7 なんとかなった!
更新遅くてすみません!
私が百合なのかはおいといて。
対策考えないとな。
まず秋人をどう学校にとどまらせておくか。最初はさっさと帰ってもらってストーカーに襲われかけている実咲を私が助けるっていう安直な考えをもっていたのだが、そう簡単に物語が変わるはずがないと思い直したのだ。
(どうしたら俺ラブのストーリーは変わるのかなぁ……)
智里がより幸せになれるような世界はどうしたら作れるのか。智里が失恋しなくてすむ、秋人と幸せになれる世界を私は作っていかなきゃいけない。
じゃあどうしようか。
適当に「先生が先輩のこと呼んでましたよ~」って嘘をつこうか。これじゃあ少ししか学校にとどめておけないし、秋人のなかでの私の印象が最悪になるんだけど……。
うー、悩ましい。
大好きな小説の主人公に嫌われるのは少し堪えるものがあるが智里の幸せのためだと思えばどうってことないだろう。……メンタル的に。
よし、早速放課後に実行しよう。
私は拳を両手に作り、気合いをいれた。
そして放課後。
私は目にも止まらぬ早さで帰る準備をし、渚に一言言ってから下駄箱に向かった。秋人が帰っていないのを下駄箱にある靴を見て確認し、秋人が来るのを待った。
数分たつと秋人が気だるげにあくびをしながら歩いてくるのが見えた。
「あ、秋人先輩……ですよね?さっき藤澤先生が先輩のこと呼んでましたよ?」
さりげなく。
怪しまれないように言葉を繋ぐ。
初対面の相手に馴れ馴れしくしてはいけない。怪しまれてしまう。
藤澤先生というのは生活指導の話が無駄に長いおじさんである。藤澤先生に安易に話しかければそれはもう長い、ながーい話を聞かされることだろう。
秋人はうげぇーっといった効果音がぴったりな表情を浮かべた。
「まじで?てかお前だれ?」
「一年の黒瀬純って言います」
「なんで一年が俺のこと知ってるんだよ」
「ほら、秋人先輩昼休みに女の人とおいかけっこしてたじゃないですか。私あれ見てたんですよ」
「へー」
おい、自分から聞いておいてどうでも良さそうにあくびをするなよ。
いや、知ってるよ?
秋人にも色々あるんだってことは知ってるよ?
なんせ私、俺ラブ大好きでしたから。
しかし、それとこれとは別。今は秋人という人物は私の目の前に立ち、呼吸をしている。
そんな生きた人間にぞんざいに扱われては私だって腹が立ってしまう。
「何をしているの、あなた」
文句のひとつでもいってやろうと口を開いたがそのとき。背後からこの一ヶ月で聞き馴染んだ声が聞こえ、勢いよく振り向いた。そこには智里が不機嫌そうに立っていた。
数時間智里に会えなかった私が取るべき行動はなにか。
そんなこと決まっている。
「智里せんぱぁぁああああい!!!!」
「ぐふっ」
私は智里と向き直り、勢いよく抱きついた。
いつもの智里ならそこで悲鳴をあげているところだが、今回は打ち所が悪かったらしい。
私は気遣うことを忘れて智里を強く抱き締める。
くんくん。
いい匂い。
智里の匂いだぁ。
「ちょ、ちょっ、と……ッ」
「先輩はどうしていつもそんなにいい香りがするですか?誘ってるんですか?誘ってるんですよね!?」
「誘ってないわよ!?」
「そんなの嘘です!こんなに私の心を惑わせといて誘ってないわけないじゃないですかッ!?」
「知らないわよそんなこと!?」
いつものようにじゃれあっていると秋人が訝しげにしていた。それもそのはず。月城智里という人物は同級生に冷たい印象をもたれているのである。実際は律儀で優しく、秋人に恋するかわいらしい女の子なのだけど。
本人が口下手のせいやきつい美人系な容姿も合間って冷たい印象を濃くさせているのだろう。
私はピコンと妙案を思い付いた。
智里の体を解放するとうっかりといった感じを装うため右手で頭を軽く叩いた。
「あ、そうだったぁ!智里先輩も藤澤先生に呼ばれてたんですよねぇー!秋人先輩!智里先輩と一緒に職員室に行ってきてください」
「えぇ!?」
「なんで俺が月城と行かなきゃいけねぇんだ?」
「二人一緒に来て欲しいって藤澤先生が言ってました!」
「そ、そうなの?」
「はいっ!それじゃ、私はもう帰るので!智里先輩!さようなら!……ついでに秋人先輩も!」
「え、えぇ……さようなら」
「……」
秋人に無視された。
別にいいけどね。
秋人のことは智里に任せたのでもう大丈夫だ。せっかく会えたのに離れるのは超嫌だけど、秋人と少しでも進展することを願っておこう。
さて、私はもう一つの問題に取りかかるとしますか!
「(なんで俺が月城と……)」
「(な、何なのこの状況は……っ!?あの子はいったい何がしたいの!?)」
あなたを幸せにしたいのですw