3.宿縁の娘
村長や婆さんをなだめ。「この女性は言葉が違うだけで害意はない」と納得してもらい。村長の息子はオネムになったので寝てもらい。客間を借りて、シロと名乗った女性と話すことにした。その際にいろいろ細かいことを質問するので聞いたところ。「世界と時間のズレを確認しています」と答えられた。
なんと、世界は一つではなく。5桁を超える複数の世界の存在が確認されている。おまけに、彼女が来た時代は23世紀。私が死んだのは1999年。ノストラダムスの年。文化も技術レベルも違って当然だと思っていたら。そもそも、私のいた日本と彼女のいた日本は平行世界で、似ているようで微妙に違いがあることも判明した。
「探っているのですが。この世界の位置がわかりません。通信もだめなのでネットにもつながりません」と言っていた。ネットに繋がれば仲間の支援が受けられるし、物も取り寄せられるらしい。
それを聞いて、俄然、やる気が出た。異世界なのに出前がとれるだと。もはや食べられないと思っていた、ラーメンやカレーにも手が届くだと。
少年が起きてきたので、またおでこを突き合わせる二人。「パスが完全になれば、双方で魔力と情報の共有が可能になりますので。私は言葉をゼロから憶えるのは得意ではないのです」と言うことらしい。
パチっという感じがした。魔力の揺らぎかな?
「つながった」と、安堵の表情のシロ。「これで、言語野を…」とつぶやいていたら。「あー、私の話している言葉がわかりますか?」と、少年に話しかけた。村で使われている言葉で。「うん」と答える少年。
「改めまして。アキューラ様。私はシロ。あなたの使い魔で。前世では家族でした」、と告げた。
「前世って?」
「生まれ変わる前ということです」
この村にも、「良いことをしていると、生まれ変わって裕福な生活が送れる」。という話は伝わってるので、生まれ変わりについては受け入れたようだ。
というわけで。
「この娘は前世からの宿縁。息子さんが生まれ変わっても離れがたく、奇跡の愛の力で、この地に呼ばれたのだ」と、私が説明することで。シロは村長宅に間借りすることになった。