線の先には無数の星々の中でも一際光り輝く星があった。
一等星のごとく、強い輝きを見せる星。輝きは段々と強く大きくなる。そして…………。
一つの輝く『流れ星』が、地上へと落ちた。