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ボクはなんだかすわりが悪い

 ボクの村の近くにある森には、妖精が住んでいる。

 蝶々妖精と呼ばれる彼女達の燐ぷんは魔法の……しょくばい、だったかな。

 とにかくなんだか魔法に使うのだそうで。

 村の名物と言えばそれなんだけど、ちょっと大きい森が近くになる村なら、どこも名物にしているものなんだって。

 そして、ボクの村では妖精の燐ぷんを集めるのは子供の仕事。

 妖精たちは遊ぶのが大好きで、特に小さい子の頭の周りを飛んで、その場でぐるぐる回らせ転ばせる悪戯をもっとも好む妖精は、その時にたっぷり子供の服に燐ぷんを振りかける。

 ソレをちょっと年長の子供がぱっと袋の中に払いいれて集めるんだ。

 でも、ボクは年長になっても粉集め役には回らなかった。

 それは、クラーチャ、ボクみたいな子供の手のひらサイズをした妖精達から一人。

 ボクの肩に乗って、燐ぷんをそこでしか落とさない子が出たからだ。

 彼女は今、ボクの肩にのってる。


「おはようクラーチャ。今日もボクにのるの?」

「うん。ボノのそばに居たいの」

「変わり者だねクラーチャ。ボクといっしょが良いなんて」

「私はボノが好きなのよ」


 ボクの肩に腰掛けて、楽しそうに高い声でころころ笑う可愛いクラーチャ。

 彼女はふわふわで明るいきらきらの黄色を薄めた色の短髪を揺らして、小さくても細い顔つきでかれん(綺麗っていう意味だとお母さんが言っていてた)な顔を背中の方にひっくり返るかと思うくらい上げて笑う。

 村の女の子達と比べると男の子みたいな長さの髪から飛び出す二本のしょっ角もゆれている。

 当然、それだけ笑えば蝶々みたいな翅も揺れて僕の服に燐ぷんが降っていると思う。


「なんでボクなんか好きなの?」

「ねぇボノ。それ何度も聞かれたわ、昨日もおとといもその前も! そんなに何度も聞きたいの?」

「ダメかなぁ」

「ボノったらきっと忘れやすいのね。でもいいの、ボノが忘れたらその度に私が教えてあげる」

「忘れてるわけじゃないんだけどさ。ボクと他の子、何が違うのかなって」

「ボノは良い匂いがするの、森の花の蜜みたいな、甘い樹液をだす若木みたいな、そんな香り」


 ボクの問いかけに上機嫌で答えるクラーチャは、ボクの首筋に顔を寄せて小さくてちょっと暖かい息を当ててくる。

 くすぐったいけど、我慢。

 ここで笑ったらボクの服についた燐ぷん、恋妖精のりん粉っていう、普通のとは違う薬の材料になる特別な粉が飛んじゃう。

 本当は身体を屈めて笑いたいけど、我慢。

 一度台無しにしたら村長さんに凄い怖い顔で怒られた。

 だから我慢する。


「ボノ、無理してるよね。なんだか震えてるから解るよ」

「息がくすぐったいよクラーチャ、ホントなら転げまわりたいくらい」

「あらそう?なら転がっちゃえば良いのに、変なボノ」


 無邪気に笑うクラーチャだけど、ボクはなぜだかそんな彼女に申し訳ない気持ちがある。

 前に、ボクはクラーチャに燐ぷんが売られるのはいやじゃないか聞いたことがある。

 その時彼女はさっきみたいにころころ笑ってた。

 

「人間ってお金って言うのがひつようなんでしょ。ボノが必要なら沢山だすから沢山売ってね。私はボノと居られればそれでいいの」


 クラーチャはそう笑ってくれたけど、なんだかボクは座りが悪い。

 なんでだろう、なんでだろう。

 彼女は笑って、村の皆も気にしてなくて。

 ボクだけなんだか座りが悪い。

 ねぇクラーチャ、聞いたらわかるかな?

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