1 大好きです!
やっと、やっとこの日がきた。
私は心踊らせ、顔が緩まぬよう気を引き締める。
今日は待ちに待った上川高校の入学式。
私はついに高校生になったのだ。
入学式は早く終わり、はれて上川高校の一年生になった私は目当ての人を探すべく、校内を歩き回った。
そしてやっとのことで見つけた。
目当ての人は入学式の片付けをしていた。
すぐに声をかけようと思っていたのだが、あまりの美しさに私は声をかけるのを忘れていた。
「ーー?どうしてこんなところに一年生がいるの?」
すると彼女は私に気づき、小首をかしげ不思議そうに私を見てくる。
ここの学校は学年ごとにリボンの色が違う。
だから彼女は私が1学年下の一年だということに気づいたようだ。
いや、今はそんなことどうでもいい。
生だ、生智里だ。
「きゃっ」
私は気がつくと無意識に彼女を抱き締めていた。
私は頑張って引き締めていた顔を緩ませる。
「な、なに!?」
一方彼女は困惑しているようだ。
それもそのはず。
私と彼女は今日はじめて会うのだから。
私は彼女のことを知っていたが実際に会うのはこれがはじめてだ。
彼女の体温が私に伝わってくる。
さっぱりとした匂いが彼女から漂っている。
心臓の音がドクドクと聞こえてくる。
彼女は生きているのだ。
ずっと会いたいと、焦がれてきた相手が今まさに私の目の前にいる。
「ちょ、ちょっとっ、離して!」
彼女は私を思い切り突き飛ばした。
私はあっさりと彼女を離した。
怒りでか顔を赤くして私を睨み付けてくるその姿は私の心を揺さぶるには十分な刺激だった。
「あなた一年生よね?急に抱きついてきて非常識じゃない」
少し軽蔑の色を見せながら、私を見つめてくる。
私はその問いに元気よく答えた。
「今日上川高校に入学しました!黒瀬純っていいますっ!貴方のことが大好きです!」
「はあぁ!?」
分かりやすく大きく目を見開き驚きを表している。
そんな彼女に向かって私は明るい声で言った。
「絶対に貴方を幸せにしてみせますから!」
ぐいっと距離をつめて、彼女を上目遣いで見る。
彼女はビクッと体を震わせた。
「あなた、一体……」
「黒瀬純ですっ。覚えてくださいね」
にこっとほほえみ、彼女を見つめる。
今だ困惑している彼女が見せる表情はとてつもなく可愛かった。