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作者: 西川 笑里

「おっはよー」

 私が勢いよく教室のドアを開けて自分の席に座ると、親友のキョウコが私に近寄ってきた。

 ——ねえ、ねえ、昨日の松本君見た?

「ねえ、ねえ、昨日の松本君見た?」

 松本君は、松本恭太郎君のことで、毎週水曜日のドラマの主役の子だ。

「見たよ」

 ——やっぱりかっこいいよねえ……

「やっぱりかっこいいよねえ……」

「あんた、本当に好きよね、彼のこと」

 ——だって、マジかっこいいじゃん

「だって、マジかっこいいじゃん」


 私はキョウコが次に何を言うのか知っている。この会話をいったいどれくらい繰り返したのか、実は覚えていない。もうどれくらい前のことだったか、忘れてしまった。

 私は翌日超苦手な数学のテストがある日の夜祈ったのだ。お願いだから、明日が来ないでくださいと——

 翌日目を覚ますと、私は「昨日」に帰っていた。いや、正確には今日も昨日と同じ今日を繰り返しているのだ。誰かわかるだろうか。


 目を覚ますと繰り返される昨日という今日。私は毎日、同じ毎日である今日を過ごしている。キョウコが話す言葉ひとつひとつ、事前に知っている。だって昨日も同じ会話をしたのだから当たり前だ。昨日が今日となって再び繰り返されるのだ。そして嫌いな試験が来ない楽しい毎日だ。それもいい。


 だけど、ひとつだけ困ったことに最近になって気がついた。私が1日を過ごす度に、私だけが1日ずつ歳をとっているらしい。なぜなら、「私だけ」が1日過ぎた後にみんなが歳をとる前の昨日の学校へタイムスリップしているのだ。


 鏡の中の私の顔にシワができている。そして私のセーラー服姿が最近コスプレっぽくなってきた。私が毎日少しずつ歳をとっていることに、友達は気がついているのだろうか。

 そういえば私って、本当ならいったい何歳になってるんだっけ。

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