旅立ちの朝
出すの遅れてすみません。二話目です。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
彼と助けてから昨日までの2週間を、日記を読みながら思い出していた。
今日の昼過ぎに彼はここを出る。まだ外は暗く、 雲のせいで月明かりはない。今あるのは手元の頼りない蝋燭の明かりだけ。そのユラユラ揺れる姿に不思議と心の不安が掻き立てられる。
初めて誰かを失うことへの不安は相当な力を持って私の心を蝕んでいた。
でも私の不安はもうひとつある。それは二週間前に彼を襲っていた、あの白い狼達のことだ。
彼がここを旅立とうとしている理由がそれだからということもあるだろうが、私はそれよりも彼の旅が邪魔されないかが不安なのだ。
私としては彼はここに居た方が安全だと考えている。
まぁ彼は私を少し魔法が使える、物知りな年下の女性と思っているらしいし、私も年齢の話はしていない。 彼は多分50歳 (人間に換算すると2 0歳)
だが、私はその倍はあるので、 私の方が年上だ。でもその事は彼には内緒にしている。
まぁ私が人外だということには気付いているようだけど。
なんて考えていたうちに日が昇りはじめ、部屋に微かな日の光が入り始めた。
「ハァ…よしっ。朝ごはん作るかぁ」
ウジウジしててもしょうがない!
勢い良く両頬を叩き、気合いを入れ直す。私は素早く立って朝ごはんを作るため台所へ向かった。
++++++++++++++++++++++++++++
朝ごはんを食べた後、二日前に二人で作ったダクグマ(黒くて大きいこの森限定の熊)の皮のバッグに、旅に必要な物を入れる作業をはじめた。
「包帯三本に軟膏、ナイフ二本にランプ。マッチに替えのロウソク5本。シカ皮の水筒に、人間街ではお金を使うから売るための薬草…あっお金わかる?」
「大丈夫、わかってる」
「なら良かった。っあとこの薬草私ね、に貰ったって言わないように」
「…何故?」
彼の心底不思議そうな顔に思わず苦笑しながら答える。
「私は人間達に゛呪われた女゛とか゛魔女゛って呼ばれているから」
「…魔法使いさん…」
「良いんだよ、似たような者だし。あっそうそう!」
そう言って立ち上がった私は、台所と私の部屋に物を取りに行った。
「これ、貴方にあげる」
戻って来て私が渡したのは、同じくダクグマの皮で作ったコートと、薬草の種類と薬の作り方が記されたノートだった。
「これは?」
「旅で使うと思って作っておいたの。受け取って欲しい」
「っ…ありがとう」
彼はまるで宝物を扱うように、私が差し出したコートとノートを受け取って笑った。
そんなこんなで昼になり、二人でとる最後の食事をして、とうとう別れの時間になった。