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a Lotus thief  作者: 刻埜
番外編
15/15

High-specちゃらんぽらん

これは、まだロータスが世間を賑わす少し前の話。

初めてロータスが新聞に載った日の、近江 飛炎のお話。



         High-specちゃらんぽらん



「う~ん。やっぱり実際見てみないと、確信には至らないな~。」


飛炎の隠れ家、別名仕事部屋二号。

此処は飛炎が如月と共にやっている『何でも屋』の飛炎専用部屋。

部屋のとある一角に何十台と埋め込まれたテレビ画面に、数台のパソコン。何個も置かれている本棚にはぎっしりと色々なファイルが詰められ、三個ほど設置されている机には書類が乱雑に置かれていた。


飛炎の横に置かれた机の一番上に載っているのは、此処一週間の新聞。そのどれもが一面に飾っているのは、先週に起こったとある窃盗事件だった。美術館に飾られていた絵画が狙われたそれは、ご丁寧にも犯人から美術館宛に予告状が出されていた。美術館側は勿論警察へと通報し、犯行当日は厳戒態勢が引かれていた。それなのにも拘らず、狙われた絵画は犯人に盗まれてしまった。

何十人と言う警察を欺き、一切負傷者は出さず、実に鮮やかに犯行を行った。

初めはただ純粋に面白そうだったから色々と調べ始めた。

調べる内‥入手した唯一ロータスが映った映像に、違和感を覚えた。

画像を弄り繰り返し加工して、薄らと輪郭が見えた時、ロータスが自分の大好きな『彼』に似ているような気がした。

しかし、加工の所為で大分画像が粗くなってしまっているから、そう見えるのかとも思い、飛炎は椅子に凭れ掛りながら天を仰ぎ、冒頭の台詞を吐いた。


「実際見るとしたら、次の犯行を待つしかないんだよね~。」


次にロータスが現れるのは一週間後で、隣町。しかも、その日は自分のもう一つの仕事であるモデルとしての撮影が在る日だ。

日中の外で撮影するそれは、一日雨が降らない限り伸びはしないだろう。これは長期戦かなぁ‥と肩を落とした。

しかし、そんな飛炎の気持ちを察してなのか、ロータスが指定したこの日は天候は崩れ、朝から土砂降りの雨が降っていた。マネージャーから撮影が延びたとの連絡を貰い、飛炎はウキウキとロータスが予告状を出した隣町へと向かって行った。

狙われたのはその町の旧家で、水晶(スワロフスキー)があしらわれたペアグラスだった。

旧家に着き、まず一番最初にしたのは家の周りの下見。

配置されている警察に怪しまれないよう、家の周りをグルリと回った。序でに警察の配置ヵ所も頭に叩き込んでいると、一か所不自然にならない程度の『穴』を発見した。きっと、此処からロータスは侵入しそして出ていくのだろうと予測した。だから、この場所が良く見える位置に身を隠し彼が現れるその時を待った。


予定時刻ジャスト。

飛炎が目を付けた通り、怪しい人影が『穴』へと近付き誰に見られることなく家の中へと入って行った。そして数分後、同じ人物が行きには持っていなかった包みを抱えながら出てきた。きっとあれが狙われたグラスなのだろうと思いつつ、真っ黒い衣服を身に着けるロータスに目を凝らした。服と同じように真っ黒な髪に黒い瞳。自分が当たりを付けた人物とは全く異なる配色にがっかりと肩を落とした。

しかし、まだ立ち去らないロータスが包みを大事そうに見た一瞬、フワリと笑みを浮かべた。その笑みは、やっぱり『彼』のそれに酷似していた。急いで持っていたスマホを取り出し画像アプリを開く。そして、隠し撮りしていた『彼』の画像に色を加えていく。

綺麗な茶髪の毛を真っ黒く、大好きな薄墨色の瞳を黒く塗り潰す。そうして出来上がった画像は‥今のロータスとそっくりの『彼』の写真だった。

ついでに妹へラインを送ると、働いている喫茶店は店主の都合で今日は休みなのだと教えられた。これ以上ない決定打だった。


自分の予想があっていた事と、誰も知らないであろう『彼』の秘密を手に入れられた事に、知らず口端が笑みに歪んだ。立ち去るロータスの背を見詰めながら、飛炎はパシャリと写真を撮りそれに口付を落とした。


「何時か、螢じゃ無く、僕が捕まえてあげるね‥千羽。」



          それまでは 誰にも捕まらないでね

          僕の大好きな 泥棒さん




END


これにて完結になります。

気が向いたり、ご要望頂けましたら番外編等書いていこうかと思います。

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