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a Lotus thief  作者: 刻埜
本編
11/15

勘の良いチャランポラン

近江 飛炎様


今宵、貴方様がお持ちの『日長石(サンストーン)が埋め込まれているオルゴール』を、頂きに参上致します


それは、元より我が家宝

貴方様がお持ちするような代物では在りません


空の黄水晶が煌めく頃、蓮華の華とともに参ります



努努、油断召されぬよう



Lotus



「……………………ねぇ、千羽。ほんとに行くの?」

「勿論。だって、これが最後の品物だし。」

「でも……相手、飛炎でしょ?何時も以上に、危ないってぇえええ!!」


ヘアマニキュアで髪色を黒く染め髪を結わいていると、ドアの外から百波が顔を出した。そちらに視線を動かすと、何とも情けない顔をしていた。そんな百波に苦笑いを浮かべ近寄り頭を撫ぜ手やる。何時もだとこうすれば直ぐに笑顔に戻るのに、今日はなかなか八の字眉毛が治ることはなかった。


「……そんなに心配しすんな。〝もしも〟の時のために、『助っ人』は頼んであるから‥な?」

「……………助っ人?」

「そう。学生時代の先輩で、俺達の事情も話してあるから頼んでおいた。」


だから安心して、と言外に伝え、古瑞は百波の横を通り抜け『いってらっしゃ~い』と言う万里に手を振り外へと出ていった。



「ねぇ、螢螢~!怪盗さんはいつ来るかな~?もうすぐ来るかな~?楽しみだな~」

「……………な~な~、な~な~煩いんですよ。少しくらい黙っていられないんですか?ロータスの前に、貴方を牢屋にぶち込みますよ。」

「螢酷い!お兄ちゃんに冷たすぎる!!」

「………………もう良いです、私が出ていきます。」


泣き真似をする飛炎に対応するのを早々に諦め、近江は部屋を出ていった。そんな近江を見送ると、飛炎は窓に近寄り窓を開けるとひょこりと顔を出し下を見た。


「隠れんぼかな?見~付けた~!」

「……………何で、気付いたの?」

「ん~‥勘?」

「…………勘‥なんだ」


ベランダの隅でバレないように丸まっていた古瑞は、突然飛炎に声を掛けられそちらを見て固まってしまった。身を乗り出した飛炎が古瑞の腕を引き立たせると、部屋の中へ引っ張りこんだ。


「いらっしゃ~い!何か食べる?」

「…………遠慮するよ。」


突拍子もないことを言い出す飛炎に、古瑞は戸惑いつつも断った。それを聞いても特に気にしなかったのか、ニコニコと飛炎は古瑞を見詰めていた。


「ねぇねぇ、なんで君は~怪盗なんかしてるの?」

「………予告状に書いた通り、俺の家に在った物を取り戻す為。」

「ふ~‥ん。でもさ、だったら態々盗みに入らなくても、『譲ってください』ってお願いすれば良かったんじゃないの?」


まさか、飛炎からそんな真っ当な意見が出るとは思わず、余りにも意外すぎて目が丸くなってしまった。そんな古瑞にさらに笑みを深めると、飛炎は机に置いていたオルゴールに手を伸ばし古瑞に差し出した。


「はい。お返ししまっす。」

「……あ‥有、難う。」


そうあっさり渡してきた飛炎を怪しみつつも、古瑞はオルゴールを受けとり部屋を出ていこうとした。だが、飛炎に背を向けた瞬間、項に痛みが走った。ぐるぐると回る視界に最後に写ったのは、妖しげな笑みを刻む飛炎の顔だった。


「……油断大敵~、せんちゃん」


意識が途切れる直前、そんな言葉が聞こえた気がした。


ゆっくりと意識が浮上し瞼を開くと、見知らぬ天井が見えた。何処だろう、と躯を起こそうとしたが何故か動かず、唯一動く頭で自身の状態を確認すると、何故か両腕が縛られ柱に括り付けられていた。状況把握を放棄した脳内で、でも躯は無意識にこの状態から脱しようと藻掻き始めた。

縄で擦れた手首が痛みを発し始めた時、ひょこりと飛炎が古瑞を覗き込んできた。


「あんまり動くと、傷になっちゃうよ?」

「…………じゃ、外してくれない?」

「だ~め~。」


素敵笑顔で古瑞の要望を却下すると、飛炎は古瑞の横に腰を下ろすと結わかれていた髪紐を解いてしまった。アップにされていた髪が重力にしたがい顔に掛かると、その前髪をそっと飛炎が掻き上げた。


「普段見れないおでこが見えてるのもとっても可愛くて良いんだけど~、やっぱり何時もの髪型の方が可愛いよね~せんちゃん」

「…………………っ!?」

「黒髪黒目って言うのも、新鮮だけど‥僕あの薄墨色の目の方が好きだな~」

「………な‥ん、で?何時‥から………?」

「あっは、驚いてる~。ん~‥ロータスが新聞を賑わせ始めてからかな~。髪や目、髪型を変えたくらいじゃ僕は騙せないよ~。」


初めから気付いていたのだとそう言われ、何も言えなくなってしまった。固まる古瑞の頬を優しく撫ぜながら、飛炎は言葉を続けた。


「大体、声を聞けばせんちゃんだって気付きそうなのにね~。何で螢は気付かないのかな?あ~んなにせんちゃん大好き~、ってオーラ出してるのに。」

「………………」

「あ、だいじょぶだよ。螢には、せんちゃんだって教えてないから安心して☆」

「確かに、有り難いけど‥そう言う問題じゃないよ飛炎。」


何処かずれた事を言う飛炎に、古瑞は溜め息を吐いた。


次話は、9/23の10時になります。

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