陰湿で執拗に頼む
陰湿で執拗に人は誰かを虐めたくなる。
「や、止めてください!勇太くん!」
なんか最近。やたらそんな広告が出てくるせいか、そんな夢の中に入り込んでしまう。
「きゃーーー」
「達也~。お前はどーやら、この林崎って女に気があるみたいだな。お前みたいな陰湿根倉が彼女を作るなんてなー。許されると思ってるのかー」
林崎という女性は両手を縛られ、勇太という男性に首元へナイフを突きつけられる。
学習塾の物置部屋で、男2人に女性1人。何も起きないわけもなく、惨い虐め。……否、たった1人を絶望させるような状況。
男の1人、達也も鈍器で殴られた跡があり、無事ではない体でこんな脅迫をされる。勇太という男の狂気は一般のソレとはかけ離れた異常者。
かつて虐めた者達は、死ぬまで虐められるべきだと、現在に満足できていないような陰湿で執拗な男。
「きゃ~~~~~~」
そして、男二人に関係のない林崎は。
【女にうつつを抜かすなんて、酷いじゃねぇーか!!達也!!】
【ち、違うんだ!!林崎さんは違うんだ!!勇太くんの勘違いだよ!!】
【嘘だ!!お前がイヤらしい目で林崎の胸を見ていたのを、俺の嫉妬だと言うのか!?】
【僕は勇太くんが好きだ!それに嘘偽りはない!!君がいつも僕を虐める時に見せる、妬いている顔に劣情するんだ!】
ぶしゅ~~~~
「ぎゃーーーー!!嫉妬の勇太くん!!思わず、私にナイフで切りつけちゃう!!それを達也くん!そんな卑怯な君もカッコいいと、突撃!!」
「………………」
「………………」
ナイフで身体を刺されていないのに、妄想一つで鼻血を出しながら、我を忘れて
「そんな危ない凶器を使うなんて、お仕置きだ!!達也くんも凶器を出して応戦!勇太くんはそんな行為に嫉妬と戸惑い、興奮と!!お尻を床につけて、怯えてしまう!まさに一転攻勢!!けれども、勇太くん!そんなことを望んでいた心がありましたぁー!」
「………………」
「………………」
人は危機的状況に陥ると精神をやられてしまうというが、……この場合はどうなのだろう。男達2人の方がダメージを受けているような
「お前の事はいつでも忘れない!ちょっと待ってくれっ。俺はこの場で……。みんな、外にいるんだよ。関係に戸惑う勇太のその困った顔が、僕にとっては一番好きな顔なんだ。///っっ……達也ぁぁ!!」
アーーーーッ、そして2人は。
永遠の愛を倉庫で叫び、導き役であるシスターの前で禁断なる愛を宣言するのでありました。
◇ ◇
「朝から良い夢を見ました」
夢の中の夢ある出来事のせいで、鼻血が朝から止まらず会社に来るためタクシーを使ってきた林崎苺。そんな話を聞いていた安西弥生は
「それは大変面白い夢ですね!」
男2人、大惨事なんですけど。
なんで人質だけ良い気分になってるんだよ……。
「たまらなかった。……弱い男も卑怯な男も、どちらも気が合って嫉妬を発端に関係を爆発させ、……ついには禁断な、……通常時ではM男とS男の関係でも、2人きりの時は立場を逆転……そんな2人のご関係を人質という身でありながら、覗き見られるとは至福ナリ」
「そんな話じゃねぇーだろ、たぶん……」
「あ、三矢さん」
腐った妄想女2人に、もうこれ以上広げるなと。三矢正明が話を遮った。
その時、林崎が既視感。
「も、もしかして三矢さん!私と安西に百合展開を求めて、会話に入ってきたと……!?」
「そんな願望を!?」
「さっさと現実に戻ってこーーーい!仕事あるんだぞーー!!」