第27話 テンプレ(盗賊退治)
人間やっと出せた~
皆さんこんにちは!馬車&盗賊を見つけて少しテンションが高い僕です。
こんなテンプレに遭遇できるとは…あとは僕が人間だったら良かったんですけど、スライムなんですよねぇ~。むしろ盗賊側の生き物です。
しかしせっかくのテンプレ。ここで無視するなんて選択肢は僕にはございません。それに馬車の中から何か惹かれるものを感じるんですよね~。何なのか気になりますし、とりあえず助けましょう。
まずは状況把握です。
スキルで調べた結果、馬車は乗り合い馬車のようなのですが、御者が1人、乗客が5人のようです。馬が2頭いるのですが、1頭の脚に矢が刺さっているので、動けないみたいですね。一応周りに護衛らしき人が5人いますが、押され気味ですね。
護衛は重装備の大剣使いの男、同じく重装備の盾使いの男、軽装の短剣使いの女、黒いローブを着た魔法使いの女、軽装の弓使いの男という構成ですね。
対する盗賊は2人が弓、5人が片手剣の7人です。
大剣使いと盾使いが複数を相手して他で牽制してるからギリギリ持ちこたえていますが、1人でも欠けたらすぐに崩壊しそうなくらいです。これは早く助けた方がいいですかね。
一応少し強いだけのスライムという設定で助けるつもりなので正面から盗賊を全滅とかはさせませんよ?もちろん見た目も完全にスライムにしています。ということで、早速不意討ちです。
まずは風魔法で弓持ちの盗賊の上に浮かびます。気配も魔力も遮断しているので誰も気づいていません。誰もこちらを見ていないのを確認した瞬間、男の顔を覆いました。急に息が出来なくなった男は驚いて空気を吐き出してしまいました。
そして男が気絶する頃、やっと他の人間たちも異常に気付きました。まさかの乱入者に全員フリーズしてます。…護衛たちは今がチャンスですよね?盗賊と一緒にフリーズしてはダメですよ。
あ、やっと短剣の女性が動き出しました。どの世界でも女性の方が切り替えが早いですね。それにつられて他も動き出しましたが、盗賊はまだ動揺しています。結果、護衛が巻き返してました。その間は待機です。もう助けも必要なさそうですしね
そして数分後、護衛側は多少怪我をしていますが、欠けることなく盗賊を倒しました。そして現在、護衛たちは僕を警戒?困惑?まぁそんな微妙な顔をしながら僕を見て何か話し合っています。
急にモンスターが敵を倒して自分たちには攻撃してこないので確かに怪しいかもしれませんね。ですがスライムですよ?そんなに警戒しなくても良いのではないでしょうか?僕、悪いスライムじゃないですよ?
しかし僕の声は届かないので、しばらく僕らは見つめ合い続けました。この状況どうしましょう?僕は馬車の中の惹かれるものに興味がありますが、さすがにモンスターが近づくのはマズイでしょう。
そうしてじっとしていたら、戦闘音が聞こえなくなってから何も無いので焦れたのでしょう。乗客らしい少年が顔を覗かせました。何とも気弱そうな少年です。眼鏡をかけていて、歳は10歳前後でしょうか?
最初は護衛たちを見ていたのですが、次にその人たちが全員で見つめている僕の方を見ました。そして驚いたように目を丸くしたと思ったら、僕のところに駆け出しました。
護衛たちが止めようとしましたが、もともとそんな離れたところではなかったので少年はすぐに僕の前に来ました。そして、「私のテイムモンスターになって下さい!!」なんて開口一番にいったのです。
その時、僕は僕で混乱していました。少年の言葉もですが、僕が惹かれた何かがこの少年から感じられたからです。惹かれたものの正体が分かった瞬間、〝僕ホモじゃないし!ましてやショタコンですらないから!?〟何て心の中でツッコミをいれるくらいには取り乱していました。
そしてフリーズしている僕を何を思ったか抱き締めて嬉しそうにクルクル回っています。これってもしかしなくてもテイムを了承したと思われてます?……嬉しそうな少年に勘違いを指摘するのも憚られますし、教える方法も無いので諦めましょう。どうせ人間と接触するつもりだったので、結果オーライだと思いましょう、そうしましょう。
護衛たちが僕たちを見てあたふたするのを視界に入れながら、僕はそう結論を出しました。
次閑話いれようかな?