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第八章 夜の女神と、星の騎士①

 そこは「ラフィルの森」の中では珍しい、とても大きな広場だった。

 つい最近伐採したのか、樹皮がはがされた真新しい丸太の山が遠目に見える。明日にでも運搬するのだろうか。――いや、よく見ると、辺り一面も綺麗に整地されているので、この場所に別荘かキャンプ場でも作る予定だったのかもしれない。


 だとしたら少し悪い気がする。なにせ、これからここで大暴れするのだから。

 黒い巨人が空を見上げる。澄んだ空気に映える満天の星。視界は良好だ。煌々とした月明かりが余すことなく地を照らしていた。


 静かな、虫の声だけが聞こえるとても穏やかなる時間。


 そんな静寂の中で、アッシュ――《朱天》は腕を組み泰然として待つ。

 もうじき来るであろう、彼にとって最も親しい少女を。

 アッシュはふと、かつて呼ばれていた自分の二つ名を思い出す。


 ――《双金葬守(そうごんそうしゅ)》――


 《黄金死姫(かのじょ)》の葬り手にして、《金色聖女(ユーリィ)》の守り手。

 二人の《金》に差し伸べた、《葬》と《守》の二つの手。ゆえに《双金葬守》。

 自分の手は今一体どちらなのだろう? 《守》の手なのか、それとも――。



「ふん。そんなの決まってっか。俺はユーリィを――」



 しかし、その呟きは途中で消える。

 何故なら、アッシュの眼前に、遂に彼女が現れたからだ。



『……ようユーリィ。よく見ると随分とめかしこんでいたんだな。似合ってるぞ』



 闇夜のドレスを纏う黄金の少女にそう話しかけるが、彼女は何も答えない。

 その表情は虚ろで、ピクリとも変わらなかった。



(……ユーリィ……)



 アッシュは表情を引き締め、改めて覚悟を決める。

 ユーリィは《聖骸主》となった。これはどうしようもない事実だ。時間稼ぎなどの甘い考えでは瞬く間に殺されるだろう。


 ――全力でやるしかない。



『お前相手に今更だが、全力でやるからには名乗りを上げせてもらうぞ……』



 それは、本気で挑むための宣誓。

 主の覚悟に応え、《朱天》が悠然と両の拳を構える。



『《七星》が第三座、《朱天》――《双金葬守》アッシュ=クライン! 参るッ!』



 そして、漆黒の右掌が大気を叩く!

 ――その直後、ドゴンッと音を立て、少女の華奢な身体が弾け飛んだ。

 砲撃の速度で吹き飛ばされた彼女の身体は、そのまま大地に叩きつけられる。

 が、それでも勢いは止まらず、一度、二度と、まるで投げ捨てられた人形のようにバウンドし、少女の身体はようやく止まることが出来た。


 《穿風(せんぷう)》――。恒力を掌から撃ち出す《黄道法》の闘技だ。


 《朱天》の最速の技であり、三千クラスの鎧機兵程度ならば一撃で大破させるほどの威力を持っているのだが……。



『やっぱ《穿風》はまるで効かねえか。《天蓋層》。相変わらず厄介な能力だな』



 黄金の少女は、何事もなかったかのように立ち上がる。

 あれだけの衝撃を受けても彼女の身体には傷一つない。恒常的に《聖骸主》を覆い守る《天蓋層》が《穿風》の衝撃を吸収したのだ。



(――流石は本物。《天鎧装》とは防御の格が違うな)



 アッシュの考案した《天鎧装》が攻撃を押し戻す濁流ならば、本物の《天蓋層》は衝撃を飲み込む海だ。小指ほどの幅もないその層が、まさしく大海に等しい。

 吹き飛ばすことは可能でも、激突時の衝撃自体はすべて無効化されてしまう。



(この程度の攻撃はやるだけ無駄か……。まあ、分かっていたことだが)



 アッシュが目を鋭くする。《穿風》が通じないのならばやはり接近戦で挑むしかない。《朱天》は太い尾を大きく揺らし、前傾の姿勢をとった。

 ――が、どうやら、今度は彼女のターンらしい。

 《朱天》が動き出すよりも早く、少女は右手を天にかざした。主の命に従い、数十の銀の星が一斉に《朱天》へと襲い掛かる。それは、まさに降り注ぐ銀の流星雨だった。

 だが、その絶望的な状況にも、アッシュの不敵な笑みは崩れない。



『甘いぞ! ユーリィ!』



 アッシュは躊躇うこともなく《雷歩》を解き放った。

 爆発音と共に《朱天》は跳ぶ。――ただ真直ぐ、少女の元へと。

 アッシュは初見で見切っていた。

 銀の星は確かに強力だ。連続で喰らえば《朱天》の装甲でも損傷は免れない。が、弱点もある。あれはその速さゆえに、一度撃ち出されると直進しか出来ないのだ。軌道さえ見極めれば《朱天》の速度なら回避は可能だった。

 さらに連続して轟く雷音。流星雨を潜り抜けた《朱天》は両足で地に線を引くように急停止。濛々と土煙が舞う中、ユーリィの間合い――女神の聖域の中へと降り立った。


 身長差は約二・五倍。体格差においては、そもそも比較対象にさえならない巨人と女神は、五セージルほどの間合いで無言のまま見つめ合う。

 そして――。



(――ッ! やはり来るか……《光星体》ッ!)



 不意にユーリィの身体がふわりと浮いた。続けて三セージルほどの高さでピタリと止まると膨大な光が彼女の身体から溢れ出した。眩い閃光がその場を塗り潰す。

 アッシュは目を細め、その光景を――現れ出るであろう敵を警戒していた。

 そして閃光が終息した時、それは現れた。


 ――光の騎士。


 体長はおよそ四セージル。スラリとした四肢を持ち、優雅にさえ見える全身鎧を纏った半透明の巨大な騎士が、その場にて佇んでいた。

 その胴体の中にはユーリィがいる。



『……まあ、あいつに出来たことだ。当然、お前にだって出来るよな』



 《光星体》――。それは《黄金の聖骸主》のみが持つ特殊能力。《天蓋層》を巨人の姿にまで活性化させた戦闘形態だ。

 内部にいる《聖骸主》の動きをトレースする光の巨人。

 今や彼女は《朱天》よりも巨大だ。体格の差は完全に覆された。

 しかし、それでもアッシュはにやりと笑う。



(……ふん。むしろありがてえェ。お前を直接ぶん殴ることに比べればな)



 アッシュの闘志に呼応して《朱天》が身構える。

 訪れる静寂。そして、光の騎士と漆黒の巨人が、互いにじりじりと歩みより、


 ――ズガンッ!


 《朱天》が地を踏み砕き、間合いを詰めた。そして突進の勢いのまま右の拳を光の騎士の顔面に炸裂させる。半透明の巨体が大きくのけ反りながら吹き飛んだ。



『――まだまだッ!』



 続けて《朱天》は《雷歩》を解き放った。一瞬で吹き飛ぶ光の騎士に追いつき、その右足を片手で掴む。そしてそこから一気に引き戻すように振りかぶり、光の騎士を大地に叩きつける。地表に亀裂が走り、騎士はうつ伏せの状態で倒れ伏した。

 《朱天》はさらに追い打ちをかけようとする――が、それは叶わなかった。

 突如、光の騎士がばね仕掛けの人形のように跳ね上がったのだ。



『――ッ!』



 反射的に間合いを取ろうと身構える《朱天》だったが、わずかに遅かった。


 ――ズドンッッ!


 光の騎士の回し蹴りが《朱天》の胸部に炸裂する。射抜かれたような衝撃にアッシュは歯を食いしばる。機体が軋みを上げ、八セージル近くも後方に追いやられた。胸部装甲には亀裂が入り、パラパラと小さな破片が零れ落ちる。



(――くそッ、足技か。限りなく人型に近い《光星体》ならではの技だな)



 アッシュは衝撃でくらくらする頭を振りながら、苦々しく口元を歪ませる。

 鎧機兵は人型といっても人間が搭乗する以上、どこか歪だ。高度な足技を使おうにもバランスが保てない。それに比べ《光星体》の姿は完全に人のものだ。

 その技のレパートリーは、どうしても殴打が主体になる鎧機兵の比ではない。



(……となると、やっぱ力で押し切るしかないようだな)



 ズン、と力強く大地を踏みしめて、《朱天》が両の拳に力を込める。

 不本意ながらも、やはり使わざる得ないようだ。――《朱天》の切り札を。



『……本気でいくぞ《朱天》。まずは二本の《朱焔(しゅえん)》を開け』



 《朱焔》――。それは多くの職人にアッシュを狂人と呼ばせた《朱天》の機能だ。

 正直、二度と使う気はなかったのだが《黄金の聖骸主》が相手では仕方がない。


 主の命に《朱天》の両眼が光を放ち、今まで固く閉ざされていたアギトが、バカンッと開かれる。牙を剥き出しにしたその貌は、まさに鬼そのものだった。

 解放されたアギトは、巨鯨がエサを飲み干すように周囲の星霊を食らい始めた。同時に《朱天》の四本角の内、後ろ二本が炎のように揺らめく紅い光に包まれる。


 グウオオオオオオオオオッ――!!


 力の解放に、《朱天》が両の拳を天に振り上げ、雄たけびを上げた。

 黒い巨人の咆哮で、ビリビリッと大気が揺らぐ。

 今この時――、《朱天》は、実に五万六千ジンに至る恒力を手に入れていた。

 公式では最高と呼ばれる恒力値は三万八千ジン。それすら凌駕する莫大な量の恒力を得てなお《朱天》の暴食は収まらない。



『……この先は時間との勝負だな。頼んだぞ。サーシャ』



       ◆



 その白い鎧機兵は、森の中を縫うように疾走していた。



(早く早く。もっと急がないと。いつ星霊が安定するのか分からないんだから)



 主の意志に応え、《ホルン》はさらに加速する。

 サーシャは焦っていた。《万天図》のお陰ですぐに《最強の鎧機兵》の位置はつかめたが、その距離は約千二百セージル。とても近いとは言いがたい距離だ。



(……あの短期間で、ここまで移動するなんて……)



 思わず唇をかみしめる。

 だが、幸いにも今《最強の鎧機兵》はその場で停止している。

 これならもうじき追いつけるはず。



(……本来なら騎士として名乗りを上げるべきかもしれない。けど、ここは――)



 奇襲だ。

 木々の間に隠れ、問答無用で不意打ちする。性能差を鑑みればそれしかない。

 なにせかかっているのはユーリィの命だ。躊躇いなどなかった。

 しかし。



『――――え』



 不意に開けた視界。今まで生い茂っていた木々が、まるで幻だったかのように消え、いきなり大きな広場に飛び出したのだ。



(な、何? どうして「ラフィルの森」にこんな大きな広場が――)



 想定外の状況に動揺し、サーシャ――《ホルン》がたたらを踏むと、



『……サーシャか? どうして君がここに?』



 背後から発せられた聞き覚えのある声に、サーシャは凍りついた。

 弾けるように白い鎧機兵が振り返ると、そこには黄金竜が雄々しく佇んでいた。



『……ジラール……』



 サーシャは歯がみする。

 迂闊だった。不意打ちをするつもりが、先に見つけられるとは。



(――くッ! こんな広場さえなければ……)



 と思った時、サーシャは周囲の異常さにようやく気付く。

 よく見ればここは広場などではない。周辺の木々は薙ぎ倒され、大地には削り取られたような傷跡がいくつもある。

 それはまるで大型の魔獣が暴れまわったかのような荒れ地。

 ――そう。ここは眼前の鎧機兵に開拓された場所だったのだ。



『これって……ジラール。あなた、ここで鎧機兵のならしをしていたの?』


『……ふん。僕ほどの操者なら、本来不要な作業だがね。しかし、僕はこれから国盗りをするんだ。念には念をいれてね! だが、ふふふ……』



 ジラールは実に誇らしげに声を上げる。



『見よ、この光景を! 素晴らしい! 本当に素晴らしいよ! 僕の《アドラ》は!!』



 ……どうやら鎧機兵に名前を付けたらしい。

 まるで子供のようにはしゃぐ眼前の男に、サーシャは抑えがたい怒りを抱く。

 その機体のせいで、お前のせいでユーリィはッ!

 サーシャは――《ホルン》は、静かに剣を正眼に構える。

 もはや語る言葉などない。この男は倒すべき敵だ。



『――おや? なんだい? まさか僕とやる気なのかい? 四千ジンにも届かないその機体で、十万ジンを誇る僕の《アドラ》に!』



 サーシャは答えない。ただ闘志を胸に隙を窺う。

 ……ジラールの目付きが変わった。



『どうやら本気のようだね……いいだろう。ならしの仕上げに丁度いい。ただし! そう簡単に終わってくれるなよ! 精一杯、僕を楽しませてくれ!』



 そして《アドラ》が無造作に右手を――その鋭利な爪を《ホルン》へとかざした。

 サーシャの全身に緊張が走る。なにせ初めて戦う機体。そもそも竜型など今まで聞いたこともない機体だ。一体どんな攻撃をしてくるのか見当もつかない。

 ジラールも彼女の緊張を感じ取ったのだろう。その顔に余裕の笑みを浮かべる。



『ふふ、どうやら緊張しているようだね。まあ、竜型なんて初めて見るだろうし。そうだな――なら一つだけ教えよう! 今君の目の前にいるのは鎧機兵などという矮小な存在ではない。これこそがかつて世界を滅ぼした――《悪竜》そのものだ!!』



 その言葉が、開戦の合図だった。

 《ホルン》に向けられた《アドラ》の爪が、突然ドンッと撃ち出される。――否、撃ち出されたのではない。高速で右腕自身が伸びたのだ。

 爪を立て躍動するその姿は、まるで獲物を呑みこまんとする大蛇のようだ。

 咄嗟に《ホルン》は右へと飛び込み回避する。黄金竜の爪が先程まで《ホルン》がいた空間を切り裂き通過した。サーシャはそれを見送り青ざめる。

 まさか、腕が伸びるとは――。



(人工筋肉って人の構造とほぼ変わらないはずなのに。根本的に別物ってことなの?)



 目の前の機体が、ますます得体の知れないものに見えてサーシャは身震いする。

 ――が、すぐに思い直した。

 確かに予想外の攻撃であったが、逆に好機でもある。

 今、《アドラ》は右腕が使えない。間違いなく攻撃力は半減しているはずだ。

 そう判断したサーシャは《ホルン》を加速させようとし――ふとその音に気付く。

 背後から、バキバキッと何かを破壊する音が聞こえてくる。慌てて振り向くと、そこには時間を巻き戻すかのように逆走する右腕の姿があった。

 しかも、その爪には――。



『――ッ! 《ホルン》ッ、避けて!』



 《ホルン》がすぐさま地に伏せた。

 轟音が頭上を過ぎ去り、《アドラ》の元に、右腕が帰還する。その爪には、太さが二セージル以上はありそうな巨木が握りしめられていた。

 《アドラ》は無言のまま巨木を両手で掴むと、捩じり、砕き、へし折った――。

 それは、己が膂力を見せつけるためのデモンストレーション。


 すなわち――お前もいずれこうなる、と。


 目の前で舞い散る木片に少女は喉を鳴らした。もしもあの爪に掴まれたら……。

 再び恐怖がサーシャの心を襲う。

 恐らくは一撃。たった一撃でも直撃を食らえば《ホルン》は粉砕される。もしくは今の巨木のように、胴体を引き千切られるかもしれない。

 どちらにしろ原型を残すような死に方は出来ないだろう……。

 サーシャは小さく息を吐き、一瞬だけ瞳を閉じる。


 思い浮かぶのは、親しき二人の笑顔だった。


 一人は、彼女にとって大切な友達である、空色の髪の少女。

 そしてもう一人は、八年前のあの日。

 とある災厄からこの国を救うために、自ら《聖骸主》となった――……。



(……お母様。たとえそれが、どんなに困難だとしても、私は――)



 琥珀の瞳を見開き、サーシャは叫ぶ!



「――私はッ! ユーリィちゃんを! 《聖骸主》を救うって決めているんだッ!」



 恐怖を振り払ったサーシャの双眸には、決意の炎が灯っていた。

 ありったけの勇気を乗せ、《ホルン》が今度こそ加速する!

 剣を水平に構え、白い機体は力強く疾走する。限界まで前傾に構えて駆け抜ける《ホルン》の姿は、まるで一本の巨大な槍のようだった。


 しかし、全霊をかけて突進してくる《ホルン》に対し、《アドラ》は身構えようともしない。むしろ、受け入れるかのように両手を広げていた。

 その相も変わらない傲岸不遜な態度は、当然、サーシャの怒りに火を注いだ。

 そして、《ホルン》の剣の切っ先が突き出される!

 だが、



『――――な』



 サーシャは唖然とした。そんな、どうして……?

 今のは《ホルン》の全体重を乗せた最高の一撃だった。

 直撃すれば、十セージル級の大型魔獣でさえ仕留める自信があった一撃だった。

 だというのに――《ホルン》の剣は、《アドラ》の装甲の前で止まっていた。

 白い鎧機兵の一撃は、黄金の竜鱗に傷一つ付けることが出来なかったのだ。


 渾身の突きがまるで通じない事実に、しばし呆然としていたサーシャだったが、ハッとして我に返る。《アドラ》の左の爪がゆっくりと動き出したのだ。

 まずいッ! 即座に《ホルン》が後方へ跳ぶ――が、わずかに遅かった。


 ――ギャリンッ!


 空気を切り裂く《アドラ》の爪が、《ホルン》の肩へと襲い掛かる!

 途端――右の肩当ては、まるで砂山を殴りつけたかのように弾け飛んだ。

 サーシャが驚愕で目を見開く。今の爪撃は直撃ではない。浅くかすっただけだ。



(う、そ……。直撃でなくとも、触れただけでこうなるの……?)



 舞い散る装甲の破片を目に焼き付けながら、《ホルン》は慌てて確認のために軽く右手を動かした。――動作に異常はない。砕かれたのは外装だけのようだ。

 しかし、あの《偽朱天》の攻撃を防ぎきった《天鎧装》を、まるで薄布のように切り裂くとは……。息を呑むサーシャに対し、ジラールが高らかに笑う。



『はははッ! これはどうやら思っていたより、つまらない仕上げになりそうだね!』



 サーシャはグッと唇をかみしめる。

 苦戦は覚悟していたが、ここまで差があるとは想定していなかった。一撃を食らうと終わりで、しかもこちらの攻撃はまるで通じない。


 普通ならば、逃走しか手段が残されていない状況だ。

 ――だが、《ホルン》は迷わず剣を正眼に構える。

 ここは退けない。――否、絶対に退かない。

 この戦いには、彼女の大切な友達の命がかかっているのだ。

 サーシャは守るべき人のために、改めて騎士として名乗りを上げる。



『アティス王国騎士学校所属、第六十三期・騎士候補生サーシャ=フラム。そして、我が愛機、《ホルン》――いきます!』

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