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10 お誘い

 ストーカー問題が解決した翌日。

 実咲がわざわざ一年の教室まで一人で来ていた。

 さすがの私もこれには驚いた。


「あ、黒瀬さん!」


 私の姿を見つけてぱぁあっと表情を明るくする実咲はまるで母親を見つけて喜んでいる子供のようで―――




 この日、うちのクラスの大半は実咲の笑顔に身悶えし、目をハートにしていた男子生徒が何人かいましたとさまる。





 場所は変わって二階に上がる階段の途中に私たちは移動した。クラスの大半が私と実咲の話に耳を傾けていたからだ。

 あんなに人に見られてちゃ実咲の話しに集中できない。


「で、どうしたんですか? 実咲先輩」


「これ、返そうと思って」


 そう言って私の目の前に出してきたのは昨日実咲に渡したハンカチだった。


「ちゃんと洗っておいたけど新しいのがいいなら買って返すよ?」


「そんな事しなくていいですよ。これ100均のやつなので」


「そっか、わかった」


「これを届けるためにわざわざ一年の教室まで来たんですか?」


「それもあるんだけど……黒瀬さんていつもお昼はお弁当なの?それとも学食?」


 どうしてそんなことを聞くのか分からなかったが、きちんと答える。


「お弁当ですよ。貯金してるので」


「お、偉いじゃん」


 頭を撫でられた。

 私は歳のわりに童顔だとよく言われる。おまけに同年代の子より背が低いから中学生のときはよく小学生に間違われていた。今は中学生に間違われることが多くなっている。

 実咲のこれは誉めているつもりなんだろうけど少し複雑だ。

 子供扱いはしないでもらいたい。


「ってことは誰かとお弁当食べる約束とかしてるの?」


「え、まぁ、いつも一緒に食べる友達はいますけど………?」


「あ、そうなんだ。ちなみに何人と食べてるの?」


「一人とです」


 いったい何が言いたいのか。

 私が首をかしげた。


「じゃあ、その友達も連れてきて私とごはん食べない?」


「え」


「私黒瀬さんともっと仲良くなりたいの。ダメ?」


 実咲はこてんと首を傾げた。

 くっ、かわいい。 

 智里とはまた違った可愛さだ。 


「ダメじゃ、ないですけど……友達にも聞いてみないと」


「そうだよね。じゃあ、ライン交換しよ?友達にオッケー貰えたら連絡して」


「あ、はい。わかりました」


 お互いスマホを取り出し、ラインを交換した。


 すごい。

 これがメインヒロインのコミュ力か。


 と感心していたとき、私はあることに気付いた。



「(私、智里のライン持ってない……)」



 なんて事だ。

 一ヶ月以上一緒にいた(付きまとっていた)のにラインを持っていないだなんて……。

 ラインを交換していれば何かあったときにすぐ駆けつけられるし、何より智里と電話とか出来ちゃったりするわけだ。


 どうして今まで気づかなかった?

 ラインを交換してもっと親しくなったら一緒に遊びに行くこともあるかもしれないのに……ッ!


 それだけでもショックだった私に新たなショックが襲ってきた。


「み、実咲先輩……それは……っ 」


「え、何?」


 ちらりと見えた実咲のラインの画面に月城智里という人物の名前があったのだ。


「い、いつ智里先輩とライン交換したんですか!?」


 私は鼻息をあらげて実咲に詰め寄った。

 私の変わりように実咲は足を一歩後ろに引かせた。


「え、い、一年の教室来る前……だけど……?」


「何て言って交換したんですか!?」


「えっ、と……月城さんと仲良くなりたいって言った後に交換した、かな……?」


 そ、そんな……。

 私を差し置いて恋敵(仮)である実咲と交換するだなんて……。

 あまりのショックに思考が停止した。


 智里のラインがほしいのなら実咲にもらえばいいはなしなのだが、それは出来なかった。

 もし実咲から智里のラインを貰ってしまえば私の中のなにかが崩れてしまえような気がしたから。 


「(というかそんなこと智里ラブな私のプライドが許さない!)」



「あ、ちなみにお昼は月城さんも一緒に食べることになってるから」


「本当ですか!?」


 それを早く言ってくれ!


「お昼一緒に食べます!いや、食べさせてください!」


「え、ほんとに!? けど友達はいいの?」


「大丈夫です!説得しますから!」


「わかった。じゃあ約束ね!」


「はい!」


 先程までの落ち込みようが嘘のように私は元気になった。

 私たちは指切りを交わし、チャイムが鳴ったので別れてそれぞれの教室に戻った。


 私はなんという幸運の持ち主なんだ。

 まさか智里とお昼を食べれるなんて!


 智里とお昼を食べたいといつも思っていた。しかし、昼休みに二年の教室に会いに行っても智里はおらず、聞いた話によると智里は昼休みにはいつも生徒会室に行き、業務を行っているとか。

 そういえば智里は生徒会の役員だったなとその時に思い出した。


 仕事の邪魔をしてはいけないと思ってあれから二年の教室にいくことはなくなったのだけど―――


 まさか今日智里とお昼が食べられるなんて予想もしていなかった。

 自然と口許が緩んでいく。


「(朝から最ッ高の気分だ!)」


『その頃の智里』


「っ! きゅ、急に悪寒が……ッ!」


智里は純と知り合ったこの一ヶ月間で危機感知能力が10上がったw

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおー!実咲さんが純のところに! たしかにさすがメインヒロインw ぐいぐいいきますな!(いいぞ、もっとやれw) よかったね、純!() それはそうと、このままいけば智里ちゃんの危機感知能力…
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