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25 相談

「私、智里先輩に変なことでもしたのかなぁ?」


「変なことしすぎてどれで先輩を怒らせたのか分からないの?」


「そこまで変なことはしてないつもりだったんだけど…………」


「急に抱きつく、妄言をはく、脅迫する、それ以外に何かしでかしたんじゃない?月城先輩もよく我慢してたよね」


 私だったら殴ってそれでもふざけたことぬかすなら相手の弱点を徹底的に分析してそれで脅して黙らせてるわ、と恐ろしいことを無表情でいってしまう渚。


 渚なら本当にしそうで怖い。

 絶対敵にまわしたらいけない人というのは、渚みたいなタイプの人を指すのだろう。



「智里先輩は優しいから渚みたいな狂暴なこと思い付きません」


「狂暴じゃなくて理性的って言ってほしい」


 最初に殴るって選択肢がでてるのに理性的とはなんぞや。


「休日の朝っぱらから突然押し掛けてきて何かと思えば……純、あんた私を悩み相談所だとでも思ってるわけ?」


「そういう訳じゃないけど……相談できるの渚くらいだし」


「まったく……私にだって予定ってものがあるのよ?」


「うぅ……自分勝手でごめん……」


「でも今日はバイトも休みで予定がなにも入ってないから話くらいは聞いてあげるけど」


「っ! 渚ぁ!」


 感極まって渚に抱きつこうとしたら顔を手で押し返された。


「そういうの良いから。話したいことがあるんでしょ?はやく言いなさいよ」


「う、うん……」


 ペースを崩され、釈然としない気分で話を切り出した。

 主に最近の智里の私に対するあの不審な様子についてだ。


 渚も最近の智里の様子がおかしいことには気づいていたらしく、真剣な顔で聞いてくれた。


「一応聞くけど、純が何かしたって訳じゃないのよね?」


「……心当たりは一つ、あるにはあるんけど」


 心当たりと言うのは私が秋人に告白した疑惑のことだ。

 だけどあれはとうの昔に解決しているし、噂がでっち上げであることは私が智里本人に伝えたから問題ないはずなんだけど。

 恋する女子の嫉妬は恐ろしいものだと聞く。

 もしかしてまだ私と秋人の関係を疑ってるとか?

 ……わっかんないなぁ。


「心当たりあるなら謝ればすむはずじゃない?」


「いや、それはもう解決してるはずなんだよ。……先輩がどう思ってるかはわからないけど」


「? どういうこと?」


 さすがにこれは渚でも言えない。

 智里のデリケートな話だ。

 知らないうちに自分の好きな相手を第三者に暴露されるのはいい気分ではない。


 私が口ごもっていると察してくれたのか渚はそれ以上聞いてこなかった。


「このままじゃダメだよね……」


「当たり前でしょ。お昼時間がお通夜みたいになっちゃたまったもんじゃないわ」


「あはは……面目ない…………」


 智里と仲直り?したいものの智里がなぜあそこまで私を拒絶するのかわからない今の現状じゃ、どうすることもできない。


 話し合いをしようとしたらすぐに帰っちゃったし。


 あの時の智里はおかしかった。

 顔を歪めて悲しそうな、悔しそうなどちらとも言える表情を浮かべていた。


 おかげで昔のことを思い出しちゃうし、最悪だ。


 ほんと、智里には手を焼かされる。


 智里なにか思い詰めてたよね。

 悩みがあるなら相談してくれればいいのに。

 智里の人を頼らない癖は生来のものか、はたまた幼い頃の環境のせいか。


 智里の場合、後者っぽい。



 智里の両親ほんと腹立つなぁ。

 家に行ったとき女の人がいたけどたぶんあの人が智里のお母さんだよね。

 どことなく智里に似ていたし。


 子供はただ育てれば良いというわけではない。心身共に成長させることこそが大事なんだ。


 偉そうなことを言っていると思われるだろうけど前世では親の教育や幼い頃の環境のせいで問題を抱えていた子供が絶えなかった。


 智里の幼い頃の環境を考えるとグレてもおかしくないのに真面目に、真っ直ぐと生きている智里を尊敬する。


 親に育てられたというより、一人で育ったといった感じだけど。なんとも言えない気持ちだ。

 一人で育ったから頼りかたを知らない、不器用な部分を持ち合わせているがそれは短所であると同時に美徳だ。


 すぐに頼ってくる人より智里ようなタイプの方が私は好きだ。


 でも、私に不満があるなら直接いってくれればいいのに……。


 そこで私はハッとする。

 智里は言っていた。

 みんなが私みたいになんでもハッキリと言えるわけではない、と。


 もしかして私のこういうところが嫌になったってこと?


 うーん……。


 結局、智里の様子がおかしい理由は夕方になっても分からなくて私は家に帰ることにした。


 やっぱり本人に聞くのが一番だ。それで拒否られて嫌われることになっても今の状況がずっと続くよりましだ。


 智里に嫌われるのはまだ良い。

 無視されるより何倍もましだ。



 渚に話を聞いてくれたお礼をいうと「駅前のイチゴチョコレートアイスクーリムクレープを奢ってくれれば良い」と真顔で言ってきたので聞かなかったことにした。


 あそこのクレープ高いんだからなっ。

 私はバイトしてないし、お小遣いだってそんなに多くないからあんなもの買わされたら今月のお小遣いが半分弱なくなってしまう。


 渚は私の反応に不満そうだったけどなにも言ってこなかった。

 たぶん冗談だったんだろう。

 冗談であってくれ。


 と、願いながら家に帰るのであった。

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