お別れの時間
遅くなってすみません。
話のキリの良いところで切ったので、今回は短いです。
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「じゃあ俺、行くよ」
「…うん」
バッグを背負って彼はキッパリと言った。
私はとうとう来てしまった別れに、まだ心の整理がつかない。
「今までありがとう」
そういって彼は私に向かって頭を下げた。
「っやめてよ!そんな、
私が好きでやったことなんだしっ」
「でもっ!…魔女さんが居なかったら俺は死んでたから。…ありがとう」
「…私こそ、友達になってくれてありがとう」
「どういたしまして」
「「ハハハ」」
笑いが込み上げてきて、
二人で笑った。
きっとこの別れは、私の人生の中ではちっぽけな出来事かもしれない。でも、そうだとしても、私はこの友の事を一生忘れないだろう。
今は、そんな風に思えた瞬間だった。
本当は「行かないで」と言いたいし、彼の手を掴んでしまいたい。泣いて引き留めてしまいたい。
でも、それは出来ないから代わりに
「気をつけてね」
と笑顔で言うしか私には出来なかった。
そんな私の心情を知ってか知らずか、彼も笑顔で言葉を発す。
「うん。…じゃ」
私は彼が森に消えて見えなくなるまで見送った。
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彼が見えなくなると、私は一度ため息を吐いた。
それから家に入りドアを閉め、ついでに鍵の魔法もかけた。
「…家ってこんなに広かったけ」
一人になった我が家は、
驚くほど広く感じた。
「…はぁ」
二度目のため息が空しく部屋に響く。
一人が良くてここに来たのに、こんなにも他人と居ることが楽しくなるなんて…思ってもみなかったなぁ
右手に着けた青いブレスレットをふと見る。
三日前、彼と行った実験の副産物。
彼とは色違いで、私は青、彼は白をそれぞれの右手首に巻いたのだ。
「っ…頑張ろう」
私にはこれがある。彼というかげがえのない友と過ごした時間の証が
左手でブレスレットをギュッと握りしめて、私は気持ちを切り替えた。