~小町、風邪を引く~
四季映姫こと私は、現在とある人に片思いしている。そんな私に今、最大のミッションが与えられた。それは、ーおかゆを作ることであるー
事の発端は今日の朝の出来事である。私はいつものように朝起きて、小町を起こしに行った。そこまではいつも通り何も変わらなかった。しかし、ここからが問題だった。私はガラッとドアを開けて、
「小町、いつまで寝てるの!早く起きなさい!」
と言った。しかし彼女はこれでも起きない。ここまでは想定内だった。なので私はいつものように小町の耳に向かって、思いっきり叫ぶつもりだった。しかし、今日は彼女の顔が異常に赤かった。試しに彼女の額に触れてみた。熱かった。とても。間違いかと思って、私は私自身の額と小町の額をくっつけた。確かに熱かった。しかし、それ以上に自分の顔が紅潮していくのが分かった。思った以上に近く、私にとってそれは、とても恥じらいがあるものだった。次に小町の顔を見た瞬間、目が合った。つまり、彼女が起きたということだ。私と彼女の額をくっつけた状態で。あまりにも恥ずかし過ぎて気絶した。数分経つとようやく意識を取り戻した。その時、小町も隣で寝ていた。少し幸せを感じていた。しかし、彼女がどういう状態だったのか思い出し、すぐさま看病をしようとした。バケツに水を入れて、タオルを濡らし、彼女の額に乗せた。彼女はそれに気ずいたのか、目を開けてこちらの方を向いた。
「すみません、四季様。…ゴホッ………。」
「あなたは無理しなくていいのよ。それより何か食べられる?」
「すみません、おかゆくらいしか食べられないです。………ゴホッ、ゴホッ」
「任せなさい!おかゆくらいなら私が作ってあげるわよ!」
そう言って私は台所まで来たのだ。
そして、今に至る。流石に自分でも簡単に料理を作れるものだと思っていた。しかし、現実はそう甘くはなかった。全く持って水の分量が分からなかったのだ。ダメ元で魔理沙に訊いてみたら、
「そんなの水をバァーーって入れて、お米をドサァーーって入れたらできるだろ?」
と、何ともアバウトな説明しか返ってこなかった。
「どうしよう………。小町には、えらそうにあんな事言っちゃったし………。今から『教えて』なんて言えるわけないし……。」
「お困りのようだね。」
ふと、そんな声が聞こえた。恐らく疲れて幻聴が聞こえているのだろう。疲れを取るために寝ようとすると、
「いや、なんで無視するんですか?」
どうやら幻聴ではないらしい。ふと、周りを見た。すると、そこにはメイド姿の銀髪の女性の姿があった。
「えっと………居酒屋咲夜さん?」
「違いますよ!十六夜咲夜ですよ!」
「ああ、あの幼女館のメイド長の。」
「紅魔館ですよ!何ですか『幼女館』って!」
彼女は紅魔館のメイド長の十六夜咲夜さん………らしい。
私はしっかり覚えてないけど。
「で、その十六夜咲夜さんが何の用事かしら?」
「私は紅魔館のメイド長でありながら、『自称』恋愛マスターなのです!」
………絶句した。こんなにも自己アピールが強い人は初めて見た。
「『自称』は大概しょぼい奴が多いって知ってた?」
「ああ~そうなんですか~。じゃなくて、私はそんなにしょぼくないですよ!」
「じゃあ、あなたは何ができるの?」
「それは……………『料理』を教えることですよ!」
その言葉は私をときめかせた。早く小町におかゆを作ってあげたい。その思いが強く、私はプライドを捨て、「『自称』恋愛マスター」に
「お願い!私におかゆの作り方を教えて下さい!」
「是非とも私でよければ。」
こうして「『自称』恋愛マスター」こと十六夜咲夜とのおかゆ作りが始まった。
そして、時間が経つこと3時間。失敗ばかりで、成功などなかった。水の量を入れすぎてシャバシャバになるし、ほっとき過ぎたら普通のご飯になるし、炊飯器自体の中に水が入りすぎて壊れるし、鍋でしたら、思いっきりお米を焦がすし、やっとできたと思ったら、味付けの塩と砂糖を間違えるし。この状態咲夜がいなければどうなっていたのだろう。もしかしたら軽く幻想郷がなくなっていたかもしれない。
「ごめんなさい、咲夜。せっかく手伝ってもらってるのに、失敗ばかりで。」
「気にしないで下さい!過去のことを振り返っても仕方ないですよ!次、成功させましょう!」
そして、それから2時間後。
「………やっと完成した………………。」
喜びより疲れの方が大きかった。
「そうですね…………。私はこれで帰ります。あとは小町さんに渡してあげて下さいね。」
そう言って咲夜は帰って行った。私はその後、こぼさないように、恐る恐る小町に持って行った。
「小町、起きてる?」
「はい……………。」
「ご飯遅くなってごめんね。今食べさせてあげるから。」
「食べさせてくれるんですか!?」
「そ、そりゃ、あなたは病人なんだから……………。」
そう言って私はスプーンでおかゆをすくい、小町の口へと運んでいった。小町は嬉しそうにこっちを向いて、パクッと食べた。
「おいしいですよ、四季様。」
そして、そのまま彼女は寝てしまった。その顔を見ると、とても癒される。とても可愛く、愛くるしい。
「はぁ……………、このまま時が止まったらいいのに………。」
私はそう呟いて彼女の隣ですっと眠りについた。
皆さんどうも、ゆくのりです。相変わらずな小説はいかがでしたか?
最近、寒くなってきましたね。うちは弟が風邪を引いて、「インフルエンザかもしれない!」という、受験生にとって大惨事の状態です。皆様も風邪を引かぬよう、お気をつけ下さい。
Youtubeでの投稿はしばらく出来ないです。何卒ご理解下さい。
訂正・感想等があれば、気兼ねなくコメントして頂けたら幸いです。