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21 好きなタイプ

あなたはロングが好きですか?

ショートが好きですか?

私はどっちも好きです!

 放課後、二年の下駄箱で秋人を待つ。


 九条秋人という人物を言葉で表すなら怠け者、めんどくさがり、男気がある。

 そんなところだろうか。

 最後のは実咲をストーカーから助けたときに分かっていただろう。

 臆病な人なら同じクラスのちょっとしか話したことがない女子をあの状況で助けようなんて思わないだろう。


 かっこいいんだぞ、秋人は。秋人が実咲と結ばれたときは少々口が悪くなって秋人を童貞やろうっていってしまったけどまぁそこは忘れてほしい。


 秋人は口が悪いから初対面の人には嫌われやすいだろうけど長く付き合えば秋人の人柄に惚れ込む人はたくさんいるはずだ。



 顔だって不細工じゃない。突出して良いわけでもないけど「顔が良すぎる男なんてナルシストで隠れてこそこそ浮気するんだから、どうせ付き合うなら中の下くらいの顔の男の方が良いわよ」

 って男性経験豊富な前世の友達がいってた。


 秋人の容姿は中の下というより中の少し上くらいだと私は思うけどね。

 ちなみに私は物語のサブヒロインであるから顔はいいのさ。

 マスコットみたいに扱われるような顔をしている。

 同級生に餌付けとかされてそれに気付かずお菓子をモグモグと食べていそうなそんな顔だ。


 実際、俺ラブの純は中盤そんな扱いを受けていた。無口で無表情。でもお菓子をあげると黙々と食べ、リスのようにほっぺたを膨らましていたそうな。


 今の私はそんなことしないけどね。


 さて、色々考えていたら目当ての人が見えてきた。


 前あったときみたいに大きなあくびをして気怠げに歩いてきている。


「秋人先輩、ちょっと良いですか?」


「お前あんときの……」


 あ、私のこと覚えててくれたんだ。

 なにげにちょっとうれしい。


「なんだよ。俺早く帰りてぇんだけど」


「ちょっとだけですから。ここじゃなくて体育館裏に着いてきて貰えませんか?」


 最後の方は周りの人に聞こえないように小声でいったつもりだ。


 秋人は目立つのが嫌いだ。

 だけど放課後後輩の女子に呼び出されたとなったら質問責めにあうかもしれない。

 だから教室で待ち伏せするのではなく下駄箱を選んだ。


「……ここじゃダメなのか?」


「私は良いですけど秋人先輩は良いんですか?」


「………はぁ、着いていくよ。手短に頼むぞ」


「はい、ありがとうございます!」


 うん、やっぱ私秋人のこと普通に好きだわ。

 嫌がっているけどちゃんと私の話を聞こうとしてくれてるし、面倒見が良いんだろう。


 体育館裏に移動していよいよ本題を話し始める。


「て、話ってなんだ?」


「その話をする前に答えて貰いたい質問があるんですけど良いですか?」


「質問の内容による」


 ですよね~。

 話してみないことには始まらないということか。


「秋人先輩って今誰かと付き合ってたりします?」


「付き合ってる奴なんていねぇよ」


「じゃあ、好きなタイプとかありますか?」


「それを聞いてお前はどうするんだ?」


「ちょっと参考にしたいなと思いまして。私好きな人いるんですけどその人が年上でして。年上の男子がどういう女子を好きなのか知りたいんです」


 はい、真っ赤な嘘です。

 私は目的のためなら嘘を容易に吐く女なのです。


「年上の男の人の知り合いって秋人先輩ぐらいしかいないんですよ。頼れるの秋人先輩ぐらいなんです。お願いします。教えてください」


 切実で健気な女の子を演じてみた。

 好きな人に振り向いて貰いたくて必死なんです!みたいな空気を漂わせる。



「……俺の意見なんて参考にならねぇぞ」


「なにも聞かずにいるよりはましだと思います」


 しばらく静寂が訪れた。

 その間、私は秋人の目を見つめ続けた。聞くまで帰らせないぞっていう意思を込めて。

 そして降参したのか先に沈黙を破ったのは秋人だった。


「くそっ、わかったよ。えーっと? 好きな女子のタイプだったか?」


「っ! はい!できれば具体的にお願いします。性格とか容姿とかの好みを聞かせてください。あ、あと髪の長さとか」


「細かいし注文多いな」


「それだけ本気なんですよ」


 嘘だけどね。

 嘘なんだけどね。


「髪は良くわからねぇ」


「じゃあ、容姿はどうですか?かわいい系が好みですか?それとも綺麗系?」


「……どちらかというとかわいい系だと思う」


「性格は?ちょっとツンデレが入ってて自分のことを好きな女子がいたらどう思います?」


 食いぎみな私に秋人はちょっと引いている。

 こんなチャンス滅多にお目にかかれないだろうから。


「ツ、ツンデレとかはあんまり好きじゃねぇけど自分のこと好きな女子に嫌な印象とかないんじゃないか?」


「なるほど」


 つまり智里が好意を伝えればより好感度が上がるということか。

 秋人にとって月城智里という存在は同じクラスの女子という認識でしかないはずだ。

 それに自分のことを好いてくれている女子だとわかれば何かしら意識するようになるかもしれない。


「質問には答えたぞ。もう帰って良いよな」


「はい。ありがとうございました」


 なんで俺がこんなこと……と最後に愚痴をこぼしながら秋人は去っていった。


 残念ながら秋人の好きな容姿のタイプはかわいい系だった。智里はもちろんかわいいんだけど容姿はきつめの美人といったところなので第一印象ではかわいいより綺麗と思われる方が多いはずだ。


 後は智里に告白を焚き付ければいいんだけどそう上手くはいかないだろうなぁ。

 ま、秋人が智里を好きになる可能性がない訳じゃないということが分かっただけでも一歩前進だろう。

  

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