傍に居る為に
ボクには悩みがある。
ボクはボクなりに、自分のしょーらいというものを考えているのだ。
今はクラーチャの燐ぷん採りの為の台だけど、お父さんの畑をつぎたい。
燐ぷんとか関係なしにクラーチャの傍に居たい。
(今ボクがクラーチャの傍に居る事が許されるのは特別な燐ぷんが採れるからで、同じ年頃の男の子はみんな家業を手伝って勉強している)
ボクなりに、考えてるんだ。
たとえ村長さんに馬鹿の考え休むに似たりといわれたとしても。
一生懸命考えてる。
ああ、でも本当にボクの考えなんか休むのと変わらないのかもしれない。
「まーたふくれっ面。なにか悩んでるのね」
「んむぁ」
両手でボクの頬を押すクラーチャの仕業でついつい頬に籠めていた息がぷぅっと抜ける。
そうするとボクはクラーチャに気を取られて。
「何するのクラーチャ」
「また考え事してるから、ほらほら、私にも相談していいのよボノ。そのお口は何の為にあるの。話す為でしょ? 耳は? 聞くためでしょう。 一人でむっつり考え込んでも良くないわよ」
笑顔で凄く真っ直ぐ、自分に相談しなさいと言ってくれるクラーチャに、ボクは思わず悩み事を話してしまう」
すると、クラーチャは優しいから、ボクを一番大事に考えた答えをくれる。
「ねぇボノ。貴方がしてくれるなら、指で燐ぷんをこすりとってもいいのよ? そうすればこの役目も早くにおわって、お仕事できるわよ」
そんな優しい言葉を、クラーチャは簡単に言えちゃうんだ。
少し力を入れられてしまえば簡単に裂けてしまいそうな翅を、手で擦って良いという。
「クラーチャ、なんで君はそんなにボクに優しいの?ボクは君になにもしていないのに」
自分でもわかるほどおどおどと言った僕に、クラーチャは一度小首を傾げた後、頭を元に戻すと、パッと笑って言う。
「ボノは私を心配してくれるじゃない。私の好きに好きを返してくれるじゃない。その心を無くさないなら、私は自分を全部ボノにあげちゃってもいいの。傍に居られるなら」
何の迷いもなく、笑いと共に自分の全部をくれるというクラーチャが、まぶしくて、まぶしくて。
彼女を痛めつけるような答えは選びたくなくて。
「うんとね、クラーチャ。指で擦るのはやめておく。そんな事しなくても済むように、ボク一生懸命午後からの手伝いで畑仕事を覚えるよ」
だから、ボクなんかのために危ないことはしないでと願いを籠めてクラーチャの髪としょっ角を掠るように撫でる。
クラーチャ、ボク頑張るからね。
君と一緒に居られるように、頑張るから。