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探索


ウイルス




このアーケード街は比較的綺麗に保たれていた。シャッターが閉まっている店舗は錆び付いて変色している。


道は薄いベージュのタイルが敷き詰められていてずっと遠く、見える範囲まで舗装されているようだ。

美しく整えられていて、休日であれば親子連れや人で賑わっていただろう。

当時であれば。


アーケードもずっと続いていて天気を気にせずぶらつけるのが素晴らしいと思える。何ヵ所か車道が横切っており、その箇所は途切れている様だが。


左右には様々な店舗が並んでいて、中程には広場が有るようだ。広場も屋根で覆われていてイベントで使われたであろうステージがある。


メインのアーケードを挟みこんで平行に2本の道路も伸びていて、この3本の通りを串刺しにするように何本もの小路があるようだ。


動くものが何も見えないアーケード街の入り口で、ようこそ、と書かれたアーチをボーッと見つめる人影があった。


「駄目ね。何もない…。」


近くの店舗から出てきた女の子が独り言のように吐き捨てた。


「まぁそうだろうね。」


「どうする?一応探して見る?」


「時間はあるしそうしようか。ホテルも有るようだし。」


「…またエッチぃ事考えてる?」


「……まさか。」


ポケットに手を突っ込んだままで目をそらして呟く男を見ながら女の子はごく自然に隣に立ち腕を絡めて見上げてくる。


2人は頭半分ほどの身長差があり見た目は二十歳前後。男の方はジーンズに動きやすそうなTシャツの上に革ジャンを着ている。


女の子の方はピッタリとした身体のラインが出る赤いライダースーツのような服で胸元のジッパーの上を開いて露出させ、黒っぽいスタジャンを着ていた。


拗ねたような表情を見せた女の子だが、直ぐににやけるとしがみついた腕を引っ張って歩きだした。


左右の店を眺めながら通りの真ん中を進んで行く。


不意に左の細い路地から緑色の林檎が転がってくる。ただし大きさは直径50cmほどもあった。


2人は何でもないように歩いていくと、林檎がくるくると回転してからピタッと止まるとパチパチっと目を開いた。ただしその数は無数。表面の殆どを埋め尽くす様に開く目がギョロギョロと動き一斉にこちらを見つめてくる。


子供でなくても夢に見そうな気持ち悪いそれを、しかし2人は表情も変えずに近づいていく。


3m程の距離になるとどうやったのか林檎がジャンプして飛びかかってきた。


男は林檎を眺めながら左手をポケットから出し指を向けると指が伸びて林檎を空中で貫いた。


林檎はぶるっと震えるとドロリと溶け落ちて消えていく。


「この辺りは植物なのかなぁ?」


「そうらしいな。」


2人は探索を続けることにして歩きだした。




1通り探索をしてからホテルに入りベッドに寝転がり天井を見上げていた。


何処に行っても殆ど人が、と言うよりまともな生き物がいない。

こうなったのは10年程前だったか…。


きっかけは突然変異の豚が見付かったこと。その豚は羽が生えていた。


飛べなかったようだが、羽の他に羽毛も有ったらしい。他にも足がなく、蛇のように胴体が長い個体も同じ地域から見付かったりした。


程なく世界中で異常な生き物が産まれ始めた。動物に限らず、植物や魚、人間にさえも広まっていった。変異は新たに産まれた命に留まらず、成体にも及んでいった。


植物の特徴を持つ魚や動物の特徴を持つ人等、その異常な組み合わせは多岐に渡る。次第に狂暴化する個体も増えていき世界は混乱を極めた。


原因はウイルスらしいと分かったものの、何故そんな変異をするのか理解も対処法も分からぬまま既存の種族はほぼ絶滅した。

あとに残ったのは突然変異した個体のみ。今のような状況になったのが1年程前。


自分も変異したが、狂暴化は今のところしてない。今後狂暴化するのかしないのかも不明。


生きてるだけましなのか、生き残ったのが不運なのかも分からない。


変異した当時は悩み、恐怖に駈られたが、意外と慣れてしまった。受け入れたと言ってもいい。受け入れてしまった自分は既に異常なのかとも思ったが、直ぐにどうでも良くなった。


普通の人が居なくなり、死んで数が減っていくと周りの目を気にする必要が無くなった為だ。

そもそも元に戻ったとしたら直ぐに命を落とすだろう。むしろ生きるためには変異を受け入れるしかなかった。


生きる意味が有るのかは解らないが……。




「ともくん、いーよー。」


「あぁ」


シャワーから棗がバスローブに袖を通し半裸で頭を拭きながら出てくる。


棗は半年ほど前立ち寄った街で見かけてから着いてきた。歳はおそらく同じくらいだろう。何があったかは聞いてないが、自分と似たようなもんだろう。


ライフラインは何故かまだ生きている。意外ともつように造られているのか、誰か、または何かが維持してるのかは知らないが。


突然変異した生き物を殺すと結構な割合で小さな光の珠が出る。これが何なのかは不明だが、これを取り込むことで食事がわりになりエネルギーになる様だ。食事が無くなったのは便利ではあるが味気なかった。普通の食事も出来るが、材料がない。自生した果物や野菜などが有れば食べるくらいだ。

空腹感も殆ど感じなくなったのもこの状況だと幸いだった。



「はぁ。さっぱりした。」


バスローブを羽織ってシャワーを出ると棗が抱き付いてくる。未だ半裸のままだ。


「…ん」


甘えた声を出して顔を上げ見つめてくる。ぷにぷにとした柔らかさとさらさらの髪からふんわりといい香りが漂ってくる。


こちらからも抱き締めて軽いキスをする。


「明日は服と珠を補充しつつ、今日見つけた場所に行ってみよう。」


棗は不満そうな顔をする。


「むー。まぁ確かに服は欲しいけど。」


「…棗変わったな…前はあんなに大人しかったのに」


「今のあたしは嫌?」


「…………嫌じゃ無いよ。」


「……何でそんなに間があるの…?」


「……魔がさした」


「…はぁ……何でこんなのに…」


「…好きに生きていーんだぞ?」


「そうしてるつもりだけど…もう少し興味持って?」


「…棗はカワイーなー」


ついでに頭を撫でて見る。


「…はぁ…悔しいけど嬉しい…。くっそぅ…。」


しばらく頭を撫でてから身体を拭いて浴衣を着てベッドに寝転ぶ。明日の事を考えてみる。

今日遠くのビルの屋上に巨大な植物が生えているのが見えた。


生えていると言うよりはデカい肉厚な花が咲いていたと言うべきか。青みがかった色あいが不気味な雰囲気を撒き散らしていた。


恐らくアレが居るだろう。準備はしておかないと、と考えてる内に意識が沈んでいった。




「ともくんおはよー」


「おはよ」


「昨日はともくん直ぐ寝ちゃうから寂しかったよ?」


「眠れなかったの?」


「多分直ぐ寝た」


「…何が寂しかったんだか。」


頭を引き寄せて唇を向けるとむにゅっと自分の唇を押し付けてくる。


「えへへへ~」


嬉しそうににやけながら顔を擦り付けてくる。


「多分アレがいるから準備するよ」


「りょーかーい」


緩い返事をして、身体を擦り寄せてくる。


大丈夫かなホントに。と考えながらも感触を忘れないように意識しておく。



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