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妄想の帝国

妄想の帝国 その55 大逆転!ニホン国総理指名選挙の舞台裏

作者: 天城冴

与党ジコウ党総裁の座を降りたニホン国総理は自動的に総理も辞任。ジコウ党総裁選後、新総理は新総裁になるはずと思いきや…

ユーラシア大陸の東の島国、ニホン国では新型肺炎ウイルス対策他その他もろもろの失敗により、総理辞任とあいなった。与党トップが慣習的に総理となっていたこの国であるが、今回はちと事情が違っていた。

「は?国会開いて総理を決めろというのか?野党どもが」

「そ、それがその幹事長、わがジコウ党の地方議員からも要請がありまして…」

「はい?通例として、与党のトップ、すなわち今はわがジコウ党のトップである総裁がなっとるじゃないか。だいたい、前ガース総理が総理を辞任することになったのは、次期総裁を決める選挙に出馬をしないと表明したから自動的に辞任したわけで。となると次期総裁が自動的に総裁になるわけなのだが」

「そ、そのう、党員や地方議員の間からは“こんなに世の中が混乱してるなか、国会を開かないで決めていいのか”とか、“党員の意向より中央のわけのわからん忖度選挙で選ばれた総裁はちょっと”と疑問視する声も」

「ははは、何をいってるんだ、これが慣例だ、いつものやり方なんだし、別にわざわざ」

「そ、そうおっしゃられましても、“だいたい野党だけでも1/4以上の国会開催要求があるというんだろう、これで国会を開かないと憲法違反、国の法律に国会議員が従わないとは何事か!”という珍しく…いやまっとうな意見まで有力支援者から出たとかで」

「ははは、お堅い理屈を言う奴もでてきたのか。ウイルスが流行ったせいで少しは賢くなったということか、面倒だが。ま、確かに開会しないと違反ではあるし、国会開会を新総裁に進言するか。ジコウ党総裁選挙も終え、選挙に向けた体制も万全だし、支障もないだろう」

「で、では、すぐに手配を」


『第100代ニホン国総理大臣は…選挙の結果、野党、共産ニッポン、シイノ委員長に決定しました』

と淡々とだが、顔を引きつらせて読み上げる衆議院議長。ジコウ党重鎮たちも青くなっている。ジコウ党新総裁はワナワナと震え、今にも頭から湯気をだしそうな雰囲気。議長に詰め寄るとまくしたてる副総理を必死で抑える両側にいた議員たち。

「ど、どーいうことだ!ま、まさか、ジコウ党で、総裁に入れなかった議員がいたというのか!」

「そのう、し、支援団体が…」

「ま、まさか、お前も」

「も、申し訳ありません幹事長。なにしろ、ジコウ党では医療は崩壊する、頼みの綱の経済キャンペーンも次期外し、対象が滅茶苦茶で経済的に逆効果。ワクチンもまともに準備できないとは、ジコウ党では殺されると、若者やら女性らを中心につきあげがー」

「お、女、子供が、地方の長たちは」

「その、新型肺炎ウイルスが怖くてロクに外出できないので嫁や子供に頼りまくりで頭が上がらずいいなりになったとかとか、外出した猛者もワクチン打ったからとマスク外して外出したうえ感染し家族特に妻や子供に大目玉、看病もしてもらえず立場最弱に転げ落ちたとか、中には自分がまき散らして家族を感染させてしまい村八分ならぬ家八分、軟禁状態になりスマホも取り上げられたとかいう方が続出で」

「ふ、婦人部は?ソンカ派の婦人部がいただろう!」

「そのう、無駄に物価は上がるうえ、国際大運動大会に子供を無理に観戦させようとしたのでかなり支持が下がりまして。子供の命を軽視するとはどういうことだと、老若問わず母及び母予備軍らがそっぽをむき、それに引きずられ夫たちも今回ばかりはと」

「こ、今回とは」

「ジコウ党新総裁が総理なら、選挙応援はしないっていわれたんですー。し、しかも、ツィッターデモも何回も起こされまして、ジコウ党議員の業績というか国会でやったことが逐一さらされまして、そのう」

「ぎょ、業績って何かやったっけか?」

「な、何もやってないのが問題なんですー。“お前はロクな質問も、政策の提案もしてないだろう、おまけに国際大運動大会に反対しなかっただろ、あのインボイスにも賛成か”とか“給付金は国民一人10万円なのに、ジコウ党議員は政党助成金でふんだんに金をもらってるじゃないか、それがお前らのやり方か!俺たちの票で当選したくせに何様だ”とか電話でも、ファックスでも、メールでも、SNSでも言われまして…」

「く、くう、野党、リベラル側の策略か!ま、まあだいたい本当といえば、そうだから誹謗中傷とは言い難いし…。って我々もデジタル庁発足したんだし、そのSNSで対抗とか」

「その、総裁候補に新総裁も、反対意見はブロックとか、そういう意見の方は個人情報開示してやるなどと脅すというか、過激というか反社というか、そういう方々ばかりなんで、その。自分たちが言いたいことをいい、すり寄り賛成意見に耳を貸さないと、そっぽをむかれてます。むしろ、副総理候補とされるレイワンのヤマダノ代表などは何時間もかけて丁寧に質問に答えられるので、ジコウ党から鞍替えしたという方も」

「あ、あれが副総理!た、確かに国会議員でなくても閣僚入りはできるが、最大野党ミンミン党のエダノンはどうした、だいたいなんで奴にいれなかったんだ」

「いまいち人気が、それならいっそ意表をついてシイノさんのほうがインパクトもありますし。ヤマダノさんのウイルス収束までのひと月国民20万給付ほかの手厚い対策が、かなり評判良くて、シイノさんも同意して協力がなりたったそうで。まあエダノンさんも主要ポストのいくつかはミンミン党がするってことで話し合いがついたらしくて。エダノンさんかヤマダノさんのどちらかが副総理でどちらかが官房長官になる予想で」

「そ、そんなとこまで…。し、しかし、お前といい、そんなことぐらいで」

「そ、そうおっしゃいますが、次の議員の椅子がかかってますし、落選した場合の生活がー。な、なにしろ地元ではジコウ党を懲らしめないととの声が出始めたうえ、票田の経済界も、その」

「だ、大企業が、まさか」

「いえ、中小商工会から、“ジコウ党のままでは、消費税課税が厳しく事務処理が困難なインボイス制度が強行される。新型肺炎ウイルスが蔓延しようが、ニホン経済がどん底になろうがおかまいなし、中小零細個人事業は絶滅するんだ、財務大臣のアトウダなんて、まるっきり俺らのことを考えてない!いつ新型肺炎ウイルスが収束したっていうんだ、あのジジィいつまで居座るんだ、ジコウ党全員落とさないと!”と、の声まででて、会頭がついに共産系経済団体と共闘すると宣言を」

「ア、アトウダさんが余計なこというから!し、しかし大企業の票田はまだ」

「こ、このリモートワークで、結束が。なにしろ御用組合の幹部連中はITにうとくズームだのなんだのは若い連中だの女性秘書頼みで、彼らのなんといいますかサボタージュにより、会合が開けず、個別に電話かファックス。そのファックスさえ使えない幹部もいまして。そもそも誰を応援すべきかという情報すら滞りがちです」

「日頃秘書やら使い走りの連中をきちんと扱ってないといざというときに、こういうことになるのか。いや人は大事…って、パーティはどうした」

「三密禁止、5人以上の会食禁止ということになってますし。その、政治資金パーティは不要不急ではないということにしましたが、実は各地でクラスターが…。一応伏せてはおりますが、参加者やバイトからSNSなどでばらされてしまい、“ジコウ党会食は危険”といわれまして」

「そ、そんなことになっていたのか。ジコウ党のネット工作部隊はどうしたんだ!」

「それが、その彼らもウイルスに感染し、自宅療養になったものが少なくなくて。中にはその亡くなった方も。生き残った者も“ジコウ党じゃ殺される、いくら金があっても命が大事”と工作部隊をやめたり、なかにはリベラルサイドの救済団体やら共産ニッポン機関紙レッドフラッグの配達員に助けだされて回復し、鞍替えして今までのことを洗いざらいばらして協力者になったものまで」

「きいいい、上も下も右も左もたてつきおって!お前も含め裏切り者は許さんぞ、次の選挙での公認はないと…」

「あ、これ離党届です。その、私、新党新生ジコウ党に行くことがきまりまして、地元の肩からの後押しもありまして、各種届け出がすめば、あとはすんなりいきそうです。あ、党首はオザワンさんで、もう結党の届け出はだしてあるそうですし」

「ぐうう、ま、まさか、オザワン、シイノが共闘したのか!…ヤマダノはもともとオザワンところにいたからか、あいつが橋渡しか。優柔不断のいい子ちゃんエダノンまで説得するとは、黒幕はオザワンか、それともヤマダノか」

「どちらでもいいではありませんか。とりあえず野党共闘はうまくいったし、私たち新生ジコウ党組はひとまず安泰ですよ、次は選挙で。あ、幹事長は今回で引退でしたね。息子さんがでられるんですねえ、頑張ってくださいね。地元の知事はじめジコウ党政策にいろいろ言いたい方ばかりですけど」

「ギャー、それを言うか!せ、せっかく総裁を変えて選挙の体制を整えたと思ったら、総理の座はなくし、与党からも転落…。そ、そんな」

「首をすげかえても、今のジコウ党ではそっぽを向かれるということです。沈む船からはみな逃げますからねえ」

「わー、逃がすかあ」

と幹事長が言った途端!

バッターン

「わー、総裁が倒れた!」

と、大騒ぎ。かくしてジコウ党新総裁は誕生したばかりで、すでにレームダックという暗雲のスタート。

 それと裏腹に

「新総理誕生、これでニホンも救われる」

「ばんざーい」

との声も野党および新生ジコウ党鞍替え予備群は大歓声。が、選ばれた新総理シイノ氏は冷静に

「みなさん、お静かに、ジコウ党新総裁が倒れられました。早く救急車を」

「シイノ委員長、今は新型肺炎ウイルスの蔓延で首都では救急車が不足してます、とりあえず私が」

「おお、コイケダさん、よろしく」

と、ジコウ党新総裁のそばにいくコイケダ議員。

その様子をそばでみていたジコウ党幹事長は

「あああ、敵方のコイケダ議員に診てもらうとは、なんて情けない。ううう、い、医療崩壊も、支援者にそっぽをむかれるのも自業自得とはいえ、せっかく総裁選を終えたのにー、ジコウ党はどうなってしまうんだー」

と国民そっちのけの自分らの行いを棚に上げて嘆いていた。


どこぞの国では緊急事態といいながら、与党のトップ選挙で報道一色というわけわからんことになっているようですが、総裁イコール総理ってどうなんでしょうね。指名選挙はかならず所属党のトップに票をいれなければならないという法律はないようですので、よーくあとあとまで考えていれたほうがよろしいんじゃないですかねえ、議員の椅子の前に家族の命が大事なような気もしますので

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