第24話 訓練終了、そして…
補足、スライム族やアンデット族などには寿命がありません。殺されないと死なない種族です
やぁ、皆さんこんにちは!旅行の約束をミロクとして一週間、まさに地獄でした。ミロクも僕も一週間程度動き続けても何も問題がない種族です。結果、僕がついていけるギリギリのスピードで模擬戦をノンストップでやりました。
ですが修行はもう終わったのです!精神が限界を迎えそうですが修行は終わりです!何となく二回言いました!
疲れたので休みたいのですがミロクからこのあと大事な話があるそうなので今は待機中です。ミロクは少し水を飲みに行きました。あの僕を見つけた場所です。僕を見つけた時も水を飲みに来たそうですよ?
15分くらい経ったでしょうか?ミロクが戻って来ました。今ミロクの寝床がある場所に僕がいてミロクは入口を塞ぐようにしています。この入口って結構狭いんですよね。でも何故に塞ぐのでしょうか?顔も深刻そうで何か胸騒ぎがします。
〝……これからする話で坊を驚かせてしまうかも知れんからのぅ、儂も何と言うべきかまとまっておらん。坊が話を聞いて逃げ出すかも知れんからここを塞がせてもらう。では結論だけをまず言うぞ?〟
〝儂を殺せ〟
………………………………は?
ミロクは何を言っているのでしょう?僕の聞き間違えでしょうか?それともミロクがボケましたか?…ころせ、コロセって『殺せ』ってことです?
「……ミロクボケましたか?それとも謎かけか何かです?もうちょっと詳しく僕に分かるように言って下さい。場合によっては怒りますよ?」
〝ボケてもいないし謎かけでもない。順に説明するから落ち着きなさい、話を聞き終わったら何でも答えよう〟
〝……まず儂が幻獣で転生を繰り返す種族だという話はしたな?儂は何回か死んでおるから自分の寿命くらいは分かる。おそらく1年持てば良い方だろう。〟
〝次に儂がモンスターに殺される可能性じゃ。寿命がある幻獣は死ぬ数日前から急激に弱くなる。そして儂ら幻獣の経験値は膨大じゃ。強制的にSSSランクに進化するほどにな。もし幻獣を殺して進化した者がおったら力に溺れて周りに害があるじゃろう、かつて儂を殺した奴のようにな〟
〝儂は怖いのじゃよ。いつか儂が殺されでもしたら、そいつは儂の近くにいる坊を害するであろう。それだけは我慢ならん。ならばせめてその可能性を確実に潰して少しでも坊がこの世界で生き残れるようにしたい〟
〝勝手を言っておるのは承知の上じゃ。しかし儂の我儘を聞いてくれないか?幻獣は言っておるように転生する種族じゃ。いつかまた儂はこの世界に生まれる。何百年先になるか分からんが、その時にまた儂と一緒に世界を周ってくれないか?〟
そうミロクは言って締めくくりました。ミロクの言葉は理解はできますが心が拒否しています。
余命があと1年ほどだなんて、さっきまでの戦闘では信じられませんが、ミロクはそんな冗談は言いません。全部本当のことでしょう。しかし、無意味なことだとしても足掻きたくなるのです。
「……ミロク、認めたくはありませんが言っていることは理解しました。僕のことを心配してくれるのは嬉しいです。この際、ミロクを殺す云々の話を認めたとしましょう。しかし、僕にはミロクを傷つけることすら出来ないと思うのですが?」
そうです。ミロクは最強の種族である幻獣で僕はただのCランクモンスター。心情的な問題よりまず物理的に不可能なステータスの差があって、どんなに頑張っても僕はミロクの毛を少し刈るのが精一杯できることでしょう。一度僕がミミックスライムの時に試させられたのを覚えています。
〝それについては問題ない。儂の額に赤い石があるじゃろう?これは普段は幻獣が壊そうとしても壊れないほどの物じゃ。しかし、これは幻獣本人の意志で一度だけ外すことが出来る。
今まで幻獣が外したとは聞いたことはないが、本来の目的はこれを誰かに渡して『自分の命を預ける』といった信頼や服従をあらわす。
つまりじゃ、この石はスライムでいう核のような物であり、外したら坊でもこの石を壊せる。そうしたら儂も石と一緒に死ぬのじゃ〟
〝先に言っておくが、転生したら人格は多少変わるが記憶がある。じゃから人格もそっちに引っ張られて劇的に変わることはないぞ?〟
……逃げ道が無いです。殺す方法もあってミロクを説得するのは無理です。ミロクは頑固ですし、目が本気なので意志を変えられないのは既に悟っています。
血が繋がってなくても、種族がちがっても、彼は間違いなく僕の世界で一番大事で大好きな家族です。それは変わりません。そして、ミロクが転生するのは分かっています。ならば、彼の我儘を叶えましょう。
「分かりました。ミロクの我儘をきいてあげます。ですが、僕と約束してください!!」
ミロクも頷きました。絶対に約束は守って貰います!
「約束してほしいことは2つです。
1つ目は、寿命が本当に近くなるまでは一緒に暮らして下さい。そしてたくさんお話を聞かせて下さい。
2つ目は、転生したらすぐに僕を捜して下さい。そして一緒に旅をしましょう!その時には僕も色んな経験をしているので、今度は僕の話もたくさん聞いて下さい!
それだけは絶対に守って下さいね!!」
それだけ言ったら僕は黙りこみました。凄く恥ずかしかったです。告白した後みたいな恥ずかしさです。前世では振られた覚えはありますけどね!その後に仲が良かった後輩の男に慰められた覚えまではあります。ろくな記憶しか覚えてないですね!
まぁとにかく、ミロクは慈愛のこもった笑みで頷いた後、僕の側に寝転がりました。そのあとはお互い無言で一夜を過ごしました。別れの時は近いです。また会えるとしても、残された時間を大切に過ごしましょう。
ミロクまもなく退場。また出せるといいな…