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消えない温もり

作者: 夏蝶


始まりの記憶。


初めて私を包んでくれた。


その温かな手を覚えている。


どんな雨や嵐で凍えていても

いつも陽だまりのように温めてくれた。


ずっとこんなにも優しくて

幸せな時間が続くのだと

そう、信じていた。


でも時を重ねていく中で

ある日私は、遠くに輝く光に目を奪われた。


その光は私が持つどんなモノより

とても輝いて見えた。


気がつくと私は、温かな手と離れ、

光を追いかけていた。


まるでその光が自分の為に

用意されたモノに思えたから。


でも必死に追うほど、それは遠のいていく気がして

いつの間にかその光を見失っていた。


立ち止まって見渡すと、一面の暗闇。


私は何を探していたのか?ここはどこなのか?

これからどこへ行けばいいのか?


何もわからない迷子になっていた。

途方に暮れて座り込んだ。


暗闇に独り震えて初めて


確かなモノなど何一つないと知った。


この歩みは孤独だと知った。


ただ


凍えるような孤独の冷たさを感じると共に


ふと、今はない温もりを思い出した。



そう。あの時


手が離れた瞬間

見たこともないほど哀しげな表情だったのに


次の瞬間には

見たことがないほどの笑顔で

私を見送ってくれていた人のことを。



そっと胸に手を当て感じる確かな温もり。


あの人がいた、

そしてあの人がくれた私という確かな証。



私はゆっくり立ち上がった。


ここがどこかも、向かうべき場所もわからない。

帰るべき場所ももうない。


それでもきっと


今は迷子でも大丈夫。


この歩みは一人でも

この道は独りじゃないと知ったから。


終着点はどこであってもいい。


必死に歩みきった先に

待ってくれている温もりがあるから。



これから色んなモノを失っても

もう2度とあの温もりに触れることはなくても


消えない寂しさと共に


消えない温もりが


私の真ん中にあると気づいたから。



私は一人、その一歩を

再び踏み出した。

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