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第29話 闇アベル

そういえば馬車をひいてた馬が一頭怪我してたけど、そいつは盗賊を討伐したあとにファンタジーの定番ポーションで御者が治しました。

こんにちは。アベルに拾われてから2日経ちました。現在僕はアベルに抱き締められています。もう昨日の朝からほとんど離してもらえません。離れようとするとすぐに捕まえて抱き締められます。これには一応理由があるみたいです。




あれはスライム生で初めて人間の料理を食べた後の夜中のことです。アベルも眠って、冒険者たちも見張り以外が寝た頃、僕はその日食べたご飯のことを思い出していました。


料理はミロクから多少は仕込まれたのですが、人間みたいに手の込んだものではありません。調味料もそんなに種類がなので、仕方ないんですけどね。なので複数の調味料や材料を使った料理というのは僕にとって、とても魅力的でした。

そこで僕は、これからもスライム(食べる必要がない僕)が料理を分けてもらうにはどうすればいいのかを考えました。結論、僕が肉や果物を調達すれば功労者として貰えるのでは、と思い付きました。思い付いたら即実行をやるのが僕です。すぐに森に入って狩りと果物採集を始めました。



その成果は、狩りも採集も上々だったのですが、夢中になりすぎて既に太陽が登りかけていました。しかも問題がありました。僕は少し強いスライムを装っているだけなので、四つ手熊とか持って帰れません。亜空間も秘密なので持ち運べる量は限られています。

結果、集めた食材はほとんど亜空間に仕舞って、普通のウサギを1羽とリンゴっぽいけど味はミカンみたいな果物を数個だけ乗せて馬車まで戻りました。



着いた先で見たのは、泣きじゃくるアベルとそれを慰めている老夫婦と女性たち。その近くでどうすればいいか分からずに立ち尽くしている男たちでした。僕は状況がよく分かりませんでしたが、とりあえずアベルの方に近寄っていきました。

最初に僕が近づいたのに気がついたのがベック。僕を見つけた瞬間にアベルを呼んで僕が帰ってきたことを知らせました。


その瞬間、アベルが泣いている原因が僕だと悟り、同時に悪寒が走りました。だがもう遅い、悪寒の原因であるアベルは既に目の前に来て、僕の上の食べ物を無視して僕を抱き上げました。僕は、食べ物が落ちた~なんて現実逃避していましたが、すぐにアベルの目が映り現実に引き戻されました。


涙目で目の周りが赤くなっていますが、目が死んでます。口元だけ笑っていて、出てくる言葉は「心配した」「離れないで」「戻らないと思ったら怖くなった」という内容を繰り返していました。ぶっちゃけ怖いです。ヤンデレっぽくて僕の本能がさっきから危険を訴えてます。闇アベルです。


周りの人たちもこの尋常じゃないアベルの様子にドン引きです。物理的にも距離がさっきから開いていています。普段なら居心地がいいアベルの腕の中も、今では恐怖の空間です。助けてくれないかと今の位置から唯一見えるベックの方に意識を向けたら、僕には目が無いので目が合うはずがないのに目をそらされました。本当に助けが無い、ちくせう……





それからしばらく僕に語りかけていたアベルでしたが、やっと満足したのか目に光が戻りました。ただし、その時からトイレの時以外はほとんど腕の中か頭の上から離してもらえないまま、冒頭の状況に戻ります。


アベルが病んだのはアベルの天職というのとスキルが関係あるそうです。闇アベルの要領を得ない言葉を整理して僕の予想も入れた結果、何となく流れが分かりました。


・アベルはスキル『魔物との絆』持ちの天職『テイマー』である

・『魔物との絆』持ちは場合によっては人生を賭けてもテイムモンスターが見つからない

・そこに僕が現れて大喜びした

・朝起きたら僕がいなくて逃げられたと思った。しかも僕はスライム(最弱モンスター)だから死ぬかもしれないと思って泣いた

・そこに僕がウサギと果物を持って帰ってきた。逃げられたわけではないと分かって嬉しさと、僕が生きて元気に帰ってきたことへの安堵で感情が振り切れて闇アベル降臨。


多分これでだいたい合ってると思います。僕がSSSランクなんて知らないアベルは本当に心配してくれたのでしょう。僕が強いのを教えてあげられないのは心苦しいですが、まだ完全に信用は出来ないし、周りに人もいます。もし教えても、もっと信用出来るようになってから、2人きりの時にしましょう。



さて、今の状況を振り返っていたら、やっと王都であろう場所の壁が見えてきました。いよいよ僕も人間の街に入ることができます。

聞いた話では、今から冒険者ギルドで『新緑の息吹』が仕事を完了したっていう報告と僕の従魔登録をして、それからアベルは王都にある学校の寮に入るそうです。

従魔登録と言えば!登録には僕の名前が必要だとシルヴィアが教えてくれたので、アベルはさっきからうんうん唸ってます。僕の名前がどうなるのか今から楽しみです。アベルのネーミングセンスが壊滅的じゃ無いことを祈って待っていましょう。

何かアベルが主人公に依存しはじめた。このままヤンデレにならないように気を付けなきゃ…


ちなみにウサギと果物は朝ご飯になって美味しくいただかれました。


新しく連載始めました。「転生先は分福茶釜でした!(仮)」もよろしければ読んで下さい。

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