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第九話

 家内がくしゃみを立て続けに六連発。

「ああ、もういや」

 鏡の前でため息をついている。

「どうした」

「もう、化粧しても鼻水がどんどん流れて、ホラ」

 振り向く家内の顔は鼻の下だけが真っ赤で白粉がない。

「まあいいじゃないか」

「あら、そう?」

 家内の嬉しそうな鏡越しの顔。

 つい小さな声で呟いた。

「だれも見ないんだから」

 小さな声のはずが聞こえていたらしい。

「私は世界一不幸な妻よ」

「それなら、俺は世界一不幸な妻の夫だな」

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