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13 感想

「で、どうだった?」


 帰り道。

 久しぶりに渚と帰ることになり、智里に対しての感想を求めた。

 何が、と聞かなくても私の意図を察した渚はすぐに口を開く。


「色々苦労してそうな人だなって思った」


「まぁね~。断れない性格してるから厄介事一人で抱え込む癖ついちゃってんの。生徒会の仕事だって押し付けられてるしさぁ」


 昼休みに自分の時間を割いてまで仕事をしているなんて初耳だった。

 俺ラブの物語はあくまで秋人が主役だ。秋人が見て、感じたものしか描かれていない。


 手伝いにでもいこうかなぁ。

 私に対してだけよそよそしいあの態度をどうにか出来ないものか。

 私は智里にラブ×100くらいはあるつもりなんだけど智里は私に対して恐怖すら抱いている節がある。

 このままでは休日に遊ぶ親しい後輩どころかライン友達にもなれないかもしれない。

 ラインを交換したからといってライン友達になったわけではないのだ。

 智里は自分からラインを送るような性格じゃないし、送るとしたら私からだろう。そうなったら私だけの一人相撲がライン内で行われているのが容易に想像できてしまう。


「いや、その事もあるけどあんたのことでも苦労してるって思ってさ」


「え、私?」


「入学式早々付きまとわれて月城先輩もよく我慢してるよねってこと」


「うんうん。そこは私も同意かなぁ。私みたいなめんどくさい後輩を相手にしてたら相当疲れると思うんだよね~」


「分かってるならその性格どうにかしたら?」


「む・り♥️」


 考えもしない私に呆れたのか渚はため息をついた。

 渚の目が少し冷たくなる。


「そうやって茶化してばっかりだと真剣なときに信じてもらえなくなるよ?」


 その一言にどしっと肩が重くなる。

 渚はほんと言いづらいことをズバズバ言ってくるドストレートすぎる子である。


「現に私、純が言ってること九割くらい信じてないから」


「バッサリ言うねぇ……」


「今さら純に嘘ついても仕方ないでしょ」


「そうだけどさぁ……」


「不満があるなら普段からちゃんとしてればいいのにそうしてないのはどこの誰?」


 はいはい、私が悪いですよーだ。


「そのままだったら月城先輩に嫌われちゃうかもよ?」


「大丈夫大丈夫。先輩は優しいからめったに人を嫌ったりしないの」


「じゃあ、純はレアなタイプな訳だ」


「私が嫌われてること前提にしないでくれる?」


 そんなに智里に嫌われてるように見えたのか?

 まぁ、私も嫌われてるまではいかないにしろ苦手の対象にされているとは思っている。

 私が近づくだけであんなに顔を歪めて拒否反応マックスな態度とられてるのに「智里は私のことが好き」だなんて呑気に思えるほど私の頭はお花畑ではない。


 それが分かっていてもああいう接し方しか出来ないのは前の私の性格が影響しているのだと思う。

 本来の黒瀬純は無口で無表情で何を考えているのか読み取れない子だった。だけど今の私は黒瀬純(わたし)であって黒瀬純(わたし)ではない。

 俺ラブの物語に出てきた黒瀬純はいない。


「ほんと程々にしなさいよ」


「わかってるてぇ~」


 本来の黒瀬純ならありえない、浮かべないであろう表情。

 それは黒瀬純ではない、()のものだ。

 だから私は大袈裟な反応ばかりとってしまう。

 ()()であるためにこれは大事なことだ。


 智里がひつこい人が嫌いなことくらい分かっている。というか普通の感性を持ち合わせている人ならだれでもそうだろう。

 分かっていてもやめられないし、やめようとは思わない。


「純……?」


 いつの間にか立ち止まっていたみたいで渚が心配気に顔を覗き込んできた。


「なに?」


 笑顔を浮かべる。

 そんな私を見て渚は顔を険しくさせた。


「……ごめん、いいすぎた」


「ん?別に気にしてないよ?てか、いいの渚。早く帰んないと()()おばさんに心配かけちゃうよ?」


「―――でも……」


「さっさっと帰ってあげなよ~」


「……うん」


 何か言いたそうにしている渚の様子に気づかないふりをして私は前を向いて歩き始める。

 もどかしそうに顔を歪めている渚に気づかないまま、この日は別れた。


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