前へ目次 次へ 9/612 第九話 家内がくしゃみを立て続けに六連発。 「ああ、もういや」 鏡の前でため息をついている。 「どうした」 「もう、化粧しても鼻水がどんどん流れて、ホラ」 振り向く家内の顔は鼻の下だけが真っ赤で白粉がない。 「まあいいじゃないか」 「あら、そう?」 家内の嬉しそうな鏡越しの顔。 つい小さな声で呟いた。 「だれも見ないんだから」 小さな声のはずが聞こえていたらしい。 「私は世界一不幸な妻よ」 「それなら、俺は世界一不幸な妻の夫だな」