15 思いつき
え、まててて。
愛読していたなろうの先輩後輩百合作品に感想を書いたところ「負けヒロイン」読んでますって返信来たんですけど……。
あーもう!嬉しすぎるぅ!
ある日の休日。
渚の家に遊びに来た私は悩んでいた。
今までにないくらい悩んでいた。
「ねぇ、渚。ちょっと聞いてほしいんだけど」
「どうせろくなことじゃないだろうからいや」
「そんなこと言わないでよ~。悩んでるんだよ私もぉ……」
上目遣いで渚を見つめてみる。
このモヤモヤを誰かに話したくてしかたがない。
渚はなにも言わずジーっと見てきたが、やがてため息をつき。
「気持ち悪いからその顔やめて。聞いてあげるから。その代わり明日何か奢ってよ」
「わかった!」
奢るくらいは別にいい。
我慢しよう。
私は数日前から悩んでいることを告白した。
「私が智里先輩のことが大好きなのわかるよね?」
「……そりゃあ、あれだけ露骨なの誰が見てもわかるでしょ」
「でしょでしょ!なのに智里先輩は全然わかってくれないの!おかしくない?私結構分かりやすいよね?考えてることすぐ顔に出ちゃうタイプだよね?」
「それ自分で言うのおかしいと思うけど……ま、確かに月城先輩は自分のこととなると途端にポンコツになるかもね」
「だよね!?」
「でも、純はそういう所もふまえて月城先輩のことが好きなんじゃないの?」
「好きだよ?好きだけどさぁ……」
あれだけ好きって表現してるのに伝わってないのは悲しいのを越えて虚しくなってくる。
いずれは休みの日に遊びにいく仲になりたいと思ってラインを交換したのに遊びに誘ってくれる気配がない。
私から誘えばいい話なんだけど、てか実際に遊びには何度か誘ってみたんだけどすべて断られてしまった。
悔しくなんてない。
泣いてなんてないんだからなっ。
ぐすん。
「好きって軽々しく言いすぎて信用できないんじゃない?」
「そんなぁ……私は智里先輩一筋なのにぃ……」
「純がどうこうとかは置いといて、月城先輩は自分のこととなると消極的と言うか……謙遜しすぎるところあるよね」
「そうだよね~」
智里の自分のこととなると途端にポンコツになる癖は智里の両親のせいなんだろう。
前にも言ったが智里の両親は世間体ばかりを気にして子供の本質を見ようとしなかった。
だから、智里は自分は何の価値もない人間なんだと思うようになった。
子供にとって親は神様にも等しい。
何も知らない無知な子供にとっては色々教えてくれる親は世界そのものなのだ。
それは智里も一緒だった。
どれだけ頭がよくて、大人びていても智里は子供だったのだ。
(それなのに智里の両親ときたら……)
あきれと怒りと私ではどうにもできない悔しさで腹が立ってきた。
(よしっ、決めた!)
私はあることを決意した。
「純……? あんたまた変なこと考えてないでしょうね?」
やはり渚は鋭い。
だてに何年も幼馴染みやってるわけではないと言うことか。
「変なことじゃないですよ~だ。ただ、智里先輩の家に遊びにいこうと思って」
「今から?」
「うん」
「約束してたの?」
「ううん」
「……」
あ、何考えてんだこいつって顔してる。
「あんた何考えてんの?」
ほらやっぱり。
「智里先輩に会いたくなったから会いに行くだけだよ?」
「いや、おかしいでしょ。何なのその行動力は。そもそも月城先輩の家どこか知ってるの?」
「うん。前、生徒会室に行ったときに調べといた」
「うわぁ……」
「ってのは冗談で実咲先輩に聞いた」
「……ほんとに?」
「うん」
実咲は智里とお弁当を初めて食べた日に少し寄ったらしかった。家の中には入れてもらえなかったみたいだが、それでも私は羨ましかった。
私が知らないことを実咲が知っているのが悔しかった。
屈辱的だった。
だが!私は耐えた!
耐えたんだ!
プライドを犠牲にして私は智里の住所を知ることができた。
結果としては万々歳だ。
……ほんとは智里から家に誘ってほしかったんだけど、それはもう諦めた。
だって智里、一向に私を家に誘う気配がないんだもん。
だったら勝手に調べて私は行かしてもらう。
それで嫌な顔されても仕方ないから我慢するけど、絶対家には上がらしてもらうんだ……!
「……一瞬本気で友達やめようかなって思うほどにさっきの発言はヤバイからこれからはもっとましな冗談言ってよね」
「わかったわかった。渚に友達やめられるのは困るから今度から気を付けるよ。で、どうする?渚も着いてくる?」
「月城先輩が心配だから私も行く……って言いたいところだけどあいにく今日はバイトがあるから行けない」
「あ、そっか。バイト始めたんだよね。そんじゃ、私だけ行ってくるかな」
「行ってら~。くれぐれも変なことはしないようにしてよ。私月城先輩のこと結構好きなんだから」
「了解しました~」
「これだけ信用できない了解初めてかも……」
「ま、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。私だって智里先輩に嫌われるのは嫌だしね」
「もう嫌われてんじゃないの?」
「大丈夫。まだ嫌われてない。苦手にはされてるけど」
「それが分かってるんならもっと発言に気を付けなよ」
「はいはい。んじゃ、お邪魔しました~」
私は渚の家を出た。
渚の家から智里の家まで歩きで結構かかるだろうから、近くにあった自動販売機でお茶を買ってから智里の家へ向かった。